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王都の各自の想いと行動 その一







「おぉ~!!これが王都!!すごいね、すごいね!!」

『ふむ、外見的構造は魔都と酷似しているな。当時の建築技術は魔人領の方が優れていた為、模倣した可能性があるな?』


 マオとユアンと一行はその日の早朝、王都『テュハイトス』に着いていた。

 王都という事もあり、魔物の侵入を防ぐべく、堅牢な壁が町を囲んでいる。

 巨大な魔物もいる為か、高さは巨人族を優に越えるほど大きく、平人が作った建造物の中でこれが最も大きいのではないだろうか。

 更に、王が住まう町である為、無骨な造りではその権威を示せないと判断したのだろう。

 至る所に彫刻の意匠が施され、気品溢れる様になっていた。


 ルークやクインは戻ってきた事に、ガーナードは漸く願いが叶った事に感動を覚える。


「戻って来れたんだな…」

「えぇ…」


 戻れる可能性が低かった事など分かっていた。

 それでも努力し続けた結果、それが実を結んだのだ。

 喜びも一入だろう。


「アイナ…」


 ガーナードは小さく最愛の女性の名を口にする。

 彼は単にアイナの後を追い続けた。

 幻影であっても、真実にいたる決意は彼が望んだ事。

 忘れず、諦めず、投げ出さずに進んだ結果だった。


 それぞれの思いは違えども、皆無事に王都に着けたことに喜びを感じ、門前で並んでいる商人や冒険者の後ろに並ぶ。


 並ぶには並んだが、早朝という事もあり、待つ時間はそれほど長くなかった。

 すぐに一行の順番がきた為、ガーナードは学園長から事前に受け取っていた書類を衛兵に渡す。

 学園の印が入ったそれは、優秀者を証明する物で、何の引止めも無く、滞在許可書が発行された。

 コロギの時の苦労を知っているからか、ユアンは少し呆気なさを感じる。


 ユアンにとって門を通る感覚はコロギに続き、二回目だ。

 暗いその先に、またコロギと違う世界が待っていると思うと興奮に身を震わせる。


 父親から条件を言い渡されて一年。

 自分の身体が弱いことなどとうに知っているユアンは、先に進みたい感情をずっと秘めていた。

 その条件はもうすぐ解除される。

 旅に出れるのだ。


 しかし、条件を言い渡されて、出会えた。

 ルークとクイン、ガーナードと言う友人に。

 後数年、友人と学園に通うのも悪くないと思っている。

 自分のわがままに付き合ってくれるだろうか?

 ユアンは少し不安に思うも、マオだからと意味不明な自信で付き合ってくれるのだろうと確信している。

 そんな事を考えていると、暗い先に見える光から喧騒が聞こえ始めた。

 それは楽しげで、喜びに満ち溢れている。


「~~~~~っ!!!!!」


 ユアンにとって光の中はそれはもう、御伽噺のような世界だった。

 片田舎に生まれたユアンには衝撃が強すぎる。

 周りを見渡せば、人、人、人。

 コロギなど比較にならないほど、人の波に露店のさまざま。

 すれ違う人々の表情は全て明るく、笑い合っている。

 紙吹雪も舞い、何処かお祭りを思わせる。


「そうか、建国祭の真っ只中か」

「建国祭?」


 思わせるのではなく、実際にお祭りだったようである。

 ルークによれば、五日間は一年に一度の建国記念でお祭りらしい。

 飲食関係以外の人間は仕事を止めて、踊り、騒ぎ、飲み、食べる行事。

 日々の平和に感謝し、前線の兵士さえも酒が振舞われるのだ。

 三日目らしく、少し落ち着いてきた頃合なのだとか。

 ユアンにすれば、これでも十分なほど心躍らせる光景であった。


「それに今年はシーラ王女の初お披露目だったな」

「そうだったわね、お祝い渡さなきゃ」


 現国王のご息女、シーラ王女は齢十歳になったらしく、正式な式典はこれが初となるらしい。

 この建国記念中、毎日馬車に乗り、町中に顔を見せ、民に顔を覚えてもらうのだ。

 恐らく、皆そのご尊顔を拝む事ができたのだろう。

 聞こえてくる話し声の中の殆どがシーラ王女に対する事ばかりであった。

 曰く、宝玉のように美しい。

 曰く、人形のように愛らしい。

 曰く、気品高く、礼儀も身に着けていた。

 などなど、褒め言葉ばかりであった。


『一度、見てみたいものだな』

(機会があれば見れるかも)


