五十四話 創造神、強制的にパワーレベリングさせる
生み出した魔物を各班の近くにまた【固有スキル マップ探査】でマーキングして召喚魔術の陣を作る。そして、今出した魔物を各場所に召喚する。残ったハザードライガー二匹がこちらに進む。
「さぁ、お待ちかねの魔物だ。オークではない魔物のようだがね」
ハザードライガーが俺たちの前に姿を現す。【創造】には、召喚魔術のように隷属などの縛りがないため、魔物を創造すれば、当然襲い掛かってくることもある。
いや、まぁ、出来なくはないんだよ。でもね、隷属などという汚いものを俺の権能に入れたくは無かった。
「「「無理だぁ―――っ!!」」」
学生のみならず冒険者の二人も叫ぶ。他にも至る所で叫ぶ声が聞こえてくる。
もう少し弱めにすればよかったかな? ライオスたちはAランクだし、摩耶たちも大丈夫だろう。問題は、キース少年たちやカルタナなどの他の冒険者か。あ、闇ギルドの連中も叫んでる。
これは教育した方がよさそうだな。暗殺者が任務中に声を出しちゃいけないだろうってね。
「倒さないのかい? お待ちかねの魔物だぞ?」
「あんなものに戦いを挑めるか! ハザードライガー、Bランクの魔物だぞ! なぜこんなところに複数いる!?」
「に、逃げなきゃ……」
「僕たちには勝てないよぉ!!」
エドワードに説いていた冒険者もこれは予想していなかった敵が現れ、動揺している。だが、逃げ出さずに斧と杖を向けている。
―――ドォォォォン!!
ミノタウロスたちの召喚の時に使った一つ幻魔術をかけてみた結果が出たようだ。
突如として周囲の森から何かが高々と飛びあがり、回転しながら落下し地面にめり込んだ。
様々なパーティやミノタウロスたちが見上げる。
「なんだあれ、人か? 教員ではなさそうだな。黒い」
「ひ、人が空から落ちて来ましたわ!? 何が起こっているんですの!?」
「ああ、人ってこんなにも羽ばたけるのか……」
「すげぇ……地面にめり込んでるよ?」
目線をミノタウロスとハザードライガーに戻す。
ちなみに闇ギルドの者は、地面に突き刺さっているが、死んではいない。死なせない。ただ逃げられては困るので、足は折ってもらって森の中に放り込んでおいた。暇な遠足、じゃなくて、実践訓練で。そのうち治して襲い掛かってもらう。それまでは痛みに耐えてもらいたい。
「片方は俺が受け持つんで、もう片方はお願いします」
「よし! やってやるよ! そっちは一人で大丈夫か!?」
「大丈夫ですよ。あなたたち二人でもミノタウロス一体はきついですよね。支援系魔術を掛けておきますよ」
「おぉ、そりゃ助かる」
「【付与魔術 超加速】【付与魔術 超強度】【付与魔術 物理防御】【幻魔術 勇猛】。これくらいでいい?」
前二つをそれぞれ下位互換に隠蔽して付与をする。最後の魔術は、恐怖耐性を与える幻属性の魔術だ。
「はぁー、最近の学生はすげぇな」
「これなら倒せそうだな」
バレてはいない様子。
ミノタウロスは棍棒を振り上げて前衛の冒険者に肉薄し、向かってくる彼に力任せに振り下ろす。
その棍棒を戦斧で受け止めると、前衛冒険者は強引にミノタウロスを押し返し、力に物を言わせて棍棒を跳ね上げた瞬間に戦斧の鋭い一撃を叩き込んでいる。その後、後衛の冒険者が魔術でとどめをさす。
付与魔術の物理防御の効果で強力なミノタウロスの一撃を耐えることが出来ている。幻魔術の力で恐怖も抱きづらくなっていた。
シオンもまたハザードライガーに向けて走ると、風が吹き抜けるようにすり抜けてその瞬間に首を斬り裂いて仕留める。一度こういうのやってみたかったんだよね。
生徒らは馬車の後ろで戦闘を見学していた。
魔物のレベルを下げた方がいいかな。ここの森の魔物は、最大がDランク。ところが、Dランクの魔物は数が少なく、それ以下が多く生息しているらしい。
いきなりBランクは上げ過ぎたみたいだ。対処できない班もあるようだ。さっきの冒険者同様に【固有スキル マップ探査】で魔術を掛けていく。これで全員倒せたようだ。
「す、スゲェ……」
「あの二人……凄い実力者だ!」
「エドワード君……凄い人に喧嘩を売ってたみたいだよ?」
「くぅぅ!」
ミノタウロスを倒した冒険者二人に対して、少年達は強くなりたいという憧れを与え、少年達の心を魅了した。
「もう少しで集合場所だ! あと少しだからな!」
冒険者の掛け声で少年たちは活気を取り戻して、『次は自分たちだ』と意気込む。
「お、ちょうど来たみたいだぞ。ゴブリンだ。シオンは今回、休みだ」
