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11 幕間(後)






 悠の指が全て曲げられる寸前。


 世羅は言葉では表現しづらい『何か』を感じた。


「む。」


「――え?」


 戒が身体ごと顔を動かし、ほぼ同時に、世羅も同じ方向へと視線を向けていた。


 元より悠に指し示されてはいたのだが、より詳細な、面ではなく点でその場を見つめる。


 何を感じたのかは定かではないのだが、それは半ば反射的な反応だった。


「時間だよ」


 不意に生じた意識の間隙にするりと割り込む悠の思わせ振りな台詞(セリフ)


 問い質す暇もなく、だが、その結果(こたえ)が世羅の視線の先に確かな形で顕れる。


 ほんの一瞬で。



 ――緋色の闇が、燃え上がった炎に紅く塗り直された。



「はい?」


 思わず、世羅の口からは上ずった変な声が出る。


 それは巨大な火柱だった。


 廃墟マンション郡側ではなかったので、何に遮られるでもなくよく見えた。


 距離はかなり離れている。


 これまでの移動の経験と『PDA』で確認した地図(マツプ)を照らし合わせての判断なのだが、恐らくはこの区画(エリア)から上に二つ移動した区画(エリア)で発生しているのだと思われる。


 視線の先で立ち昇ったのは横幅百メートル規模の巨大な火柱だ。


 渦を巻く火炎の高さは天の蓋まで届いている。その膨大な光量は、その一帯を紅く染め上げていた。


 その温度は想像するのが困難なレベルに達しているだろうし、飲まれれば並の人間なら一瞬で灰も残らず燃え尽きるに違いない。


 轟々と渦巻く火柱はとぐろを巻いた炎蛇のようにも見えて、遠目にも禍々しく感じる光景なのだが、その規模が常軌を逸しているために何かの演出のように見えなくもない――という感想は、世羅が非常識な経験に慣れつつあるがゆえだろうか。


「派手な篝火だな」


 悠の思わせぶりだった発言とは裏腹に、戒の感想は相も変わらずに素っ気ない。


 やや不快そうに目を細めながら、何をするでもなく腕を組んで傍観している。


「………………えぇ~っと、あんたは動じないわねぇ」


 そんな戒の感想にポカンと口を開いてしまっていた世羅は、驚きに染まっていた意識が正常に戻る。


 口から出たのは、呆れを含んだ軽口に類するものだ。


「実害が無いなら気にする必要はない」


「実害が無くても、あんな規模なら気になるのが普通じゃない?」


「お前は、俺を普通だと思っているのか?」


「ううん。全然まったくこれっぽっちも思ってないわよ。うん」


 内面はさておき、外面に関しては完膚無きまでに。


「……なら、絡むな。疲れていると言ったはずだ」


 微塵も躊躇のなかった世羅の返しに、戒は冷めた一瞥を寄越してからため息を吐く。


「はいはい」


 冗談のような規模の『力』が使われた戦闘が行われているようだが、正直に打ち明けると、世羅もそんなに興味を惹かれてはいなかった。


 戒が言うように場所が離れているために巻き込まれる心配がないのだから、今となってはモニター越しに花火を見ているような気分だった。


 本人は無自覚だがこうした切り替えの早さは、常人離れしていると言えるだろう。


 付け加えて、状況が一切把握できていないというのもある。


 だから、思考部分は別を向いている。


 あの『炎』は自然現象ではない。


 だからといって、魔術によって発現したものでもない。


 大気魔力(マナ)の密度が増しているために、そうした術式の発動が成されれば――特にあれだけ大規模な魔術を使用すれば、大気魔力(マナ)の変動で感知が可能なはずだ。


 だが、そうしたものは感じられなかった。


 世羅の持ちうる知識に照らし合わせれば、あれは似て非なる『力』で生み出された『炎』ということになる。


「………能力者、ね」


 ほとんど無意識に口から零れた呟き。


 その単語から導かれる顔は、今のところ一人だけど、あの『炎』の主とは別口だろう。


 そんな気がする。


 ちらりと横目で、悠とラスクを伺う。


「ふむ。確かに、傍目にも興味をそそられる光景ではあるな。我々(『魔法』)とは異なる『法則』で編まれたあの『力』も興味深くはあったんだよ。やがては人間が到達する領域ではあったとしても、ここ最近に発生した連中は歪な紛い者に過ぎないのだからね」


 ラスクは思案するような仕種を見せながら、自己の思考に没頭している風で。


「頼むからそういう独り言は、頭の中だけでやってくんないかなぁ……」


 頭痛に耐えるように迷彩柄のバンダナ越しに額を指先でぐりぐりしていた悠は、気を取り直すように手でひさしを作ってからわざとらしい声で続けた。


「あの辺りは、無意味に巨大な無人の病院が主要施設となる区画(エリア)だねぇ。焼け野原になったかも知れないね?」


 事情を把握しているような口振りだったくせに、その態度はまるで他人事のようだった。


「ねぇ。斉藤悠(そこのバカ)


