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隣のOLが、俺の部屋で宅飲みしている  作者: 白い彗星
第一章 憧れの初恋女性と、始まる甘い日常

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第1話 私、今幸せだなぁ、えへへ



 夜七時前後……それは俺白鳥 甲斐(しらとり かい)にとって、一日の中で最も緊張する時間と言ってもいい。

 時計の針の音がやたらと大きく聞こえるのは、気のせいだろうか。


 何度も時計を確認する行動は、すっかり習慣づいている。


「……お、来たか」


 インターホンの音が、部屋の中に響き渡る。来客の報せだ。

 調理準備中の手を止め、足を動かす。誰であるかの予想はついているが、確認は大事だ。


 扉の向こうに立っているのは、予想していた通りの人物だった。

 俺はボタンを押し「今開けます」と声をかけてから、玄関へと向かい……鍵、続けて扉を開けた。


「やっほ、こんばんはー」


 扉の向こう側にいた人物が、笑顔を浮かべていた。

 茶色に染めた髪を肩まで伸ばし、後ろで結んでいる。顔立ちは整っていて、美人と評されることは間違いない。

 身長約百七十cmの俺と同じくらいだが、年下かと思わせる表情をしている。


 だが、れっきとした年上だ。彼女が着ているスーツもそう物語っている。


「こんばんは。上がってください」


「うん。お邪魔しまーす」


 彼女を家に招き入れ、扉の鍵を閉める。

 靴を脱いでいる彼女を横目で見つつ、来客用のスリッパを用意。


「ありがとー」


「いつものことですからね」


 スリッパに履き替えた彼女は、慣れた様子でリビングへと向かう。


 男の一人暮らし……しかし部屋は割と広い。

 リビングにはテレビにテーブル、ソファー等が置いてあり、隣は寝室だ。


 彼女はソファーへと腰を下ろし、床にスーツバッグを置いた。


「はぁー、つっかれたぁー……」


「お疲れ様です、詩乃さん」


「お疲れだよぉ」


 スーツを着たまま横になる花野咲 詩乃(はなのさき しの)さん。俺の姉の友人だ。

 スカートから伸びた、タイツ越しのすらりとした脚につい目が行ってしまうのは……男の性というもの。


 我が物顔でごろごろする彼女は、この部屋の隣人だ。


「もうすぐ晩飯できますから、そんなだらけてないでください」


「うぇーい」


 バリバリのキャリアウーマンから一転。だらけている姿は、詩乃さんらしいっちゃらしい。


 姉ちゃんの友人が、なぜ俺の部屋を訪れ、慣れた様子でくつろいでいるのか。

 それを説明するには、少々ややこしい事情がある。


「ねーねー、今日のご飯はなにー?」


「オムライスです」


「やった。さては、私の好物用意してくれた?」


「簡単だから選んだだけです」


 すでに材料を揃えて準備していた俺は、早速調理を開始する。

 今から作るのは、作り置きではなく、作りたてを食べてもらいたいからだ。


 フライパンを熱し、油を垂らす。そこに卵を割って、ほどよく焼けたところにケチャップで味付けしたご飯を入れて……と。


「うーん、いいにおーい。

 ていうか、喉乾いちゃった。冷蔵庫開けていーい?」


「どうぞご自由に」


 俺の許可を得た詩乃さんは、ぴょん、とソファーから飛び上がり、「やりぃー」と笑い冷蔵庫へと向かった。

 そして、戸を開ける。


「……あ、イケないんだー。甲斐くんったらビール入れちゃってー」


「誰のだと思ってんすか」


 俺は目線は手元に向けたまま、言葉を返す。彼女は「てへっ」と笑って応えた。

 冷蔵庫を開けたその中には、日々料理を作るための材料や調味料……その他に、ビールが並んでいる。


 一人暮らしの高校生男子の冷蔵庫の中に、ビール。……本来、あってはならないものだ。未成年にお酒、ダメ絶対。

 だけど、これは詩乃さんのだ。


「いつも言うんですけど、なんでわざわざウチで冷やしますかねぇ」


「いつも言うんだけど、そりゃ甲斐くんの部屋で飲むからに決まってるじゃん」


 もはやお決まりのやり取りである。


 詩乃さんは、自分のお酒を自室ではなく、隣の俺の部屋で保存しているのだ。

 理由は、彼女が言った通り。要は、二つの部屋を行き来するのが面倒だから。


「本当なら、甲斐くんにお金渡しといて買ってもらったほうが、手間はないんだけどね。さすがに高校生は買えないし」


「詩乃さんの手間は減っても、俺の手間が増えますよね」


「てへっ」


 二度目の「てへっ」だ。かわいい。


 そうこう話しているうちに、オムライスが完成する。皿に盛り付け、続けて二つ目を作り始める。

 同時進行で、惣菜の唐揚げも用意する。


 最近の惣菜はおいしい。時間がない時、ちょっとしたおかずが欲しい時には大助かりだ。


「じゃ、冷めないうちに先に食べててください」


「……いやいや、作ってもらって私だけ先に食べるのは悪いよ」


 高校生の部屋の冷蔵庫にお酒保存しているくせに、変なところで良識を見せないでもらいたい。


 ただ、作りたてなのだから早く食べてほしいのが本音だ。

 俺のも待っていたら、冷めてしまう。こういう時は、魔法の言葉がある。


「冷凍庫には枝豆あるんで、ビールと一緒にどうぞ」


「えっ! うっそマジで!? やったー!

