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黒い夢と白い夢Ⅶ ――夢の終わり――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第4章 終わりの始まり ――臨時政府首都ポートシティ――
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第19話 2年前の首都爆破事件

 【クリスター政府首都ポートシティ クリスター政府中枢区画】


 もうすぐ小型飛空艇離着陸場だ。ただ、総帥オフィスから飛び出して、だいぶ時間が経っている。クラスタが先回りしている可能性は十分にある。ここからは気を付けた方がいいな……

 私は今まで以上に辺りを警戒しながら歩いていく。クリスター政府中枢区画は多くの建物群から構成され、1つの都市のようになっている。復興のための行政省庁だ。今は統治のための行政省庁となったが……

 そういえば、臨時政府からクリスター政府に変わるのが、驚くほどスムーズだった。行政機関の整備だって、すでに行われていたようだ。臨時政府を作ったときから、国際政府から分離・独立する気だったのかも知れない。


「知らなかったのは、私だけか……」


 私は臨時政府の暫定総帥だった。だが、私は政治には詳しくない。それに、総帥という地位も所詮はシンボルでしかないと聞かされていた。だから、政治は全てフェスター議長を筆頭に議会が行っていた。私の知らないところで、クリスター政府が作られていたんだ。


「パトラー……」

「…………! ピューリタン!」


 今度はピューリタン将軍が現れる。その側には若い女性軍人――ミュート少将と、黒髪の青年――トワイラル少将がいた。


「国際政府に戻るんだな」

「……私が国際政府の准将や少将だった頃、ピューリタンには色々と助けて貰ったな」


 私の脳裏に、2年近く前のことが思い浮かぶ。私は2年前、国際政府の准将だった。そのとき、ピューリタンの兵団に私は所属していた。


「2年前の首都爆破事件を覚えているか?」

「連合政府の勢いがまだ強かった頃、ティワードがクローン兵を首都に侵入させ、自爆テロを行わせた事件だよね」


 ……身体に爆弾を埋め込まれたクローン兵が、自爆テロを起こした。それで、首都でたくさんの市民が死んだ。私が本格的にラグナロク大戦に身を投じた事件だ。

 思い返せば、あの頃は連合政府内ではクローン兵は奴隷同然だった。キャプテン・アレイシアも、まだ将軍の地位になかった。確か准将か少将だったハズだ。

 アレからクローン兵は連合政府内で大きく地位を上げた。アレイシアは将軍に、ムースやヴィクターのように、たくさんのクローン軍人が将官になった。当時の連合政府リーダーたちは、考えもしなかっただろう。


「あの首都爆破事件から3ヶ月後には、初めて連合政府リーダーの1人を追い詰めたな」

「ララーベルのこと? 子どもを実験台にしていた製薬会社「テトラル」の総帥……」


 そうか、もう2年も前になるのか…… ピューリタンと肩を並べて戦った日々のことが思い浮かぶ。やがて、側で戦う仲間はピューリタンからクラスタに変わった。でも、今度は1人だ。


「もう、お前とは一緒に戦えないのか……?」

「……死に別れじゃない。またいつの日か、戻ってくる」


 国際政府を立て直し、いつかクリスター政府と国際政府を合流させよう。それが自由と平和を取り戻す私なりの方法だ。


「どうしても行くのなら、絶対に戻ってこい。そして、行方の知れないお前の師(=フィルド)を探そう」

「ありがとう、ピューリタン……」


 私はそう言い、その場から離れる。もたもたしていると、追手がやって来るかも知れない。そうなったら、ピューリタンやトワイラルに迷惑だろう。


 やがて、私は広いメイン・ストリートに出る。すでに建物が密集している所は過ぎ去った。辺りは広い見私のいい場所だ。

 そのとき、雨が降ってくる。11月の冷たい雨だ。でも、ここで立ち止まるワケにはいかない。あと少しで飛空艇離着陸場なんだ。


「待て――」


 私は脚を止める。この声は――


「クラスタ……」


 私は後ろを振り返る。そこにはクラスタが立っていた。彼女は小型ジェット機を背負っていた。アレでここまで飛んで来たのか。


「クリスター政府軍事総督として、お前を国際政府に行かせるワケにはいかない」

「それでも私は絶対に戻る」

「なら、力ずくで止めるだけだ」


 彼女は左腕に装備した小型コンピューターを素早く操作する。そうか、本気で私と戦うつもりなのか…… 私も覚悟を決め、剣を抜く。

 クラスタとはずっと一緒に戦ってきた仲間だ。シンシア支部、科学都市テクノシティ、産業都市グランドシティ、シリオード大陸、降水都市プレリアシティ、幻想都市ファンタジアシティ、シュードラ支部、アポカリム、経済都市エコノミアシティ、水流都市ウォルタミアシティ、ジェネラル・シップ、ダーク・サンクチュアリ。そして、レート=クライシス、連合政府首都ティトシティ――

 何度も共に戦い、何度も助けて貰った。なのに、今から刃を交えなきゃならない。昨日まで笑い合っていたのに、戦わなきゃいけない。


「クラスタっ……」


 雨が降っていてよかった。また、私の頬に熱い液体が流れていく。でも、今は泣いている場合じゃない。私は涙を素早く拭うと、しっかりと剣を構える。


「行くぞ、パトラー!」


 クラスタが叫ぶようにして言う。白い夢同士の戦いだ――

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