「えっ? 今なんか斬新な呼び方されたっ!?」


「早速、馴染んでるなぁ~。順応性の高いお嬢さんだ」


「ルーちゃん。なんか余計なことを言ったでしょ?」


 責めるようなジト目で傍らのラスクを見る悠。


「君がその呼び名を改めない限り、今後もあることないことを吹き込んでいこうとは思っているよ」


「うへぇ……」


 嫌そうな声を出しながらも、悠はそれ以上ラスクには何も言わずに、世羅に視線を移す。


 へらりと胡散臭い軽薄そうな笑みを浮かべながら。


「それで、なんだい? 桜堂世羅嬢」


「あんた、能力者については詳しい?」


「ま、人並み以上だとは思うよ」


 肯定があっさり出てくるあたり、彼は本当に何者なのだろう?


 そんな疑念が脳裏を掠める。


 悠が『夜の国』の関係者なのはもう疑う余地はないが、同郷の出と言えるはずのラスクは興味深いと言っているように精通していないような物言いだったのに対し――ただし、なにやら不穏な発言はしていたが――彼女よりも遥かに若いはずの悠が詳しいというのは不自然な感じがした。


 あるいは、彼が央都に――『夜の国』よりもこの世界に近い場所(ところ)にいるからこそなのかも知れないが、やはり疑念が生じる。


 無視してしまえるほどに些細なものだが、見落とすには妙に気にかかる――小さな棘が刺さったかのような違和感は、ある種の不快感にも通じていた。


「それじゃあ、少し解説をお願いしたいのだけど?」


 そうした諸々をさておいて、そう言える自分も大概だとは思うが。


 世羅の提案に、悠はわずかな間を置いた。


「まずは、君がどの程度を把握しているのかを知りたいね。そこから補足をすれば二度手間が省ける」


「なるほど。合理的な提案ね」


 小さくうなずいてから、世羅は頭の中で己の知識を簡略化していく。


 ある程度まで纏まったところで口を開いた。


「……そうね。能力者は人と人の間に生まれた人に非ざる『能力』を宿す者。空を舞い、触れずに物を動かし、自身を別の場所へ瞬間的に移動させ、数多の特殊な『力』を操る。身体能力も高く、またある程度までのダメージなら、常人の数倍の速さで自然治癒する」


 自然治癒に関しては、悠に通ずるものがあるのだが、彼のそれは能力者であると仮定しても頭一つ飛び抜けている。


 彼のそれは別物であると考えるのが妥当だし、見当もついている。


 それに一口に『能力』といっても、噂話で聞いた限りでは、魔術と似て非なるもの(・・・・・・・・・・)――というか、あまり変わりがないとも言える。


 魔術とは大きく言ってしまえば『現行世界に規定された法則の一時的な改竄』であり、小さく言えば『手順の異なる科学』である。


 極端且つ端的に言えば、ライターで火を熾す作業を、別の手順で行っていると解釈すれば、少しはわかりやすいだろうか。


 そもそも魔術の基礎は、自己の属性に相応の選別をした術式(プログラム)を、自分(コンピユーター)の中に、インストールする作業に近い。


 そうした下地を創り上げた上で、現実を塗り替えるほどの自己の世界を(・・・・・・)創り上げる(・・・・・)のが常道である。


 細かい部分は追々どこかで解説するとして、結論を述べると、魔術は万能ではないし、ある程度の手順を踏む必要のある『技術』なのである。


 しかし、爽馬を見た限りでは、能力者にはそれがない(・・・・・・・・・・)


 あるいは非常に洗練された(・・・・・・・・)簡略化が成されている(・・・・・・・・・・)


 似て非なる『力』というよりも、その先の『完成』に至った能力(ぎじゆつ)


 つまり能力者とは――『魔法使い』とは別の方向へと進化した『魔術師』なのではないかという仮説が成り立つ。


 ………多分にこじつけ的ではあるのだが。


 そんな思考を、口を動かすのと同時に脳裏で思い描いていた世羅はさらに言葉を続ける。


「およそニ十数年前から、能力者の存在が認識され始めるが、それ以前からも噂ぐらいでなら囁かれていたので、正確な発生に関しては不明とされている」


「時代を先取りしたような突然変異(ミユータント)という意味でなら、ありとあらゆる時代に極めて少数だが存在はしていたのだがね。己が身に宿る『力』の自覚の有無を問うと有耶無耶になってしまうが……」


 ラスクが付け加えた補足に軽くうなずいて、世羅は続ける。


「普通の人間には持ち得ない『能力』を宿した新しい人類(・・・・・)の存在は、明白に人類社会に紛れ込んだ段階から迫害の対象として認知された。その理由は各自が持つ『能力』を制御する能力が養われていない幼少時の暴走や暴発によるものがまず上げられる。前例のない『力』の発現は、意図せずに大規模な破壊をもたらすことも少なくはなかった」