 じゃあ悪いけど、いただくね!」


「変わり身早え」


 その存在をちらつかせたことで、詩乃さんは声を弾ませる。てか身体も弾んでる。

 冷蔵庫からビールを、冷凍庫から枝豆を取り出す。


 詩乃さんはお酒が大好きだ。愛していると言ってもいい。

 当然、お酒のお供も大好きだ。


「そいじゃ、お隣失礼〜」


「……どうぞ」


 るんるんと鼻唄を歌いながら、隣に詩乃さんが立つ。そして流水で、枝豆を解凍していく。

 キッチンに二人並んでいる状況に、少しドキドキしてしまう。だって、好きな人とこんな状況なんだもんな……


「よっし」


 解凍を終え、皿に移し……詩乃さんは先に食卓へ行き、手を合わせた。


「お先にいただきまーす!」


「はい、召し上がれ」


 恒例の挨拶……そして、プシュッ、という炭酸の効いた音。

 見なくてもわかった。ビールのプルタブを開け、缶を解放したのだと。そして、一気に飲む。


「んぐっ……っ、ぷはぁ! 生き返るー!

 仕事終わりのビールは格別だわー!」


 ほらね。すげー嬉しそう。


 スプーンを片手にオムライスを口元へと運んでいく姿を、悪いと思いながらも見つめていた。

 卵に包まれたほかほかのご飯が、口の中に迎えられた。


「もぐ……もぐもぐ……」


 さあ。お味のほどは、どうかな……?


「ごくん……

 んんー、おいしー! やっぱ甲斐くんの料理さいっこう!」


「そ、そうですか……」


 頬に手を当て、喜びを存分に表現してくれる。

 屈託のないその笑顔に、俺は胸の奥が熱くなる。


 やっぱり詩乃さんは、ご飯をおいしそうに食べてくれる。それに、言葉に出してくれるからありがたい。

 こうして嬉しい反応をしてくれるから、料理を作るのは嫌じゃない。


「俺も完成」


「じゃあ一緒に食べよう!」


 完成したところで、俺は詩乃さんの正面の席に座る。

 こうして向かい合って食事をするのも、もう恒例の光景だ。


「ほらほら、甲斐くんも食べて食べて」


「食べますよ。なんで詩乃さんがテンション高いんですか」


「だって、こんなにおいしいんだもの。早く食べてもらいたくて」


「……お、俺が作った料理なんですけど?」


 この人は、またもう……無自覚なんだろうけど、嬉しいことを言ってくれるなぁ。


 俺は手を合わせ「いただきます」と告げ……オムライスに手を伸ばし、口に運ぶ。

 しっかり味わい、飲み込む。


 ……うん、おいしい。味付けも悪くないな。


「……なに見てるんですか」


 ふと、詩乃さんからの視線を感じた。

 にまにま笑いながら、食事中の姿を眺めているのだ。


「だってー、甲斐くん嬉しそうな顔してるから」


「……あんまり、見ないでもらえませんか」


「えー、甲斐くんだって私が食べるところ見てたじゃない。おあいこだよ」


 気付かれていたのか……不覚だ。

 だが、俺のには正当な理由がある。


「俺はいいんです。自分が作ったものをどんな顔して食べているのか、作った者として見る権利がありますので」


「えー、ずるーい」


 詩乃さんは頬を膨らませる。が、ずるくない。料理を作った身として、感想は気になるものだ。当然の権利だ。

 なので、感想を知るために相手の顔色をうかがう。おかしなことは、なにもない。


 ……詩乃さんが、俺の料理をおいしそうに食べてくれる。この時間がどうしようもなく好きだ。


「……不思議ですね。詩乃さんと食卓を囲む日が来るなんて、思いませんでしたよ」


「どうしたの、いきなり。……でも、そうだね。こんなことになるとはねぇ……人生なにがあるかわからないよね!」


「十割詩乃さんのせいだと思いますけどね」


「う……」


 俺の指摘に、詩乃さんはバツが悪そうに黙り込んだ後、ビールを一気に飲みこんだ。


 ……今となっては俺も、この生活を悪くないと思っている。いや……むしろ、楽しいと感じている。

 こうして詩乃さんと一緒に食卓に座っている原因は、"あの出来事"がきっかけだ。


「ぷはぁ! はぁー。五臓六腑に染みわたるぅ!」


「……まったく。飲み過ぎないでくださいよ」


「うん! ……私、今幸せだなぁ、えへへ」


 目の前で酒を飲むOLの姿に、俺は自然と頬が緩むのを感じていた。




 ……これは、ごく一般的な高校生の俺の部屋に、隣の部屋に住んでいるOLが宅飲みしに来ている物語。

ここまでで読んでくれて、ありがとうございます!

ぜひ応援などくださると、とても嬉しいです!

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