第4話_子供を思い、考える
「ありゃりゃ、嫌われちゃった? それとも変な趣味持ってるとか勘違いされたかしら? だとしたら悲しいわねー。旅人は一期一会にして短期滞在が基本。ここを去るまでに誤解、解けるかしら……」
ミコは絶賛反省中であった。自分が萌枝の名をきっかけに風流の神、萌=プリズムリリックを思いだして色々思いだしたり結びつけたりで一人妄想に飛んでいたことに。
その状態で対応してしまったら結果は先の通り、案の定だ。サクラと萌枝には警戒され、いらぬ疑念を植え付けてしまった。そう、疑念という名の種を。
それもこれもあれもどれもと全部津々浦々と呟いていると、傍らから肩に載せられる手。誰かはわかっているがミコは振り向く。そこには当然、残った最後の一人であるツバキの顔があった。
彼はやれやれという顔で顔を横に動かすと、気にすることはないと慰めの詞を語り聞かせてきた。
「あいつらはまだ子供だ。片方は花一族であり、もう片方は旧家柿之本家の令嬢である。それは確かだ。覆しようのない真実だ。だがなミコ、それ以前にあいつらは子供なんだよ。まだ十分に学ばす、精神の成長を知らず、善も悪も碌に経験していない幼子だ。そんな子供相手にどんだけ本気なんだお前? 少々熱が入り過ぎだぞ」
ツバキの指摘はもっともだった。が、ミコの有り様に投じる一石としては脆すぎた。その指摘を受け入れて変わるほどミコ=R=フローレセンスは柔軟ではない。自分はもう突っ走るしかないのだ。神様の問題を解き、嘘の神泉=ハートの消還を見届け、自分の宿命を知った自分は、その自分を曲げずに生き抜くしかないのだ。ツバキの詞は一石として心の水面に当たったが、沈むこともなく浮かぶこともなく弾けて粉砕されただけだ。
しかし、当たったということは波紋を残したということ。それは揺らぎようのない事実。事実ツバキの詞を受けて、ミコは気持ちが軽くなっていた。なのでその返礼としてミコはツバキに自分の道を示す。
「子供だからって侮っていると、今に下克上されるわよ。確かに、わたしから見てもあの子たちはまだ子供。でもそれ以上に立派に生きている生命じゃない。だったらわたしはその眼その道その背中としっかり向き合いたいの。そこには子供も大人もない。等しくこの俗世にいる相手のみ。あの子たちはその相手にふさわしいと思った。わたしの見立てではそうなった。だからわたしは反省するし、動揺もするし、後悔だってする。子供相手にだって真摯に本気で向き合う。その後変えていけばいい――それが今のわたしの有り様、生き方なのよ」
「わざわざ苦労を背負い込むやり方を押し通すとは……人生損するぜ、今に。ま、他人の生き様にどうこう言う資格なんてのは親にも正義にもないからな。せいぜい見届けさせてもらおうか。お前のやり方であの二人とどういう関係に落ち着くのか」
ツバキはそう言って手を離した。ミコのその動作の意味を察する。頭を切り替え、進み出す。目指すは風呂場だ。
「わたしが使える風呂場はどこ? あの子たちが使ってるところ以外にもあるんでしょ?」
「ああ、風呂場はこの階だけで12ある。こっちだ」
急がなくていい。その想いを秘めてミコは一日の清算をするべく、風呂場に向かう。