「…………。」


 沈黙を保つ戒は、退屈そうに欠伸をしていた。


 その視線は今も轟々と燃え盛る炎を見据えている。


 あるいは、そこで行われているであろう戦いに目を凝らしているのかもしれない。


「また明らかに異なる『人間』に対する一般人の怖れが招く排斥的な差別。

 能力者と言う存在を知識として『採取』しようとする様々な思惑を持った人間、組織、国家の『好奇心』による迫害や差別に通ずる『研究素材(・・・・)』としての扱いなども上げられる」


「いつの時代も『異端者』に世間は厳しいものだからね」


 皮肉げに唇の端を吊り上げて、わざとらしく肩を竦める悠。


「…………。まだその絶対数が少ない頃から行われていた能力者への人類の行いは、二十数年前の爆発的な『感染拡大(パンデミツク)』とも評される絶対数の加速度的な増加により、能力者たちもまた徒党を組んで組織的な集団の形成が成されていったことで、人類と能力者の間に対立の構図が必然のように生まれてしまう」


「まさに歴史は繰り返すというわけだ。愚行という名の歴史を――と言いたいところだが、実のところ正しい選択でもある。下品ではあるがな」


 意味ありげな呟きを漏らすラスク。


 どうでもいいが、世羅が区切りを入れる度にいちいちコメントをしなくてもいいと思うのだが、黙って話を聞くような行儀のいい生徒には向いていないのだろう。


 内心で緩くため息を吐いてから、世羅はさらに続ける。


「その結果として、能力者は表社会から淘汰され、その存在は公的には認められていないところにまで貶められてしまう。しかし、当然ながら根絶されたわけではない。どころか、今現在もその数は増加の一途を辿っており、裏の社会においては『存在しない存在』として公認されている。要は使い勝手のいい捨て駒扱いということになるわけだけど、それは『裏』ではあんまり珍しくもない関係性だと思っているわ」


「まあ、能力者に限った話じゃないわな」


「それとは別に一部の能力者たちは独自の共同体(コミユニテイ)を造り上げている。そのほとんどは有名無実の地下組織みたいなものでしかないみたいだけれど、それでも彼らは(・・・・・・・)生きている(・・・・・)

 ――とまあ、大雑把にまとめるとこんな感じかしらね」


 思っていたよりも長くなった話を締め括り、世羅は緩く息を吐いた。


「うん。まあ、及第点だね」


 悠はパチパチと拍手をしてから、出来のいい生徒のレポートを褒める教師のように何度かうなずいた。


「こっちが語る必要がほとんどないし、言葉にしていない部分で君が考えてることもなんとなくわかるし、それが概ね正解だと言えるところにまで理解が及んでいるのもわかる」


 ヘラヘラと細められた目がわずかに開かれて、見透かすような、射抜くような、その内に『刃』を秘めた瞳が垣間見えた。


 今はまだ言葉で表現する術を持たないが、幾重もの仮面で覆い隠されている悠の『本質』がわずかに覗いたような気がする。


「では、いくつか補足をしよう。まずは訂正箇所が一つ」


 言いながら、指を一本立てる悠。


「能力者は数多の特殊な『力』を操ると言ってたけど、個々人に宿る特殊な能力は基本的に一つだけだ。それが規則性のない千差万別だからこそ生まれた誤解なのだろうけどね。前言された基礎能力と個人技能(オンリーワン)としての特殊能力が備わっているのが『能力者』としての標準と思うといい」


「そうなんだ」


 あくまでも小耳に挟んだ程度の噂話で構築した自説のようなものなので、その内容に大したこだわりはない。


 そもそもが実際に能力者と言える者に会ったのは、爽馬が初めてなのだ。


 正しく、百聞は一見にしかずというものであり、今後の事を考えれば(・・・・・・・・・)、この場でより詳細な知識を得られるのは願ったり叶ったりなので、世羅は素直に耳を傾ける。


「そうらしいよ。知り合いの能力者から聞いた話だから信憑性は高いけど、実際のところはどうだかわかんないから半信半疑でよろ♪」


「いるんだ。知り合いの能力者」


「それなりに顔は広いんでね」


 微妙な顔で肩をすくめる悠。


 たくさんの知り合いとやらの大半が、ロクでもなさそうだと思わせられる顔だった。


「そして、大概の知り合いからは鬱陶しいと疎まれているわけだ」


 ニヤニヤしながら付け加えるラスク。


「あ。なんか納得」


 躊躇なくうなずいてしまえる世羅。


 似たり寄ったりというか、類は友を呼ぶとかそんな感じなのだろう。


「うるさいな」


 憮然とした面持ちになりながらも、悠は二本目の指を立てる。


「次にいくよ。そもそも能力者とは何故生まれるのか。何故生まれたのか。

 人に非ざる者が、人間同士の交配で生まれる可能性とはどのぐらいだろうか。精神や身体に何らかの障害を課せられる子供は、決して少なくはない。だが、そもそも能力者はそうした形とは一線を画しているとは思わないか?」


