第4話_部外者の正体は?
ガデニア郊外、都市の外側の森の中にある花専用の秘密の埋葬場――通称、花の墓所。
そこにはなにもない。土はあれども花はない。用済みとなった花を埋葬し土に還すのがこの墓所の存在意義であり、全てだ。だから荒涼としていて当然なのである。
その花の墓所でただ一人、懸命に土を掘り返す一人の少女がいた。
名はサクラ。この世界で花を祀る一族、花一族のメンバーであり、新参者。サクラの名を継承してからまだ日は浅く、ゆえに、任される仕事は他の一族メンバーの研究関連の雑用、労使がメインであった。一族の中核事業である新種開発に携わった経験はなく、そしてこの先も一生ない。なぜか? 彼女が理性ではなく、感性で花を見るからだ。
サクラは深い愛情を持っている。聞くだけなら美徳のように思えるが、その対象は海のように広い。要は博愛精神である。サクラの慈愛は成功した花だけでなく、失敗した花にも向けられる。望まれる花を咲かせることに成功した一握りの花達への祝福もするが、それと並び花を咲かせることに失敗した幾千幾万もの花達への同情の念も忘れないのがサクラの特質。これが一族にとっては厄介だった。華々しい成功の裏には、こうした失敗があったのだと認めるようなものだから。一族の委員会は合議の結果、サクラをもっともその心理状態に適切な場所へと配置した。それがこの場所、花の墓所である。年端も行かない少女に、泣くことだけを強いる仕事を与えたのだ。
だが、流されたサクラ本人は、そんな状況を半分泣き寝入りで、半分は理解して受け止めていた。墓所がある以上、誰かが泣いてあげる必要がある。ならば自分がその代表になろう。他の愛情に欠けた連中に任せるよりはマシ――小さな少女はそう決意し、今日も墓所の土の手入れに励んでいた。
失敗と決めつけられた花達の哀しみを、母なる土に還してやるために――。
この仕事は今日中に終わらせなくてはいけなかった。明日は祭のメインイベント、リバムークの発表・品評会がある。それにはサクラも出席するようにとの委員会からのお達しがあった。裏を返せば、それまでにこの埋葬作業を終わらせろということである。決してサボっていたわけじゃないが、何分サクラは感情移入が激しいので、埋葬作業にも時間がかかる。結果、後一日で仕上げるには、ちょっと厳しい状況に追い込まれていた。何分量が半端ではない。リバムークの失敗作だけで、240718個もの数があるのだから。今日までの一週間で全体の約8割の花を埋葬したが、後一日で残りを埋葬するのはかなりのヘヴィワークだ。でもやるしかない。
だって、今ここで自分がやらなかったら、誰が愛を込めて埋葬してやると言うのか――その苛烈で強い愛情が、サクラを泣き言ひとつ言わさずに動かしていた。
「そうよ。わたしがやらなくちゃ、誰がやるのっ……ふっ」
サクラは決意を固めた一人言で己を震わせながら、シャベルで土を掘り返す。心と身体が寸分違わず合致したときの人間は強い。サクラ程の強い気持ちを持った人間ともなればなおさらである。時刻は正午を通り過ぎ、もう夕暮れへ向かってのカウントダウンが始まっているが、これなら今日が終わる前には終われそうだ。元々自分流の愛情が招いた結果である。ただただ、励むのみ。そう開き直ってシャベルを土に刺そうとしたとき。
唐突に自分を呼び止める声がした。聞き慣れない声。初めて聞く声に、サクラの動きは縛られた。振り向くと、そこには真っ黒な帽子を被り、白地に七色をあてがった服を着ていた女性が一人で、そこにいた。彼女はこっちに大声で話しかけていた。
「ねえ、ここって花の墓所よね! ちょっと欲しいものがあるんだけど! 話聞いてくれないかしら!」
話は理解できたが、それ以上に問題なのは彼女が花一族のメンバーではないことだ。ここ花の墓所は花一族の最高機密の一角、裏を返せば暗部である。ここの存在を一族以外の人間に知られたら、他の人間達もここのことを知りかねない――サクラの行動は早かった。
シャベルを土から持ち上げると、それを剣のように構えて見知らぬ女性に斬り掛かったのだ。ここの機密を守るため、口封じの必要があるから。疑問を挟む余地などない。これが委員会から命ぜられているマニュアル通りの対応なのだ。
