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目覚めたらピンク頭の屑ヒロインだった件~罰は醜怪騎士団長との婚約だそうです  作者: 灰銀猫


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目覚めた先には…

 チリッ…とした痛みを感じて意識が浮上してきた。痛みの元は…左の掌で、意識が浮上するごとにその痛みは存在感を増していった。


「…ッ」


 目を開けると、視界に映ったのは見慣れない天井だった。重厚で立派な装飾からしても貴族の屋敷…だろうか。部屋は思った以上に明るくて、離れたところから喧騒が届いている。最後の記憶を辿って…自分の身に起きた事が鮮明に思い出された。という事は…ここは王宮の中、だろうか…さっきの手の痛みは、意識がなくなる直前、意識を保とうとドレスの飾りを思いっきり握りしめたせいで傷になったのだろう。


「ああ、もう目が覚めたのですね」


 周りの様子を確かめようと視線を巡らせた私は、かけられた声にビックっと身を震わせた。聞き覚えがない、でも男の声は、警戒心を煽るのには十分だった。こうなる直前の状況がはっきり思い出されれば尚更だ。そう、私は見知らぬ男に夜会の会場の外に連れ出されて…そこで何かの薬品の匂いを嗅がされて…意識を失ったのだ。


「思ったより早く目が覚めましたね」

「あ、なたは…」


 ダークシルバーの髪も、深みのある暗めの緑瞳も、これまでの記憶にないものだ。顔立ちは優しそうだけれど、どこか神経質そうにも見える。意識を失う前のやり取りから、人の話を聞かない人物なのは間違いなさそうだった。向こうは私を知っている、のだろうか…

 相手が思うより早く目が覚めたのは、咄嗟に息を止めたせいで、吸い込む量が最低限で済んだせいかもしれない。


「私を覚えていらっしゃいませんか?」

「…ええ」

「それは酷いなぁ…私は…貴女を忘れた日など一日もなかったのに」


 芝居がかったような物言いが癪に障った。そもそも人を薬で眠らせるような奴だから、まともな神経の持ち主ではないだろう。もしかすると…ぶつかってきたのもわざとだろうか…身体の奥底から湧きあがる警戒心は最大限に振り切れた状態で、頭の中では警鐘が響いていた。


「どちら様?」


 まずはそれを聞かなければ話にならない。ふと頭に浮かんだのは、花束と痛メールの事だった。そう言えば…あれからは何の音沙汰もなかったけれど…あれはもしかしてこの男の仕業なのだろうか…


「私をお忘れになってしまわれたのか…」

「…以前階段から落ちて記憶を失いましたので」


 この事は社交界でも広がっている話だ。この男が知らない筈はない気がした。嘆き方まで芝居がかっていて、自分に酔っているようにも見える。一言でいえば…キモイ…に尽きるだろう。とにかくこの部屋から逃げなければ…そう思って身体を動かそうとして、足に違和感があった。視線を向けると、そこには…


「な…」


 脚に何かが…と思ったら、それは銀色の輝く鎖…だった。鎖の先はベッドの下に続いているけれど…ベッドの足にでも繋がっているのだろうか…


(げ!これってエロゲ―監禁ルートのお約束じゃ…)


 全身から血の気が引くのを感じた。ここは王宮のようにも感じるが、そんな場所でこんな所業に走るなど、真っ当な神経の持ち主じゃない。


「な、何やってんのよ!どういうつもりで…!」

「ああ、大きな声を出さないで。人に気付かれてしまうでしょう?」

「気付かれて困るような事をしている自覚はあるんだ」

「…全ては貴女への愛が為せるもの。業、とも言えましょうか」

(…はぁ…?薬や鎖を使って愛?ダメだ、頭逝っちゃってるヤツだ…)


 出てきた言葉は完全に素だった。言い知れぬ恐怖は、未知の生き物への恐怖に似ていたかもしれない。簡単に言うと、話が通じない相手という奴だ。ストーカーとかそういう類の人種の…あいつらは自分独自のマイ理論で生きているから、どんなに道理を説いても平行線という、最高に厄介な相手なのだ。この手の人種を説得するなんて永遠に出来そうにない。


(となれば、自力で脱出するか、アイザック様が見つけて下さるのを待つしかないって事…)


 アイザック様はどこかに行かれてしまって近くに姿がなかったから、気付いて下さるのは絶望的…かもしれない。フレディやディアも陛下の元に行ってしまったし、近くに知った顔がいなかったのは致命的だろう。

 唯一の頼りは、派手に転んで人目に付いた事だけど…それでこの場所が特定出来る可能性は…あまり高くなさそうな気がする…この人に連れていかれた…くらいは目撃証言があるかもしれないけど…


「で、あんた誰よ?こんなことして、ただで済むと思ってるわけ?」


 出てきた言葉は怒りのせいか、地が出ていた。こんな奴相手にご丁寧な言葉遣いをするなど無駄の極みだ。


「何と言う事だ…私の天使がそんな言葉づかいを…」

「あんたの天使になった覚えはないけど?」

「ああ、あんな醜い侯爵に毒されてしまったのか、我が天使は」

「はぁ?醜い侯爵って、まさかアイザック様の事じゃないでしょうね?言っておくけど、アイザック様は物凄く紳士で非常に出来たお方よ。人を拉致する腐れ外道のあんたの方がよっぽど醜いけど?」


 よりにもよってアイザック様を馬鹿にするとは…今の私にとっては逆鱗に触れる所業だってわかっているの、この男。王子も腹が立ったけど、この男ほどじゃない。こんなに腹が立ったのは…随分久しぶりだ。


「そ、そんな…私の天使が…ああ、違う!私の天使はそんな事を言ったりはしない!」

「あんたの天使じゃないし。人を勝手に自分の所有物扱いするな!」

「何だと…」

「私は誰のものでもない、私のものよ!でも、強いていうならアイザック様のものね。少なくともあんたなんか、髪の毛一本だってくれてやる気はないわ!」

「な…だ、っ、黙れ!黙れぇええ!!!」


 私の態度に驚き、半ば呆然としていた目の前の男が、突然豹変した。しまった…と思った時には既に遅し。どうやら逆上させてしまったらしい。男は徐に私に近寄ると、力まかせに腕を掴んで来た。その次の瞬間、頭の左側に大きな衝撃を感じた。




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