「………………少なくても、何らかの『異常』とは思えないわね」


 どちらかというと、『進化』と評するのが正しいだろう。


 軽く調べる過程で、そうした論説を目にした記憶もある。


「能力者とは、順当な進化を遂げた新人類であるという仮説があった。脳の未使用部分が解放されて、身体も強化されている。これはある種の上位互換であり、そう遠くない将来の『先駆け』だと論ずる意見が出てくるのも妥当な話だ。絶対数で勝る旧世代の人類が、自分たちよりも優れた新人類を受け入れるかどうかは別問題だがね」


 如何にもわざとらしい嘆かわしさを表情いっぱいに浮かべて、悠はお手上げというように両手を広げる。


「無理な相談だろうね。進化の過程には淘汰現象が必然として存在する。どんなに隆盛を誇る集団でも、より優れて共生を許さない集団が現れれば、一気に駆逐されるのが自然の摂理というものだ。そもそも迫害を強いた現生の人類種が、能力者を社会的に受け入れれば、遠からず逆転現象が起こるのは、少しでも頭が使えるならば容易に想像できようさ」


 話が長くなってきたからだろう。


 ラスクは手近にあった瓦礫に腰かけて、片手を頬に添えてから視線を世羅に向けた。


「故に、種の存亡を懸けて両者は相争う、と?」


 その視線に応じる形で世羅は言う。


「そこまでの認識を持っている者は稀だがね」


 嘲笑うように口の端を歪めて、ラスクは続ける。


「ただ単純に自分に持たない物を持つ〝何者か〟を、眼前から排斥しようとする愚者の浅ましい自衛が大半だよ。そして、賢者よりも愚者の方が圧倒的に多く、今の世界は能力者には生き辛いような流れを形成している。ただそれだけの話に過ぎないよ」


「嫌な話ね」


 ため息を吐きながら、世羅はわずかに顔を俯ける。


「少しばかり話が重たい方向に逸れたが、それは特に重要じゃない」


「?」


「俺が君に伝えるべき本題は、今巷に溢れている能力者は正統な新人類と称するには程遠い『人造』だということだ。断言しよう。そりゃあ、中には『天然』もいたかも知れないが埋もれてしまえばわからない」


「人造って………どういう意味よ?」


 これまでの話の芯の部分にあったはずの大前提が、まるで氷が溶けるように消失していく感覚に、世羅の胸中に嫌な不安が渦巻き始める。


 気持ちの悪い汗が浮かび、背中を伝っていく。


「能力者という存在はね」


 聞くな――という本能の警鐘に世羅が何らかの反応をするよりも先に、なんでもない世間話のように呆気なく、世界の裏に潜んだどす黒い『闇』を悠は開示していた。



「馬鹿な連中の馬鹿な実験による馬鹿な結果なんだよ。とても静かに、とある『薬』が世界中でバラ撒かれているんだ。服用者になんら害を与える代物じゃないが、それを服用した人間が交配すれば、その子供は高確率で能力者として生まれる」



「………………………………………………………は?」


 さらりと告げられた悪意に塗れたおぞましい『真実』に、世羅の思考がわずかに停止する。


 一切の口を挟まずにこの場にいるだけというスタンスを貫いていた戒でさえ、視線をこちらへと動かしていた。


「………………な、によ、それ」


 たかが『薬』――下手をすれば錠剤一つ程度が、能力者の生まれる要因だというのもさることながら、そのやり方に全身が凍りついたかのような悪寒を覚える。


 それでは人類規模のロシアンルーレットだ。


 冗談か何かであった欲しいと心から願うが、この場で悠がそんな不謹慎な――怒髪天を突くような怒りを買うのが明白な冗談を口にするはずもない。


 なによりも――


 そこまで把握しておきながら、悠や彼のバックにいるであろう者たちでさえも現状を歯止めするための手の打てていないらしいという現実にぞっとする。


 まるで。


 まるで。


 それではまるで、この(・・)遊戯(・・)と同じではないのか(・・・・・・・・・)


 全容さえ定かではない巨大な『意志』を感じる。


 ――あぁ、これもまた悪魔の悪戯だ。


 運命なんてわけのわからないものではなく、明確な(ナニ)かの意志(あくい)で、何かの拍子にうっかり気を引いてしまった誰かが翻弄されて弄ばれる類の。


「そして、能力者とは一代限りだ。能力を宿して生まれた子供たちは総じて生殖能力を持たないし、平均寿命もそんなに長くはない仕組みになっている。今後のバージョンアップ(・・・・・・・・)次第ではそれも定かじゃないがね」