「さっきすごい戦闘をしたばっかだしな。よし、エドワード君たちでゴブリンを倒すんだ! ピンチになったら、入るから安心して戦ってくれ!」
「「了解しました!」」
そのゴブリン、きっとミノタウロスとかのゴブリンより強い魔物が急に出てきたので逃げてきたのだろう。
詫びのつもりで学生全員に【付与魔術 加速】を与える。
「わかる。わかるぞ」
「ああ、ゴブリンの攻撃が読める」
「ふっ、流石は俺だ」
自分たちが速くなっているだけなので、調子に乗られても。でも、いい感じに勘違いしてくれてる。それで目を慣れさせてくれ。
「よし。ゴブリンはの死体を回収して進むぞ! 合流地点まではもう少しだ」
皆、レベルは上がっている。
さっきのミノタウロスとハザードライガーで付き添いの冒険者たちも上がっている。これなら、またBランクを出しても先程よりは大丈夫だろう。
・・・
アヴァントヘルム学園都市の近くに位置する広大な森である。そして、数多くの魔物が生息する領域でもある。
主に冒険者や学者たちがこの森に踏み入り、薬草や鉱石、魔物の素材などを集める稼ぎ場となっているが、騎士や魔導士達の鍛錬を行う場所としても有名な森であった。
「ウォルフ先生! 信じられないと思いますが、私の班のところになんとミノタウロスが出現したんです!」
「え!」
「わかります。確かに信じられないと思いますが……」
「いや、お前もか!」
「あれ!? ウォルフ先生の所にもですか。私のとこにも来たんですよ!」
「今日の森はどうなってんだ!?」
「それで被害は?」
「ありません。奇跡ですよ!」
「何っ!」
「え? なんです?」
「実は、私の所もなんですよ」
「俺の班もそうでした」
「まさか、急に回復系の魔術の効果が上がったり、身体が思った以上に速く動けたり、とかは?」
「「「ありました!!」」」
「どうなってんだ?」
何やら、教員たちと護衛の冒険者たちが集まって話しているご様子。午後からの打ち合わせか?
「シオン! ボーッとしてないで手伝ってくれよ、人手が足りないんだから!」
同じく集合地点にたどり着いたオーランドに呼ばれて家を作成する。
俺は班員たちとこれも野営の訓練ということでテントを張っていたのだが、遊び心で土の家を作っていたのを見られ、その頑丈さに「出来る限り作ってくれ」と言われて作ってみている最中なのだ。
流石に自重して五軒くらいにしておいた。
土の家で崩れたら危ないと思うだろう。だが、そこも大丈夫。土を圧縮してより頑丈に作ってある。内装は、特にない。この四脚の机も地魔術で地面を持ち上げて作ってある。
「これ、どうしたら良いのですの? 私にはさっぱり……」
「確か、骨組みを組み立て……この布の中に入れて固定すると聞きましたが……」
「このハンマー、どうするんだろ? 私は良く解らないなぁ……ん?」
アルマたちは、現在テントを張るのに苦戦していた。
元より貴族令嬢のアルマとルウは、キャンプなどやった事はない。当然テントを張るなど未経験だった。他の班でも貴族子弟たちは苦戦していた。
彼女たちと同じ班員の獣人の少年は、彼女たちよりはうまく出来ている様子。彼は俺がアスカロンに絡まれたときにいた獣人の子だ。アルマの班には、他にも雷魔術が使えるというエンリもいた。
「杭は地面に打つ物なのでしょうが、骨組みが良く解りませんね。細い管と長い管がありますし、この短い紐は何なのでしょうか?」
「別に地面で寝ても良いんじゃない? 誰も困らないし」
獣人である彼は、いくら人のいる環境で育っても野生児のようである。
「あっ……」
アルマが不意に目を向けると、そこには黒尽くめの服に身を纏っている、暢気にウロチョロするシオンの姿があった。
「シオン! 何してるの? 野営の準備は?」
「それは終わってる。暇だったからうろついていただけ」
「そんな訳ないじゃない! 私たちが苦労してるのよ。そっちだって碌に野営なんてしたことないような人ばっかじゃない!」
要は自分が苦手なだけだろ。張り合おうとするな。
「だから、一人でやって終わらせた」
「ああ、足手まといだってことね。なら、私たちのも手伝いなさい!」
はっきり言うなぁ、おい。
「でも、それはせっかくの訓練にならないんじゃ?」
「うっ! で、でも、最初くらいは全く経験のない学生に組み立てろっていうのも……。それに、シオンだって一人でなんでもやっちゃって、それじゃ、他の班員の訓練にならないんじゃないの!?」
「わかったから。手伝うから。はぁー」
ここでも魔術を使って楽をしたら、周りから白い目で見られ、手伝いが増えることとなった。