「えぇーい!」サクラが大振りかぶってシャベルの先を相手の頭蓋骨真正面に喰らわそうとしたら、女性はそれよりも早く動いて、こともあろうに墓所の土の上へと動いて避けたのだ。その事実はさらにサクラを錯乱、慌てさせた。
「あ、あ……、あぁ……」
「あ、話聞いてくれる? そういえば自己紹介もまだだったわね。わたしはミコ――」
「今すぐここから立ち去れ部外者ぁ!」サクラは半ば発狂した声を出して、がむしゃらにシャベルで一撃与えるべく女性を襲う。しかし女性はひらりとサクラの攻撃を躱し、空を切った攻撃は受け手のないまま墓所の土に大当たりとなった。
「逃げるな、避けるな!」それでもめげずにサクラは女性にさらなる攻撃を繰り出していく。サクラは焦っていた。さっさと攻撃を当てて記憶を奪いたい。早く埋葬作業に戻りたい。その思いで幼いサクラの胸中はいっぱいだった。だから何度も攻撃するのだが、その度に相手の女性は躱し続け、シャベルは土を耕すだけ。そんな現状に我慢できず、サクラはさらに攻撃を繰り出すのだった。
すると女性が両手で待って待ってとジェスチャーでストップをかけつつ口頭で話しかけてきた。
「よしてよ。わたしに子供と闘う趣味はないわ。それもあなたみたいな可愛い子と闘うなんて論外なの。だからお願い、ちょっとシャベルを降ろして話を聞いて……」
「だったら先にあなたがやられてよ! この、邪魔者ーっ!」
サクラは女性の訴えも一刀両断にし、シャベルを振りかぶって女性を襲い続けた。だが女性は避けまくるので、相変わらず当たらなかった。段々当たらない現実にサクラは苛立ち始めていた。こんな詞が出るくらいだ。
「なんで避けるの! 当たりなさい! 一回と言わず、全部!」
「いや避けるでしょ? 当たったら頭潰れちゃうじゃないこの威力。もう少し手加減してくれるなら考えるけど……」
「だめだめダメーっ! 気絶させるくらいの攻撃じゃないと、わたしが怒られるんだから!」
「そんな滅茶苦茶な……」
サクラは無茶を訴えつつさらにシャベルで攻撃を繰り出す。女性は滅茶苦茶だ、と言いつつ相変わらず避け続けていたが、やがてそのペースも遅くなってきた。回避行動のキレが鈍くなってきたのを、サクラは見逃さなかった。
(勝機! 動きが鈍くなってきた。このまま後ろの穴に追い込んで、仕留める!)
サクラは今まで以上に大きく振りかぶって構えたシャベルを、目的地たる穴の逆サイドにわざと落として女性を穴の方へと移動するよう誘導する。女性は面白いようにうまく穴の方へと進んでいった。全て思惑通りである。
「この! この!」サクラは思惑などないかのように無我夢中を振る舞いつつ、内心ではワクワクドキドキを感じていた。このままいけば、今までの空振りをチャラにできるほどの勝ちがつく。脈は早まり、いやでも興奮する。その兆候を顔に出さないように、細心の注意を心掛ける――サクラは冷静だった。正常な思考回路に満足しつつ、じわじわと追い詰めていく。そしてとうとうその時が、来た!
「やっ! 足が、穴?」
女性が後ろも見ずに後ずさりして遂に足を穴にすくわれた。女性の目も心も、全てが一瞬穴の方へ向く。完璧なチャンス、サクラは待ち続けたその好機を逃さなかった。
「えぇーい!」
「きゃっ!」
女性がこっちを振り向いたがもう遅い。逆に言えばサクラの方が早い。事実そのとき初めて、サクラの攻撃が真っ黒な帽子越しで、女性の頭に直撃した。女性は続きの悲鳴を上げることもなく、すぐに土へと沈んだ。
「やったぁ! ……あれ? もしもし?」
サクラは最初とうとう攻撃を当てた、その喜びに震えていたが、やがてそろそろ記憶改竄をしなくてはと思ったころ、女性が倒れた体勢のままピクリともしない事態に疑念を抱く。最初は気絶するということはそういうことだと思っていたのだが、目の前の女性を見ていると嫌な予感が掻き立てられる。やがて不安が募り募ってとうとう焦りだしたサクラはシャベルを捨てて女性に駆け寄り、息を確かめる……が、遅かった。