 皮肉げな悠の物言いに、変な笑いが込み上げてきそうになる。


「………その情報は、知り合いの能力者とかから聞き出したもんじゃないわよね?」


「立場的に何の手出しもせずにいられるわけもないだろ?」


「あんたの立場って何よ?」


「おぉっと。それについては守秘義務があるんだっけ。君にはまだ教えられないなぁ」


 どこか闇を滲ませていたさっきまでの態度から一変して、軽薄笑顔の仮面を被り直した悠がわざとらしく口を両手で覆う。


「それにしては、随分と迂闊に口を滑らせたわね」


君の今後のために(・・・・・・・・)必要な情報の取捨選別をしながら話してるんだ。少しぐらい余計な情報が混ざってしまっても仕方がないような気がしないでもないよねぇ?」


「………………。」


 最低でも、もう一度は爽馬に会う予定のある世羅としては、遠回しでも彼に繋がる情報を得ることは大きなメリットだ。


 だが、その思惑を見透かすような発言には、見落としようのない違和感が漂っている。

悪意は感じないが、だからといって善意に満ちているとも思えないために、悠を見る視線に警戒を含んだ不審が宿っていく。


「とにかく、敵方の末端の末端のそのまた末端ではあるが、『造る側』からいくらかの情報を得てはいるんだよ」


 情報を吐き出させられた側は、さぞかし無残な目に遭わされたのだろうと確信する歪な笑みが悠の口には浮かんでいた。


「敵、ねぇ」


「そうさ」


 世羅の含みのある視線と口調を、真っ向から受け止める悠。


「補足説明としてはこれぐらいかね。まだ何か聞きたい? 爆弾発言あるよ(・・・・・・・)?」


 そのまましれっと話題を戻す悠。


「………いろいろと引っかかってるとこはあるけれど、もういいわ。ちょっと情報の整理が追いつかないもの」


 正直、与えられた情報の重みに頭痛がする。


 聞いていながら、特に動じた様子のない戒が少し羨ましいぐらいだ。きっと心底からどうでもいいと思っているんだろうけど、それはそれで豪胆だ。


「やれやれ、としか言いようがないわねぇ……」


 現実逃避気味に視線を、未だに轟々と渦巻いている火柱に向けた。


 別にそのタイミングを待っていたわけでもないのだろうが、その瞬間に火柱が『見えない刃』に縦に斬り裂かれた。


「――――っ!?」


「ほぉう」


「おぉう。」


 世羅が目を見開き、ラスクがわずかな感嘆を漏らし、悠はこれまた白々しく驚きの仕種を見せた。


 さらに横薙ぎに一閃。


 四つに裂かれた炎の柱は、風に吹き散らされたかのように揺らめきながら消え去っていく。


 不条理が条理に飲まれるように、再び、緋色の夜へと還る。


 ほんの一瞬の出来事だった。


「…………。」


 戒といっしょに沈黙した。


 驚いたのではなく、他に意味がある沈黙だ。


あいつ(・・・)か」


 さして長くはなかった沈黙を破ったのは戒で、無表情は変わらないながらもその双眸にゾッとするほどの敵意が滲んでいる。


 それは終ぞ、悠には向けられなかったものだ。


「………間違いなく爽馬ね」


 戦闘はまだ継続中だろうが、ここから得られる情報はもうなさそうだ。


 通りがかったのか、巻き込まれたのか、それとも最初から相手は爽馬だったのか。


 そのどれであったとしても、爽馬の『力』ならば、より暴力的な手段で事態をすぐに沈静化するだろう。


 降りかかる火の粉は消し潰すタイプっぽいから。


「改めて思うが、邂逅時間がわずか一分にも満たない上に、明らかに敵視されている相手を、あっさりと名前で呼び捨てる図太さには感心するな」


「そんなに褒めないでよ。照れちゃうわ。えへ♪」


「今『えへ♪』とか言った!」


 外野からの突っ込みは完全に無視(シカト)


「出鱈目な奴だと認識していたが、よもやこれ程とはな」


 それどころか、戒は言葉尻に被せるように話を続けていた。


「これは私見だが、奴は見境がなくなった方が厄介なタイプだろう。奴と殺り合うなら出会い頭に瞬殺した方がいい」


「………お手軽なレシピみたく言わないでよ」


 物騒な発言に苦笑する。


「遠からず、お前は奴に逢いにいくのだろう?」


「まぁね」


「なら、穏便に片付くはずがない」


 戒がそう断言するのも当然だし、世羅自身もそれは確信している。


 それが最善の選択肢を選んでいたとしても、話をするまでに一戦交えることにはなるだろうし、そうならなかったとしても順番が変わる程度の違いしかないはずだ。


「でも、ヤるなら瞬殺かぁ……。確かに中距離・遠距離攻撃が得意な相手は、出会い頭にバッサリ殺るのが一番手っ取り早いとは思うけどね。でもね、なんか勘違いしてるみたいだから訂正するけど、あたしは話をしにいくのよ?」


