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ミコの影帽子 夢心背話(ゆめうらせばなし)  作者: 心環一乃(ここのわ むの)
第4話 影が忍び寄る盛花祭
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第4話_狂乱物、開幕

 翌日。夢から覚めたサクラと萌枝は起きた後の身支度を迅速に済ませると真っ先にミコのいる研究室へと走って行った。一緒に食べるための朝食を持って。

 高鳴る鼓動、逸る身体。その身体が研究室のドアを開けると――。

 ミコは既に起きていて、机に置かれていたビーカーとその中に浸けられた花に手を翳し、その様子を慈愛の眼差しで見守っていた。

 とても絵になるその光景に見とれるサクラと萌枝だが、経験は凄い。既に何度目にもなるその体験に、心も身体も慣れてきたのだ。すぐに本題を思いだすと、気持ちを切り替えミコに話しかける。まずは昨日できなかったあいさつから。

「おはようございます、ミコさん」二人揃っての合唱が響くと、ミコもこっちを向き、ニコリと微笑んだ。

「ええ、おはよう。サクラちゃん。萌枝ちゃん。昨日はちゃんと早く寝た? ツバキにおやすみの伝言、ちゃんと聞いた?」

「ええ。聞きましたしすぐ寝ました。ミコさんを見習って」

 サクラが皮肉たっぷりに返すとミコはくすくすと笑い、こっちへおいでと手招きした。

「朝食持って来てくれたんでしょう? 戴くわ。これでも見ながら食べましょうよ」

「できたんですね。リバムーク・プロトタイプの種」

 サクラは萌枝に目配せし、二人でミコのいる机まで駆け寄る。ビーカーの肥料液に浸けられたキャッシャーは花も葉も茎も萎びきっていた。全てを子に、種を作ることに生命を注いだ親の姿がそこにあった。

 そして、ビーカーの外側には、薬包紙の上に載せられた、瑠璃色の種が19個、並べられていた。それは紛れもなく、リバムーク・プロトタイプの種。

 本当に時間を加速させるとは――サクラはミコのレインとしての力に震えていた。それが感動からくるものなのか恐怖からくるものなのかはわからなかったが、とりあえずは朝食である。サクラは萌枝と一緒に持って来たバスケットを机の上に置き、中に詰め込んだ朝食を並べる。今日の朝食はサンドイッチをメインに、焼きベーコンなどのおかず、デザートにゼリーもある、結構豪華な一食である。実はサクラたちもこの朝食はちょっとカロリー高めじゃないかと思ったのだが、作ったツバキにもの申す暇もなかった。彼は要件もそこそこに、朝の委員会に出席すると言って地上階層に出かけてしまったのだ。今日はいよいよリバムークの発表会だけに、ツバキが急ぐのはしかたのないことなのだが、3人分にしては多い気がしてならなかった。

 だが、並べられた朝食を見たミコは、サクラたちの心配とは真逆のセリフを吐いたのだ。

「おいしそうね、さすがはツバキ、気が利くわ。ほら、サクラちゃんと萌枝ちゃんもたくさん食べなさい。あいつの料理は花一族でも一部の者しか知らない秘密のレシピで作った特別製よ。見かけよりもたくさん食べれてその上成長に必要な栄養がたっぷり入ってる、育ち盛りのあなたたちにうってつけの食事なの。さあ食べましょう。いただきます」

「い、いただきまーす」率先して手を合わせいただきますと言ったミコに倣い、遅れを取らないようにサクラと萌枝も半信半疑のまま挨拶を済ませ食事に入った。サクラは訝しげに手に取ったサンドイッチを口に入れてみる――その瞬間、歓喜の声が身体から発せられた!

「うまい!」お行儀が悪いと言われるのがわかっていても言わずにはいられないこの食の感動。栄華会館食堂の定食や購買のパンなど比べ物にならない。食の味を活かして少量でも充分な満腹感を与えてくれる一方、いくらでも食べ続けたいと思わせる飽くなき食欲も起こさせる、まさに特別な料理だった。矛盾していながらも導く方向はひとつしかない。

 すなわち、たくさん食べて大きく育てということ――これに尽きる。

 その後はミコの指摘した通りになった。サクラも萌枝も行儀作法なんか二の次にして、心と身体が求めるままに目の前の料理を貪り喰らう。あっという間に食い付くし、食事の時間は終わった。

