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目覚めたらピンク頭の屑ヒロインだった件~罰は醜怪騎士団長との婚約だそうです  作者: 灰銀猫


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セラフィーナの噂の真相

 ―セラフィーナが婚約者のいる男性を何人も誘惑して、婚約を破棄させた―


 それは私が何度か聞かされたセラフィーナに関する噂だった。他にも男性に媚びているとか、高価な物を強請ったとか、その手の噂が色々あるのは知っていた。

 でも、実際のセラフィーナは男性嫌いで、とてもそんな事をするような子じゃなかった。その様な噂に傷つき、令嬢達からも冷たくされて人間不信になっていたほどなのだ。そしてその影響は、クローディアになった今でも続いているのは間違いなかった。


(その噂の大元が、このゲイル伯爵令嬢?)


 いくら婚約者に捨てられたからって、そこまで噂が広がるだろうか?実際のセラフィーナをみれば、そんな事はあり得ないと分かりそうなものなのに。


(でも…)


 貴族社会では高位貴族の言う事は下位貴族には絶対だ。そして、上位貴族がそう言えば、彼らに気に入られようとする者はこぞってその噂を肯定し、更に尾ひれを付けるのだろう。まだ十七歳のセラフィーナがとんでもない悪女にされたのは、この様な経緯があるからだろうと、この頃には私も理解していた。


「噂の真偽について調べたところ、最終的に行き付くのは貴女だった」

「ぁ…」

「セラフィーナ嬢絡みで婚約破棄や解消に至った件は見当たらなかった。まぁ、中には疑わしいものも見られたが、当事者から話を聞いたところ、セラフィーナ嬢に繋がる痕跡は見当たらなかった」

「そ、それは…」

「彼女は人付き合いが限定的で、夜会や茶会にも滅多に出なかった。そんな彼女が、どこでどうやって男性と仲良くなったのだろうな?」

「……」


 アイザック様の追及は、簡潔で静かだったけど、逃げを許さない何かがあった。一方の令嬢は答える言葉を持たなかったのだろう。気まずそうに俯いてしまった。


「貴女にセラフィーナ嬢が男にだらしない女だと言いふらす様に言われたと、令嬢達からの証言もある」

「な…!」

「既に聞き取りも済んでいるが?」

「そ…っ、そんなのは出鱈目ですわ!きっと誰かから無理やりそう言うようにと…」

「貴女のようにか?」

「…っ」


 アイザック様の指摘に、令嬢が息を止めたのが見えた。という事は…そう言う事なのか。そりゃあ、伯爵家の令嬢にそう言われたら、下位貴族の令嬢は従うしかないよね…下手に睨まれたら家に影響が出るのだから。


「貴女が家の力をちらつかせて、セラフィーナ嬢の悪評を広めようとした事は既に調査済みだ」

「そんな…それは侯爵様がセラフィーナの評判を無理やりあげようとして、それでありもしない事をでっち上げて…!」

「この調査は国王陛下がなさったものだ。陛下の調査に異を唱えるか?」

「な…陛下…が…?」

「陛下は心配性でな。私の婚約に当たって、勝手にセラフィーナ嬢について調べられたのだ」

「そ、んな…」


 騎士に両腕を拘束されていた令嬢は、力なくその場にへたり込みそうになったけど、辛うじて騎士に支えられていた。


「それに…陛下の報告書には、セラフィーナ嬢が階段から突き落とされた件についても記されている」

「ええっ?」


 思わずその言葉に反応したのは…私だった。すっかり失念していたけれど、私にとってすべての始まりは…セラフィーナが階段から落ちた時…だった筈だ。じゃ、私達が入れ替わったきっかけは…この令嬢だったって事?


「アイザック様、それって…」

「ああ、セイナにはまだ知らせていなかったが、王家の調書にはその事も記されていたんだ。貴女が記憶を失うきっかけになった事件だ」


 そう、実際にはあれで入れ替わった訳じゃないんだろうけど、セラフィーナがシャッフルに選ばれたのはあれがきっかけになったのかもしれない、とも感じていたのだ。私は車に撥ねられて…だったし。


「セラフィーナ嬢が記憶を失っていたから調べようがなかったが、陛下の調書にはその直前に貴女がセラフィーナ嬢に詰め寄っているとの目撃証言が幾つも上がっている」

「……」

「更には、その場にいた者達に、この件については口を噤むようにと圧力をかけていた事もな」


 アイザック様の追及に、令嬢は反論する術を持たなかったらしい。相手が陛下では反論も出来ないだろうけど…陛下の調書を疑うなんて、不敬もいいところだから。


「詳しい事はまた追々聞かせて貰おうか。暫くは貴族牢で頭を冷やすことだ」


 アイザック様がそう告げると、騎士達は二人を抱え込むようにして連れて行った。呆気ないというか、知らない事実にビックリと言うか…

 何にせよ、全てアイザック様一人で解決されてしまって、私の出る幕など欠片もなかった。いいのだろうか…


「セイナ、怖い目に遭わせてすまなかった」

「いえ…助けに来てくださって…ありがとうございます」


 今更ながらに、助かったのだと実感が湧いてきた。抱きしめられるとアイザック様の騎士服の勲章が痛いのだけど、今はそれすらも助かったという実感を持たせてくれてホッとする自分がいた。


「フレデリク殿下も、ありがとうございました」

「いや、無事で何よりだった」

「ご助力ありがとうございます」


 何と言うか、抱き合ったままの状態なので恥ずかしいのだけど…フレディも護衛がいるから取り繕ってはいるけれど、目は何やら楽しそうにも見える。これ、今度会った時に色々追及してやると言っている眼だ。


「さ、屋敷に戻ろうか」

「ええ」


 そう言って私を抱き上げようとしたアイザック様だったけれど…


「セイナ、これは…」


 アイザック様は私の足の鎖に気が付いた。そう言えばそんなものがあったな、と私は今になって思い出したのだけど…


「あのガキ、やはり生かしておけん!」


 大魔神が再びご降臨あそばした。




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