「忠告というか、助言をしてやる」


 ジト目の抗議を普通に無視する戒だが、その発言内容には目を見開くぐらい驚いた。


 けれど、すぐにこみ上げてきた嬉しさで、世羅はかなり無防備な笑顔を浮かべていた。


「ありがと♡ 喜んで聞かせてもらうわ」


「奴は能力そのものが厄介極まりないという点から見落とし易そうだが、実際に一戦交えた身としては戦闘技術に関しては稚拙な部類だと判断した」


 戒はため息を吐いてから言った。


「ざっと考えただけでも奴の能力の汎用性は高い。俺が奴の攻撃をなんとなく読める(・・・・・・・・)のを差し引いても、あれだけの時間を戦っておきながら、俺が無傷ですんだという事実が腑に落ちない疑問だった」


「あんたに傷を付けるのは、普通に難しいんだけど?」


 自身への攻撃を無効化する『闇の衣』という範囲型の防御を有する戒である。


 真っ当な手段でダメージを通すのは容易ではない。少なくても世羅にはその手段がなにも思い付かない。


普通に素手で(・・・・・・)殴りかかれば簡単だ(・・・・・・・・・)


 ――と、戒は己の弱点をなんでもないように口にしてから続けた。


「根拠のない勘だが、奴の『刃』は『闇の衣』さえも切り裂く類のものだ」


「いや、ちょっ、まっ、あんた、なにを……っ!?」


「黙って聞け」


「……あ、はい」


 動揺する世羅を無視して説明を続けようとする戒に、素直にうなずくしかなかった。


 彼がなにを考えているのか、全くわからなかった。


「いや、それは少し違うか。正確には――奴がその気になれば、全てを斬り裂く(・・・・・・・)刃となる(・・・・)というべきだな。そんな気がする。だから、根本的にあの『刃』を防ごうとするのは間違いだ」


「へぇ~、流石の洞察だね」


 悠が感嘆の息を吐いているのが聞こえた。


「妙に理解が深いわね」


 おそらくは悠の内心に近いであろう感想を口にする。


「………………。」


 非常にわかりやすく、戒は嫌そうな顔になる。


「無表情キャラが壊れちゃってるわよ♪」


 こっちの発言は無視して、戒が続ける。


「――疑問に対する俺なりの解答だが、それを経験値不足だと考えるとそれなりの納得が得られる。なまじ強大な力を最初から持っていると叩き潰す程度の労力しか必要がない。故に技術が磨かれない。それなりに渡り合える奴が相手になったら、途端に経験不足という脆弱性が剥き出しになる。ありがちな落とし穴だ」


「なんか実感こもってるわね」


「………雇い主(クライアント)の護衛に痛い目を見せられた経験がある」


 世羅を半目で見下ろしながら、嫌なことを思い出した風に戒は舌打ちをした。


「結局のところ、どれだけ強い『力』を持っていたとしても、それを使う人間が弱ければ何の意味もない」


「なんだか深い話ね」


「結論から述べるならば、ゼロ距離からの打撃が有効だろう。それなりの一撃を叩き込めば、あっさりと意識を刈れるはずだ」


 なるほど、と納得しながらも、すぐに根本的なところに雄々しく聳え立つ難問に気づく。


「いや、そもそも爽馬に近づくのが大層な困難なんですけど?」


「それは自分で何とかしろ」


「超無責任っ!」


 やや大袈裟なリアクションで仰け反ってから、世羅はふっと微笑する。


「………でも、拝聴した意見は有効に活用させてもらうわね」


「お前は解説役に甘んじておけと言わせてもらいたいがな」


「じゃあ、あたしの代わりに、爽馬を半殺しにして引き摺ってきてくれるの?」


「断る。あいつとは関わりたくないと言ったはずだ」


なら(・・)、あたしが行くしかないじゃない」


 誰かに保護されて結果を貰うだけのお姫さま役なんて真っ平ごめんだ。


 自分の意思で決めたことは、自分の手で可能な限り遂行するのが信条だ。誰にも頼らないと言い切るほど傲慢ではないが、爽馬に関しては(・・・・・・・)世羅が動かなくては(・・・・・・・・・)始まらない(・・・・・)