「ごちそうさまでした」合掌し、深々と礼をするサクラと萌枝。

「よく食べたわね。わたし、2割しか食べられなかった……ちょっと不覚」

 ミコも手を合わせ、感謝しながら少し愚痴る。そう、食への欲望に目覚めたサクラと萌枝で8割、2で割っても一人4割も食べたのだ。3割を優に越えるどころか、ミコの倍も食べている。食べ盛りの子に勝てないわねと、ミコの諦観の詞が聞こえるが、今のサクラたちが感じる充足感の前には無味乾燥なセリフだった。ミコ本人も無粋とわかっていたようで、それ以上は口を挟まず、二人の分まで率先して食器をバスケットに片付ける。それが終わると影帽子のがま口チャックを開き、中から漆黒の箱と絹の布を二つ取り出す。

 それらを机の上に置くと、ミコはビーカーにつけていたリバムーク・プロトタイプとキャッシャーの「親花」を絹の布の片方で包み保護する。そしてもう片方は薬包紙で包んだ瑠璃色の「種子」を二重に包むために使った。上質な絹の布で包まれた「親花」と「種子」を黒い箱にそっと入れたミコは、箱の蓋を閉じ、がま口チャックの中に戻した。

 その様子を見ていたサクラと萌枝は、ハッとする。ミコの行動が最悪の可能性を想起させたからだ。なりふり構わず二人がかりでミコの袖を掴み、問い質す。

「ミコさんまさか、もう行っちゃうつもりですか?」

 それは困る。とても困る。ミコにはもう少し身の上話をしてもらったり、あの寝顔の秘密を聞いたりととにかく色々話したいことがあるから、まだ一緒にいてほしかったのだ。いくら彼女にとっての用事が済んだからって、今この場で別れるなど論外であった。

 そんな風に必死になっていたサクラと萌枝だが、不意に頭に感じる暖かく柔らかな感触。いつの間にか閉じていた目を開けてみると、ミコが二人の頭にその手をのせていた。

「心配しないで、世話役様。わたしの目的は果たされたけど、これだけで去るには少々勿体無いわ。雨も上がらせたし、また人々の活気で賑わうこの街の祭をもう少し堪能したい。本家本命のリバムークの発表会も見たいしね。それまではお世話になるわよ。よろしくね、サクラちゃん、萌枝ちゃん」

「あは……」まるで漫画のキャラクターのような歓声を上げて、サクラと萌枝は手を合わせ、喜びを分かち合った。

 が、喜びもつかの間という格言を地で行く、まさにその瞬間!

 Beep! Beep! Beep!

 フロア全体……否、栄華会館全体を震わす警告音が轟いた。

 その意味は異常事態の発生とわかれど、原因がわからず頭を右往左往させるサクラたち。

 そこに駆け寄ってくる人影があった。ツバキが息を切らせ頭を汗だくにして現れたのだ。

「ミコ! サクラ! 萌枝! いるか……いるよな。そうだ、カメラで見てたし……」

「ツバキ兄さん、どうしたんです。この警告音」

 サクラが代表して尋ねると、ツバキは驚愕の事実を伝えた。

「一大事だ。大宝庭に保管してあったリバムークの花と種が、ひとつ残らず盗まれた!」

 風雲急を告げる事態。祭は狂乱物へと変わる。

この度は愚者ぐしゃなわたくしの作品を読んでいただき、心より感謝申し上げます。

さて、本日無事第4話を章ごとに分割してサブタイトル付けて無事投稿完了しました。

今日は東京に出かける予定があったので日中はお花見などに興じ、帰ってきたのは夕方。第4話投稿は晩御飯のあとかな? とも思いましたが、やってみるとちょっとした改稿含めあっという間に終わりました(笑・自虐)。

章ごとに文量のムラが激しくなっております。読者のみなさまも「えっ? これだけ?」、「えっ? こんなに?」って思われたんじゃないでしょうか? わたしは書いてて思いました(笑・自虐)。

でも終わりの方は簡単に読めると思います。いいのか、そんなんで…?


相当愚者ぐしゃな作品ですが、なにかみなさんの才能・感性・能力で感じてもらえるものがありましたらこれ以上嬉しいことはありません。


一日1話のペースでチャプター・章ごとに分割してUPしていきたいと思っています。そうでないと長過ぎる話とかもあるので(ネタバレしますが6話が超長い!)。


Twitterやってます。「心環一乃(ここのわむの)自称"地球人"(@kokonowa_life)」です。書き手さんも読み専さんもフォロー歓迎します。逆にこちらも無言フォローすることありえますのでそれは御了承ください。


感想・評価・誹謗中傷に御意見に至るまで絶賛募集中です。アカウント作らなくても感想受付中ですよ?


2017年ミコちゃんシリーズエイプリルフール企画(!?)でもある「シリーズなろう投稿運動」。この4月の間、お付き合いいただきそして楽しんでいただければ幸いです。

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