女性は息をしていなかった。脈もない。身体は重く、急速に冷えていた。死んでいたのだ。
「えっ、まさか……殺した? きゃあっ!」
どうしようどうしようと途端にサクラは死体から飛び退き、小さな頭は大パニックになる。墓所に近づくものを排除しろ、墓所を見たものの記憶は奪えと命ぜられてきたから気絶させて記憶を自分が持つ花一族特有の力で奪うつもりだった。だがもう記憶がどうのこうとか言っていられなくなった。だってこの女性は死んだのである。殺したということだ。
それは、サクラにとって初めてのことだった。人を殺したことなんて、今までなかったから――右往左往は当然の結末だ。
「どうしよう……どうしよう。とりあえずは死体の隠滅を……。幸いここなら一族以外は誰も知らない……。一族? そうだ!」
サクラは携帯電話を取り出して直属の上司に電話をかけた。自分をいつも可愛がってくれた花一族の委員会委員、ツバキならアドバイスをくれるはず……そう信じられた。
なにせツバキは花一族の対外戦闘部隊の元隊長だ。気象一族や自然学派との戦闘も経験し、戦果を挙げたこともある。彼は幼いサクラにも堂々と語っていた。相手を殺したこともあると――。その経験を持ち、今はサクラの上司として死んだ花の取扱いを一手に取り仕切るツバキなら、なにかアドバイスをくれるはずだと――サクラはそう思っていた。果たしてトゥルル……、電話が繋がった。
『ああ、サクラ? すぐに電話に出ずにゴメンな。言い訳じみてるけど、こっちはかなり忙しくてね。そっちは終わりそうか? なんなら何人か送ることも……』
「ツバキ兄さん! そうじゃないの! あの……、わたし……」
『うん? どうしたんだ? サクラ?』
サクラはここで息が詰まって詞がなかなか出なかった。でも言わなきゃ。その思いを振り絞って告白した。見知らぬ誰かが秘密の墓所に来たこと、その人を迎撃行為の上最終的に殺したことを。だがツバキは落ち着いた態度でそれを聞き留めていてくれた。話している最中はサクラもありがたく感じていたが、話した後はそのまま神妙に黙られてしまい、どうしようもなく不安に駆られた。
それだけに、次にツバキが告げた内容は、予想外のものだった。
『悪い、サクラ。ひょっとしたら俺かもしれない。対外戦争で闘っていたときに墓所のことを口から滑らせたことがある。俺……いや、俺の部隊員全員が』
「え……? じゃあ……この人は、兄さんの知り合い?」
『そうかもなあ……ああ、多分そうだろうな。あれは気象一族一流の計略に乗せられてなあ……。墓所のことを一族外の他人に話すことのある仕事なんて、本当に俺達対外戦争部隊か対外交渉部隊の交渉人連中ぐらいだから……。つまりアレだ、お前が侵入を許したとかを気に病むことはないんだ。俺がうまく処理してやる。確認したいから、そいつの特徴を教えてくれるか』
「ああ……はい。外見の特徴ね……えっ? ええっ! きゃあ!」
『どうした! サクラ……』
サクラは振り向いた途端腰を抜かしてしまい、携帯を放り投げてしまったのでそれ以上の通話はできなかった。なぜなら――。
殺したと思ったはずの女性が、事実脈も息も停まっていたはずの女性が、すぐ傍すぐ真下で体育座りしながらコソコソ聞き耳を立てていたのだ。驚かない方がおかしい。生きていたのか。もしかしてお化けじゃないだろうか? でもお化けじゃ体育座りはできないな――とも思った。
だが電話の向こうにいるツバキはそんなこと知る由もない。それに気付いたサクラはびくつきながらも抜けた腰を起き上がらせて立ち上がろうとした、が。
体育座りからサクラよりも早く立ち上がったその女性――足があるのでお化けではないみたい――に手でストップをかけられて、そのまま再び座ってしまった。でも携帯が――そう言ったらその女性は真っ黒い帽子のがま口チャックを開けると、そこから黒い腕を取り出し、落ちていた携帯を腕の先っぽにある黒い手でキャッチ、自分の耳元に持っていった。
「もしもしツバキ? わたし、ミコ=R=フローレセンス。ああ、元の名前の方がいいか……元気象一族のレインだけど、わかる?」
――気象一族の、レイン?
