第6話_辿り着いた神様達は…
ガデニアゾーン7の隣、ゾーン8コントラクト広場。開けた場所にあり、フィルエル自然公園の様子も遠目に窺える絶好の立地条件を誇る場所――。
そこに突如として現れた、17体の人型――。人に見えるが……人ではない。彼等17体は神様なのだ。
「よーやく着いたでー。ミコちゃん、何処やー?」
開口一番、暗闇の神落=パーフェクトハーモニィが力の『信号』を近くに感じるミコの姿を探し求める。神々の『信号』を感じる感覚の精度は個神にもよるが大体誤差1キロメートルが平均値。感覚を集中させればさらに詰めることもできる。だがここは都市、1キロの誤差は大きいし、広い都を人員分散させてローラー作戦というわけにもいかない。そこで範囲内にあり、広く都を見渡せるコントラクト広場に陣取ったわけなのである。
落の戯言をさておき、17体の神々は背中を中に顔を外に、円陣を組んで全周囲を見渡す。するとゾーン7フィルエル自然公園の方を向いていた泥棒の神扉=カレイドスコープが辺りに構わず指差し叫ぶ。
「いたぜ! 剣戟音に銃声多数……それに影の秘術による黒い腕と足。ミコの奴、おっ始めやがったぜ!」
「何!」扉以外の16体が一斉に扉と同じ方を向き、扉の指差す先に目を凝らす。すると確かにいた。黒い手足らしきものを多数展開して空中に静座する、ミコ=R=フローレセンスの小さな影が。
「ふぉおおおおおおお! いたああああああああ!」
神様達は叫んだ。無我夢中で叫んだ。あの日、アパートで大騒動を起こした末に止めることも敵わず逃げられた自分達の問題を解きし女――レインことミコ=R=フローレセンスを一年ぶりに見つけたのである。興奮しない方がおかしかった。特にここにいる神々17体、実に9体は盗まれた組なのだから個神個神の差異はあれど、同じように熱くなるのだ。
「ミコちゃんだ……返して、ボクの設計図返して!」
ミコに盗られた組でも愛と並び落ち込み、またそれ以上に自分を見失っている奉仕の神湊=ミステイクが感極まった叫びを放つ。だがその声は遠すぎた。豆粒ほどの大きさでしか視認できないミコには到底届かない。逸る気持ちに昂る感情、湊は他の神様仲間を煽動する。
「早く行こうよ。あそこにミコちゃんがいるんだよ。設計図、取り返さないと!」
「ええ……そうです。湊の言う通りです。行きましょう!」
「おお!」「仕切るわ」「遂にコンビ結成やで〜」「仕返すチャンスがとうとう来たのね」
湊の煽りに愛が同調すると、盗まれた組を心配していた調停の神務=フォーチュンの気合いをはじめ、撤収の神刀=クロックの属性に応じた意気込み、落と希のミコに対する個神的な執着が続く。まさに皆が直ぐさまそこに向かおうと――。
いう流れにはならなかった。勝手に逸る連中の前に、発見者である扉と、この面子の中では実力者である整、帳、透の4体が立ち塞がったからだ。
理解し難いその行為。当然湊達は抗議する。
「なんで止めるの……ボク達の設計図、あそこにあるのに!」
「同感だな。友よ、何故私達の前に立ちはだかるのだ。ここにいる湊と愛、他にも多くの神が彼奴に設計図を盗まれた。それを取り返そうという試み、なぜ邪魔をする?」
詰襟の白シャツに茶色のチョッキ、ジャケットを着込んだスーツの男――務が湊の抗議に合わせて訴える。調停の神の面目躍如かと思われたが、コソ泥姿で実に怪しい扉は全く動じず、ミコのいる方角――その下地面を指差して説明を始めた。
「揃いも揃って頭冷やせ。一流泥棒のこの俺扉が、この馬鹿面に備え付けの千里眼で見たんだよ。今あいつのいる戦場の状況。結界こそ張られてねえけど完全に隔離されてるぜ。戦場になってやがる公園の周囲を多数の間諜が取り巻いてやがる。ありゃあこの街を仕切ってやがる花一族の間諜だ。死角無しの隈無く監視で公園の中と外を見張ってやがんのよ。悶着起こさず突破すんのは難しいぜ」
「そういうこと。仮にも神様が人間のゴタゴタに介入してどうするの? そこで提案、あっちのゾーン9に地上400メートルを数えるランドマーク、クマンタ・ミラージュってビルがある。そこの屋上に行きましょうよ。扉ほどではないにせよ、私達目はいいんだし。それに全貌を展望把握できるって点で有意義よ。ミコちゃんにコンタクト取るのは今やっている戦いの終焉後でもいいんじゃない?」
扉の指摘に透の提案、なるほどどうして正論だった。真っ先に道の神である翔が賛同したのも大きいだろう。ともかくさっきまでの殺気立った強硬論は鳴りを潜め、全員透の提案に乗っかった。さすれば早い神の行動、みんな一瞬にしてコントラクト広場から姿を消した。
痕跡残さず。影さえ残さず……。




