五十一話 創造神、挨拶する
シオンは【固有スキル 情報改変】でヘルメスの姿になる。
「皆さん! これから重要事項のお話があります」
メネアの声で従業員たちのざわざわがピタリと止む。その中には、イニシアもアリアもいた。
「まず、このエチゴヤ商会のオーナーであるヘルメス様が来ました。では、紹介を」
「了解。私の名はヘルメス。この商会の一通りのことはメネアに任せている。姿を見せたのなんて化け物騒動の時くらいなものかな。今まで私がした仕事は、特には、ないかな」
はい、従業員たちから軽蔑の眼差しいただきましたー。
まぁ、最もな事だな。今の俺の発言は仕事をせずに金だけ得ているように感じる。でも、一応は仕事してるんだぞ。商品を作ったり、運営の手伝いをしたり。
「主様は、自身を過小評価していらっしゃいます。主様がいるからこそこの商会は上手くいっているのです」
「そうは言うが、実際に私は商会では何もしていないわけでもあるし」
やったのは、メネアに商品になりそうな物を渡しただけ。
「主様はそうやって毎回利益を生んできております」
「わかったから。従業員たちも俺に聞きたいことがあるだろうし、その話はこのくらいで」
メネアは、俺を持ち上げてくれるが、恥ずかしい。
「はい。では、質問のある者は挙手を」
全員が手を挙げる。
メネアは茶髪の青年を指さす。
「あなたは、何故メネア様の主なのですか? あなたのような仕事もせずに金だけを貪るような方はメネア様に不釣り合いです」
「いや、ちゃんと仕事はしてるのだが。 で、その質問は、私がメネアには相応しくないということでいいのかな?」
「はい」
「私の仕事は、商品を手に入れることかな。宝石や魔剣、回復薬などの仕入れをしてるね。それをメネアに渡している。あとは、経理とかだね。人事はメネアに任せてる」
質問をした従業員もそれを聞いていた従業員たちもヘルメスの仕事内容に驚く。
魔剣の仕入れなどどれほど苦労することか。それに加えて回復薬にしても上質な回復薬を手に入れるには、相当な錬金術師が必要だ。その人物を引き入れることも大変なことだ。腕のいい錬金術師はどこでも重宝される人材だからだ。これだけのことをやってのける者は早々いないらしい。
それにそれらはすべてメネアがやってることだと思っていたようだ。それだけメネアが凄い人だからそれぐらいのことが出来るのだと思っていた。
「次の質問は誰だろうか?」
「いいですか?」
今度はイニシアが手を挙げる。
「どうぞ」
「メネア様はシオン君の従者なのですか? メネア様が代表の傍にもいると思うのですが?」
「そうだね。彼女は元々私の家でメイドをしていた身で、シオンくんも親類だからね。どっちにも仕えているということなのだよ」
そうなんだよね。その質問が一番困る。シオンの時にもヘルメスの時にもメネアは近くにいたから。
「つまりは、メネア様はあなたの家に仕えているということですか」
「まぁ、もう家はないし、他の家族もいないから、私と彼にだけ仕えているということになるけどね」
そもそも家族なんていないし。いやぁ、詐術スキルは助かるねぇ。
「他に質問は?」
誰も手を挙げない。
「無いようなのでこれで私の自己紹介を終わるとしよう。それと従業員の皆に信頼してもらえるように私もこれからはここでも作業をするとしよう」
「主様、ありがとうございました。では、次の重要事項です。このエチゴヤ商会学園都市支店に聖女が働きに来ることが決定しました」
聖女と聞いて、従業員たちはざわざわする。
「相手は聖女ですが、ここでは新入りです。気を遣わずにしっかりと仕事の指導をしてください」
「「「はい!」」」
メネアの統率力はすごいな。従業員たちの動揺を消した。
「これで話は以上です。お疲れさまでした」
「「「お疲れ様でした!!」」」
・・・
今日は、オーランドをライオスに紹介する約束がある。
【固有スキル マップ探索】でオーランドの位置がわかる。今は、俺がタコ型サテュロスと戦った広場にいるようだ。近くにスミスもいる。
「あそこに美女もいるな。あそこにも! 誰から行こうか」
「オーランド、ギルドに行くんじゃなかったのか? 俺、魔物と戦いたいんだが」
「なんだよ。いいじゃねぇか、せっかく選抜戦で活躍したんだぜ。一人くらいはナンパ成功すんだろ。お前だって期待してんじゃねぇのか?」
「……ま、まぁ」
近くまで来ると見つけやすい。うるさいから目立つ。
「ナンパしてんのか、オーランド」
「よ、奇遇だな。お前もナンパか? シオンの場合、男に思われないんじゃね」
「そもそもナンパなんてしない。今日はお前を紹介して欲しいって人にギルドで会わせるために来た。今日の予定は?」
「特にないぜ。スミスも来るか?」
「ああ。ギルドには元から行きたかったんだ」
ギルドに移動。
その間もオーランドは美人探しをしていた。欲望に素直だな。うるさくはあるが。