 このまま何もしなければ、何かが致命的に終わってしまう。


 そんな気がするのだ。


「…………。」


 最終的に、ため息とともに黙認状態に移行した戒だが、こちらの真意を測りかねるといわんばかりの視線を向けてくる。


 正直、自分でも測りきれない感覚なので答えられないのが少しもどかしい。


 ただ、最初の邂逅の場で『あの二人が殺し合うのは間違っている』と思った気持ちが、何らかの形で起因になっているのではないかとは思っている。


 もう一度、あんな光景を繰り返されるのが、とても嫌だから。


 そうなる前に爽馬に逢いにいく。


 何かを変えたくて。



 ――何も変えられなかったあの人の背中を、今でも覚えているから――



 戒と爽馬で、あの後悔を繰り返したくない。


「割り込んで悪いけど、桜堂世羅嬢がさっきから『爽馬』って呼んでるのは、もしかしなくてもあの(・・)『刃』の能力者のことでOK?」


 興味深そうに傍観していた悠が、挙手をしながら口を開いた。


「そうよ。それがどうかした?」


あの(・・)『刃』の能力者――『静謐なる刃(サイレント・エツジ)』の本名を知ってるんなら、是非ともフルネームを教えていただきたい」


「二つ名を知ってて、どうして本名を知らないの?」


「誰も本名を知らないから、二つ名が定着してるんだよ」


「………あ、なるほど」


 そういうパターンもあるんだ、と妙な感心をしてしまった。


「岸本爽馬って名乗ったわ」


 特に隠す意味も感じなかったので教える。



「へぇ……。やっぱり(・・・・)あいつは変わって(・・・・・・・・)ないんだな(・・・・・)



「それってどーゆー意味なの?」


 意味深で思わせ振りな発言の再来だった。


 悠の口振りは知っている者のそれであり、なのに前言は面識がないような口振りなので矛盾している。


 指摘しても適当な口車ではぐらかされるだけなのは明らかで、ただ世羅の中では悠に対する不信感が積み上げられていくばかりだ。


 それがまるで誘導するかのようなのが、なおさらに気に入らない。


「内緒♪」


「………。」


 ほら――と内心で呟きながら、表面上は沈黙を保つ世羅。


「ともあれ、これでいろいろと『検索』がしやすくなったよ。

 ――てか、『静謐なる刃(サイレント・エツジ)』とも遭遇してたなんて、桜堂世羅嬢はいろんな意味で凄いなぁ。先輩と『静謐なる刃(サイレント・エツジ)』とルーちゃんと俺って、そうそう逢えるような面子じゃないし、この環境で五体満足でいられたってのは尋常じゃない。確実に誰かにロクでもない目に遭わされるのが普通だよ。あ、ちなみに俺は女の子には優しいからね」


 爽馬とは接触した時間が短かった上に戒が守ってくれたから五体満足でいられただけであり、例えば一対一で対面していたら今頃はこの場にいなかったのは間違いない。


 そういう意味では、世羅はかなり細いタイトロープでトリッキーなダンスをしている。


「「「………………。」」」


 いろいろと抗議のありそうな複数の視線を無視して、悠は続ける。


「いや、そうか。先輩と『静謐なる刃(サイレント・エツジ)』の出会い頭の初戦。再戦が決まってるから重要視してなかったけど、その場に居合わせるか、巻き込まれるかしたんだろ?」


「また……」


 小声で世羅は呟いていた。


 小波(さざなみ)のような苛立ちが、じわじわと胸中を蝕んでいく。


 再戦が決まって(・・・・・・・)いるから(・・・・)――というのはどういう意味なのか。おそらくは言葉通りの意味なのだろうが、それではまるでこの『遊戯(ゲーム)』で起きるであろう出来事を把握しているかのようにも聞こえる。


