妙案が浮かばない…
王子が子供の頃から苦労したのはわかった。そんな話聞かなきゃよかったとも思った私だったけれど、少し間を置けば…
(勝手な事をして、ふざけんな―!)
これに尽きた。うん、そりゃあ同情すべき点は多々あるけど、それでも三人―いや、アイザック様や異母兄もそうだから五人か―も巻き込んでいい話じゃないだろう。嫌なら嫌で他のやり方もあった筈だ。
とは言え…
聞けば王子はこんな事になるとは思っていなかったらしい。死にたい、生まれ変わって今度はしがらみのない人生を…と願っただけだと…なのにあの魔道具は、こんな形で自分の願いを叶えた―王子はそう言った。
(どこをどうしたらそれが解決になるのよ…)
そう、どうせなら死にたいとの願いを聞き入れて、今度は気楽な立場に生まれ変わらせてあげればよかったのだ。なのに魔道具はこんな形で王子の願いを叶えてしまった。
そもそも魔道具ってのが胡散臭い事限りないのだけど…願いを叶えるんじゃなくて、問題を更にややこしくするための道具だったんじゃないだろうか…私はそう思う。私の頭以上にポンコツだったと言えよう。
全く、さっさとぶっ壊してやりたいけど…そういう訳に行かないのがまた腹立たしかった。壊す時には渾身の一撃をお見舞いしてやる…私はそう心に誓った。
「…と言う事があったのよ」
その二日後。私はマクニール侯爵家を訪れていた。王子との話の内容を二人に話す必要があったし、アイザック様はもう心配ないと報告するためでもあった。
話合いをしてからのアイザック様はとても優しくて、ヤンデレ化も鳴りを潜めている。今日もマクニール侯爵家に行くのを快く送り出してくれたのだ。二人は私の事を、特にセラフィーナは自身の貞操を心配していただろうから、早く安心させてあげたかったのだ。
「そうですか、殿下がそんな事を…」
「では、兄との事もフリとかではなく…」
「そうなのよね。王子はあんまり違和感がないと言うか…」
話の中心はどうしても王子と異母兄の関係になった。まぁ、この世界では同性愛は禁忌らしいから、二人とも微妙な表情だったのは仕方ないだろう。王子の身体が女性ではあっても、心理的な壁は大きいと思う。
私はと言うと…ライナス×王子かぁ…絵面的には悪くないかも…と思ったのは内緒だ。うん、まぁ、サブカル天国日本に生きていたからね。それ以上はちょっと無理だけど。
「こうなってくると、元に戻って王子から私の身体を取り上げてやりたい」
「そうだね、セラフィーナやアイザック様の事を思うと…」
「でも…アイザック様とは別れたくないし。あ~もう、どうしたらいいんだろう…」
そうなのだ、どっちかしか選べないと言うのが問題だ。元の身体に戻るのが正しいと思うし、セラフィーナの事を思えば戻るべきだと思う。それにあの王子に私の身体は渡すのは…非常に腹立たしく感じる。んだけど…
「ねぇ、クローディア。元の世界に戻らず元の身体に戻る方法ってないのかな?」
「それは…私も調べているんだけど…これといったものは…」
「そっか。でも、そんな方法があればそれが一番なんだよね。セラフィのためにもアイザック様のためにも」
う~ん、中々いい方法が浮かばない。まぁ、四人もいればそれぞれに思う事が違うのは当たり前だ。あの魔道具とやらも、どうせなら変わりたいと思っている者だけでシャッフルしてくれればよかったのに…と思う。あのポンコツめ…
「も、申しわけございません。私が我儘を…」
「それは違うよ!セラフィーナのせいじゃないし、我儘なんかじゃないよ」
「そうだよ、セラフィ。元はと言えば私が殿下をお支え出来なかったから…」
「それこそクローディアのせいじゃないでしょ?クローディアは十分頑張ってたと思うよ。ただ、王子が踏ん張る力がなかっただけで」
そう、クローディアだって王子のために頑張ってきたんだし、セラフィーナに限ってはとばっちりでしかない。それで自分を責めるのはお門違いだ。そもそも王子が問題なのだ、王子が…
「セラフィーナも気に病まないで。元の身体に戻りたいのは私もだから」
「そう、ですの?」
「うん、さすがにライナスさんと夫婦に…は無理だよ。私はアイザック様がいいし」
うん、あれから色々考えたけど、やっぱり異母兄とキス…すらも無理だと思った。いや、むしろキスは絶対に無理だわ。タイプとかそう言うんじゃなく、今の私はアイザック様一筋だから。アイザック様以外の人に触れられたくないし、触れたくもない。ついでに他の女がアイザック様に近づくのも断固阻止したい。
「そうだよね、好きじゃない人と…は私も嫌だな」
珍しくクローディアがこの手の話に参戦してきた。でも、彼女は王子と結婚するのは既定路線だし、そういう意味では私たち程葛藤はないのかもしれない。
「とにかく…私も魔道具の事、もう少し調べてみるよ」
「うん、お願いね」
こうしてこの話は終わったのだけど…それがあんな結果をもたらすとは…私達はこの時、思いもしなかったのだ。