こういう美人を探したりすることは、【固有スキル マップ探査】でもできない。美人という抽象的な言葉では、起動しない。スキルにも称号にもないだろう。せめて称号の欄にに女好きという称号が増えるくらいなものだ。
「で、誰なんだ? 俺を紹介してほしいって審美眼を持った冒険者は? 言っとくが、Cランクとかはお断りだぜ。なんせ俺は選抜選手なんだからな」
こいつ、調子に乗ってるな。いつか足元をすくわれるな。
「オーランド、俺もお前もシオンにいろんなことを教わったからこうして選抜選手になれたんだ。それを忘れてんのか?」
「忘れてねぇよ。ちょっとぐらい浮かれたっていいじゃねぇか。シオン、その冒険者の名前は?」
「ゴリ……ライオス」
与えられた力を完璧に使いこなすことも出来ずにスキルの元の力で浮かれた子供は早死にする。
オーランドもそんな子供の一人になるのか。
「ライオス?」
「そう」
「ライオスってAランク冒険者の?」
「そう」
「竜殺しの?」
「竜というかワイバーンだけどな」
「いやいやワイバーンは竜だろうが」
「そうか」
「マジでか! 俺、あのライオスにスカウトされてんだ! すげぇ!」
「あ、いた。あそこのテーブルにいるのが、ライオスだ」
ギルドに入ってすぐにライオスが見つかった。仲間のサリアとクリスと昼間から酒を飲んでる。
「連れてきたぞ、ライオス」
「すまねぇな、シオン。さて、オーランド……なるほど。わかった。シオン、すまないが、俺のパーティには入れられないな。せっかく呼んでもらったのに悪いな」
「いい。大体わかってたし」
「ん? なんだ、俺のスカウトじゃないのか?」
「オーランド、おそらくだが、お前が俺たちのパーティに入ってもあまり活躍できそうにないんだ。それに俺の仲間にそんな目線を向けるやつとは正直戦いたくねぇな」
「は? なんだよ、それ!」
「ライオスの言う通り。あなたのステータスを見せてもらったけど秀でているものがない」
「ええ、そうね。私もなんとなくわかるわ。彼にここはまだ早いわね」
魔術師のサリアは【スキル 状態診断】で判断して、クリスは勘で断る。
「ま、そうだな。二人も同じ意見のようだし、すまなかったな」
「り、理由を教えてくれ。俺じゃなんでダメなんだ!?」
「選抜戦での戦いは見たよ。他の奴相手なら抜きんでていた。だが、そこまでだ。他が弱かったから強く見えてしまったのかもな。シオンはどうしてだと思う?」
「俺か? 俺は使えるスキルが増えてはしゃいでいる赤子にしか見えない。はしゃぐのはいいかもだけど、スキルレベルを上げていない」
それでも勝てたのは、オーランドの戦い方がうまかっただけ。それもいいのだろう。しかし、Aランクの冒険者パーティに入れても、それでは役立たずになる。
「ああ、なんか本当にすまなかったな。こっちから呼んだのに。……俺たちはもう行くよ。またな、シオン」
あ、後のことが面倒だからって逃げたな。
「オーランドは調子に乗りすぎてたんだな。俺たちの力は、俺たち自身で編み出した力じゃない。俺たちは、ただシオンに与えられたものでうまく立ち回っていただけだ」
スキルだけ促成栽培させたようなものだからな。レベルもパワーレベリングしても技術や身体がついてこなければ毒に成り代わる。
「……スミス」
「この機会は、お前は与えられただけの力でうかうかするなよっていう戒めだったっていうことだ。だから、ほら、魔物を討伐しに行くぞ。ちゃんと自分の力を自分たちの物にするために」
スミスの言葉で復活したオーランドは、魔物討伐をしにギルドを出た。
防音の結界魔術使っておいてよかった。なんか悪いことしたみたいだし。
でも、大会が終わって女性に言い寄られるようになり、うっとおしく自慢されていたため、俺としては良いかな。後で越後屋商会の鍛錬にでも混ざれるようにしておこうかな。
ちょうどいい機会だ。アルマたちも参加させてみよう。
鍛えるなら俺よりメネアの方が教え上手だ。俺は強者をさらに強くするための鍛錬なら可能だが、それ以下の相手は難しい。
その時にそれぞれが何の役割に適性があるのか見ていけばいいだろう。
弓を使った狙撃手、チクチクダメージを与えていく軽戦士、パーティの基盤となるタンク、索敵・翻弄・補助の忍者とか。
様々な体術を仕込むのもいいな。中国拳法、古武術、徒手空拳、合気道、ジークンドー、柔道、空手、八卦掌、クラヴ・マガ、パンクラチオン。種類は多数。
でも、そうか。いっその事Sクラス以外の下位のクラスに勉学を叩き込めば、面白いことになるかもしれんな。急な下剋上には必死になって勉学に励むようになるだろうし。
ちなみに、俺のところに来た女性はもれなく撃ち落とした。
さらに追加で越後屋商会とも関係を持っているためか、かなりの人が来た。
さて、俺はこれで用事も終わったし、ゴンツのところに行くとしようか。