 そういえば、彼は世羅が『遊戯(ゲーム)』に関わっていることに疑問を抱いていたようだが、戒に関してはいるのが当然のように(・・・・・・・・・・)受け入れていた。


 言及したい疑問ではあるのだが、それは追及してもいい類の疑問なのかが気にかかる。


 斉藤悠という個人は、世羅がまだ知るべきではないことも知っており、問いかければ簡単に答えかねない危うさがある。


 それはさっきの『能力者』に関する話題で証明されている。


 本人は選別しているようなことを言っていたが、アレもかなり危険な類の情報だ。


 悠の線引きの曖昧さは、世羅に想像を絶する危険を招き寄せかねない。


 特に『この話題』においては、もう踏み込むべきではない――と、勘が強く訴えかけている。


 藪を突いて出てくるのは、蛇なんて可愛らしいレベルではないのだと。


「ご明察ね。その通りよ。それ以降は戒に同行させてもらってるわ」


 わずかに目を細めて、悠の表情の変化を観察しながら、世羅は小さくうなずく。


「なぁるほどね。どうして先輩と一緒だったのかが疑問だったけど、選択の余地がなかったのを差し引いてもまた無茶な人選をしたもんだねぇ。普通なら、先輩は選ばないよ?」


 呆れた風に肩を上下させる悠の態度に、目線をスライドさせて戒を見やる。


 いつの間にか警戒心すら消え失せていた暫定の相棒(パートナー)は、散々な言われっぷりにも眉一つ動かさずに黙したままだ。


 意識すらしていない無視。


 揺さぶられ続けている世羅としては、羨ましい領域だ。


「今さらだけど、あんたってホントに危険人物扱いなのね?」


「否定はしない」


 なのに、世羅の言には反応を返してきた。


 その差異は何を起因とするものなのかを追求したくはあったが、それは無粋にすぎるというものだろう。


「過去の所業を聞きたいわ」


「応じる義務は無い」


「なにはともあれ、せっかく見つけた有望な逸材に危ない橋を渡ってもらいたくはないんだけどね~。ま、桜堂世羅嬢は言って聞いてくれるようなタマじゃないよね?」


 やれやれと頭を掻く悠。


「まぁね」


「思った以上に捻れてるなぁ。どうやら、先輩と『静謐なる刃(サイレント・エツジ)』が再戦する前に、脚本外の一幕が捻じ込まれそうな勢いだねぇ。予定外の未知なる展開は、果たしてどんな未来へと繋がるのか、期待半分不安半分だな。くくくっ」


 なにやらニヤつきながらブツブツと呟く悠が果てしなく不気味だったが、そんな自分に向けられる視線に気づいたわけでもなさそうだが、懐から懐中時計を取り出す。


「さて、と。思いの外、話が脱線してしまったけれど、本気でそろそろ時間がヤバいので、本題に入らせてもらってもいいかな?」


「なんだっけ? ごめん。いろいろあり過ぎて本気で忘れた」


 かくっと肩を落とす悠。


「廃墟マンションに匿っている『護衛対象』の(こと)だよ」


「あ~」


「おぉ」


「………。」


 そういえばそうだった――という三者三様の反応に悠も苦笑い。


 諸悪の根源が誰であるかは自覚しているようなので、突っ込みをしなかったのを評価。


「回りくどい話は後回しにして、直接逢ってもらいたいんだけど、異論はあるかな?」


「無い」


 大いに異論がありそうな戒だが、ここでは大人になってくれた。


 世羅と違って好奇心などは皆無だろうが、回りくどい回り道を差し挟みながらもわざわざ悠が逢わそうとする相手が自分に無関係とは思えないのだろう。


「ないわよ」


 無論、世羅にも否はない。


「よし。俺はこれから二人を連れて、『護衛対象』のところに行くけど、ルーちゃんはどーする?」

思慮深そうに腕組みをしているラスクに、悠が問いかける。


「………ふむ。では、私も同行させてもらおう。構わないね?」


 こちらはわずかに思案の間を挟んだ。


 なんとなく間を置かずにうなずくものと思っていたが、何か他に気がかりがありそうな感じである。


 むしろ、自分が同行することで起きる可能性のある出来事を危惧しているようにも見えたが、最終的な結論は『同行』に傾いたらしい。


「ああ。だけど、来るならいろいろと手伝ってもらうぜ。正直に打ち明けるとあんまり手が足りてないんだ」


「ほう。聞き慣れない類の弱音だね。君らしくもない」


「放っとけ。想像すらしていなかった不測の事態に、事前準備も無しに放り込まれた挙句に、アドリブ込みの即興で護衛だ。しかも、失敗したら悪意に満ちた地獄巡りなんだぜ。刺客は無駄に執念深いし、愚痴は零したくなるしとなれば、たまたま近くまで来た顔見知りの先輩さん(・・・・・・・・・)にも手伝いを頼みたくなるさ」


「おい」


 さすがに黙っていられなかったらしい戒の突っ込み。


「まだ一言も頼んでなんかいないよね? 強いて言うなら、無駄な遠回りで引っ掻き回した挙げ句に、意図的に巻き込もうとしてるわよね、あんた?」


 そんな世羅たちの反応を悠はヘタクソな口笛で流し、ラスクは「仕方がないね」と肩をすくめた。


「それじゃあ、行こうか」


「その前に――」


 背中を向けた悠に、戒が鋭い声を投げる。


「最低限の義務として『護衛対象』とやらの名を明かせ。どうもお前の口振りから察するに、知らない奴ではなさそうだが?」


「ご明察だね」


 肩越しに振り返った悠が、苦笑のようなものを滲ませる。


「明かしておいた方が先輩も素直になるだろうし、そうさせてもらおうか」


 その口振りにはどことなく、本意ではなさそうな含みが感じられた。


「?」


 お互いに抱いた疑問は異なれども、揃って疑問符を浮かべる世羅たちに、悠は勿体ぶらずにその『名前』を告げた。







 ここしばらく全く出番のない爽馬君が、久しぶりに話題になっています。相変わらず出番どころか、セリフの一つもありませんが。ごめんよ。悪気はないんだ。もう少しだけ待ってくれ――とか言いつつ、次は新キャラ視点でのお話です。

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