第20話 クリスター政府首都からの脱出
「かかれ!」
クラスタが叫ぶと、彼女の周りにバトル=アルファなどの軍用兵器が電撃音と共に、一斉に現れる。連合政府との戦いで奪ったロボット兵器だ。
[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]
[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]
青いラインが入った黒色の人間型ロボットは、アサルトライフルを手に、私に襲い掛かってくる。今度は実弾だ。私は物理シールドを纏う。相手はバトル=アルファ5体に加え、バトル=メシェディが3体だ。手ごわい敵じゃない!
私は自らバトル=アルファに近づき、脆弱なロボット兵器を斬り倒していく。アルファは簡単だ。ただ、メシェディは少し厄介だ。
[攻撃セヨ!]
バトル=メシェディは素早く私の剣を避け、後ろに飛ぶ。手に持った銃火器で私の手を狙い撃ちして来る。その狙いはかなり正確だ。
私は魔法弾を飛ばす。4発の炎の弾――火炎弾が飛んでいく。だが、バトル=メシェディは何度も素早く飛び跳ねながら、それを避ける。全ての火炎弾を避けた。
でも、そんなことはお見通しだ。避けるバトル=メシェディに一気に近寄り、その身体を斬りつける。これは避けきれなかった。次々と残骸が火花を散らし、黒色の地面に転がる。
「私を忘れるな!」
「…………!」
バトル=メシェディを斬り倒しているとき、クラスタも走り寄ってくる。その手には剣が握られていた。私は最後のバトル=メシェディを斬り倒すと、素早く飛んで避けようとする。だが、その動きは見切られていた。剣が振られる。脇腹を大きく斬られる。
「うっ、あッ……!」
私は上手く着地できず、地面に倒れてしまう。クラスタが、血の付いた剣を手に、歩いてくる。物理シールドを張っていたのに、なんで……!? その答えはすぐに分かった。彼女の剣には、黒い雲状のエネルギー――ラグナロク魔法が纏われていた。シールドで防げない魔法エネルギーだ。
さすがだ。何度も一緒に戦ってきただけに、私の動きを完全に読まれている。
「パトラー、どうしても国際政府に戻るのか?」
「いっ、今更それを聞き返す、のか?」
「……そうだな。ならば仕方ない。私はお前を捕えるだけ」
そう言い、クラスタは私に歩み寄ろうとした。だが、そのとき、空からデルタ型の小型戦闘機が迫ってくる。間違いなくクリスター政府のものだ。
「なッ!?」
クラスタは素早く私から離れる。小型戦闘機は私とクラスタの間に着陸する。戦闘機上部に覆い被さるハッチを開け、中から誰かが身体を出す。その手にはハンドボムが握られていた。
「…………!」
クラスタは更に後ろに飛ぼうとする。だが、それよりも前に、そのハンドボムが投げられる。着弾と同時に、大量の煙が発せられる。クラスタの姿が消える。
「パトラーさん、こっちに!」
「コマンダー・ヴィクター!?」
乗っていたのはヴィクター准将だった。私は素早く小型戦闘機に乗り込むと、開いていたハッチを閉じる。すぐ近くまで煙が迫っていた。
私がハッチを閉めると、ヴィクターはすぐに小型戦闘機を発進させ、雨が降り注ぐ夜のクリスター政府首都の空を飛んでいく。
「国際政府に戻るんですよね?」
「あ、ああ、そうだけど……」
「なら、私も一緒です!」
小型戦闘機の操縦席に座るヴィクターは笑顔でそう答える。
「い、いいのか!?」
「私はクロント城でパトラーさんに助けて頂きました。その日以来、あなたに忠誠を誓ってきました。パトラーさんがクリスター政府を去るなら、私も一緒に付いて行きます!」
そう言うヴィクターの目に、迷いはなかった。ヴィクターの助けで安心した途端、急に疲れと痛みが身体に襲い掛かってきた。
「だ、大丈夫ですか!?」
「なに、これぐらい……」
私は手を振る。蒼色の魔法弾――回復弾が傷口を癒す。……でも、心の苦痛は取れなかった。むしろ、急にそれは酷くなっていく。
「クラスタっ、みんな……」
また涙が溢れてくる。今度はしばらく止まりそうにない。それは、堰を切ったかのようだった。声さえも漏れ出てしまう。……一気に寂しさと悲しさが襲い掛かってきた。
私は多くの仲間の制止を振り切って、国際政府に戻る。もう、クラスタを始めとする多くの仲間は一緒じゃない。ヴィクターがいてくれたことが、唯一の救いだった。
臨時政府は終わりを迎えた。
そして、新しくクリスター政府が成立した。
連合政府首都ティトシティは陥落した。
かつて圧倒的な力を誇っていた連合政府に、その面影は完全になくなった。
時代が変わろうとしている。
4年近くも続いたラグナロク大戦の時代が終わろうとしている。
黒い夢と白い夢の戦いも、終わりが近いのかも知れない。
黒と白の決戦が、近いのかも知れない。
私は、私のやり方で黒い夢を打ち破る。
……なのに、寂しさと――みんながいない怖さが、私の心に絡みついていた。
でも、ここで倒れはしない。
必ず、パトフォーを、黒い夢を、私は倒し、自由と平和を取り戻すんだ――!