 噂とは事実と非なる事が多いが、民衆が皆揃って褒めるのは噂が真実だという証明に他ならない。

 美しい物を見たいと言うのはマオも同じであったのだろう。

 ユアンと共に出会える事を楽しみにしていた。


 そしてルークとクインは貴族である為、直接ではないが、城に贈り物を送らねばならない。

 勿論、その品はディナトルエ家から出すので一つで良いのだが、同じ女性であるクインやその母親の意見が強く出るだろう。

 在り来たりなのは宝石の類で、偶に化粧品、華、絵画なども送られる。


「これからどうする?」


 話していたのでは時間ばかりが過ぎると判断したガーナードは皆に今後の予定を問う。


「僕は町を回りたい」

「ユアン、無理しないでね?倒れたばかりなんだから」

「うん!!大丈夫!!」


 ユアンは早く回りたくて仕方が無かった。

 あの人の波に飛び込めたらとうずうずしている。

 露店の品々に、屋台の料理が待っていると思うと、早く行かねばという意味の分からない使命感に燃えている。

 勿論、その前に冒険者組合に顔を出し、アレンの手紙を『精霊の泉』と言う冒険者団に渡さなければいけないのだが、今のユアンが覚えているのか怪しい所である。


「俺とクインは家に顔を出さなきゃなんねぇ」

「そうね」


 取り合えず、ルークやクインは両親に戻ってきたと言う報告をしなければ行けない。

 一応、コロギ出発前に手紙を出して、知らせてはあるが、自分の口から話したい事もあるだろう。

 特に、ユアンの事の助言があったからこそ、戻って来れた事も話し、クインはユアンを家に招きたいとも思っていた。

 ルークとしても早く父親に会いたかった。

 ……強くなった自分なら父に拳を当てられるだろうと言う意味で。


「じゃあ、僕は学園に優秀者が到着した事を知らせてくるよ」

「すみません、お願いしてもいいですか」

「構わないよ。用事があってついでだからね」


 ガーナードはあの日、アイナの身に何があったのかを調べたかった。

 これは友人である三人に頼むべき物ではなく、自分がやらなければいけない事だと思っている。

 その為、一人になる時間が欲しかった為、三人の予定はありがたかった。


 元々、街に着いたら探索に出る予定だったのだが、この混み具合では街の探索など出来やしない。

 特にユアンなど未だに背が低いのだ。

 人の波に浚われたら、人力で探すのは骨であろう。

 建国記念日を失念していたので仕方ない事であっただろう。

 ただ、目的が各自違う為、ある意味よかったと言える。


 学園が終わった後、何日かに分けて王都出身であるルークやクインに案内をしてもらうと言う事でその日、三人は別々の行動を取る事にしたのであった。


「ご飯~♪ご飯~♪」

『おい、組合は……聞こえてないし…』


 マオの指摘はユアンには届かないのであった。

お久しぶりです。

ちょっと、三人称で書くのが久しぶりで変な部分があると想いますが、ご了承下さい。

次の奴が一人称で書いてみたので・・・。

新しい物語の書き溜めを作る為に今月はこちらの更新が滞ってしまいました。

ごめんなさい。

一応、一週間分は書き溜め出来たので、明日から一週間は毎日、新作の方を投稿していきます。

こちらは・・・いつも通り不定期です


こちらの作品も新しく投稿する作品も見ていただけるととても嬉しく思います。

ではまた次の機会に

ではでは~


あっ、タイトルは『不真面目護衛官の出世街道』です

誰かを護りたい願望は誰しもあると思うのです

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