その詞を耳が聞き、頭が理解したとき、サクラの許容量が吹っ飛んだ。腰を抜かしたままぞぞぞっと後ずさりして距離をとった。
「えぇぇっ! この人が、一族最大の強敵と呼ばれた、気象一族のレイン!」
「呼び捨て……まあ驚かないけど。それより今はミコって名乗っているから、その名前で呼び捨ててもらいたいんだけどな〜」
電話口正面口で女性は二人に向かって言った。電話越しのツバキと、口先正面にいるサクラにだ。サクラはなにも言えなかったが、電話越しに会話していたツバキは、思い当たる節でもあったのか、『あ、ああ。あ〜』と頷くかのような間延びした声を上げた。ミコ――レインと名乗った女性がスピーカーホンを押したので、電話を持つ女性から遠ざかったサクラにもその声ははっきり聞こえた。
『思い出した! カゲナシのレインだろ。ほとんど自分の身体では闘わずにいて、それでいて強くてユーモアと頭の回転も一級品だったあのレイン! 気象一族を抜けたって噂は聞いてたけどなあ、ミコって改名したのは初耳だよ。これからは気象一族のレインじゃなく、ミコ=なんたらとして生きていくってことなのか?』
「半分正解半分保留。気象一族の役割はまだ放棄したわけじゃないわ。あなた達花一族と一緒よ。この名前が受け持つ役割って、受け継がせるまでは死んでも離れないものだしね。まだその線は考えていないわ。……ただね、ちょっとした経験をしてさ、自分の宿命っていうのを知っちゃったから次のステージへ進むことを決意したまでよ。その一環として気象一族は離脱、ミコ=R=フローレセンスに改名ってわけ。それよりわたしだってわかったんなら説明してあげて。ここで腰抜かしている墓守のサクラちゃんに、わたしがここの秘密を知っていていい理由とか全部。1から1まで」
『わかった。じゃあサクラに代わってくれ』電話口からツバキの召喚呪文が聞こえた。サクラとしても女性に見られ視線で促されるまでもなく、兄の指示があった時点で意図を理解し、動くつもりだった……けど、産まれて初めて抜かした腰は結構重傷で、てんで立ち上がることができなかった。足に力が入らないのだ。まさに八方ふさがりである。
すると女性はふふふと笑った。何がおかしいのと文句を言うと、女性は優雅な身のこなしで踊るようにこっちを身体の軸を向けると、帽子からもうひとつ、巨大な黒い腕を出してこっちへと向かわせ、襲いかからせてきた。
「へっ? やっ……きゃあっ!」
サクラは思わず目を瞑り、頭を腕で抱えてガッチガチに身を守るが、腕の目的はサクラを痛めつけることではなかった。むしろ親切だったと言ってもいい。その黒い腕、黒い手は、サクラの来ている服、その襟を掴んで持ち上げると、サクラの身体を女性のもとへ、もっと正確を期するともうひとつの黒い腕=携帯のもとへと引き寄せたのだ。
サクラが身体を持ち上げられた事実に気付いて、おそるおそる目を開けると、目の前にはミコと名乗った女性の顔、その横にもうひとつの黒い腕が持っているサクラの携帯が存在していた。
「怯えられるのは慣れているけど……サクラちゃん、さっきまでのガッツはどうしたの? わたしを部外者と断定して元気に追いかけ回した、あのサクラちゃんはどこへ行ったの? 元気は大切なのよ? 元気がない人間なんて電気のない雷のようなものなんだから」
「意味がわかんない」サクラが初めて女性と会話を成り立たせた瞬間だった。今までずっと警戒していたので話すことさえ遠慮していたが、電話越しの兄貴分ツバキと屈託もなく(また確執もなく)会話しているところ、そして会話の内容から察するに、ツバキとこの女性の間には繋がりがあるように見て取れた。一族の名は違えども、世間話するくらいの交流はあるレベル……だったら、サクラもボロを出さない程度にだったら、会話してやってもいいはずだと。その結論に達した。
「お? 初めて会話が成立したわ」女性もサクラと同じ感想を抱いたようだ。だからなんだという話である。サクラには全く関係のないこと。無視してそそくさと電話を黒い手から受け取り、サクラはスピーカーホンのまま、両手持ちでツバキと話しだした。
「もしもし兄さん? サクラです。腰抜かしちゃって……その、ゴメンなさい」
『気にすることはない。可愛いお前が殺人をしていなかったという事実だけで上出来だ。そもそもそこにいるレインに墓所のこと話したのは俺だしな、責任を感じていたりする。ま、他の一族連中や委員会に漏れなければいいだけの話。サクラ、その女――レインのことは客として扱っていい。これ以上の失礼はないように。かといって必要以上にもてはやさないようにな』
「わかったわ兄さん。了解です。これ以後わたしはこの人を客として扱えばいいんですね。ここへ来たのも兄さんのせい……ってことだよね?」
『ああそうだ。昔そこの話を聞かせた時から、こいつはそこに行きたがっていた。気象一族を抜けただので色々寄り道した末にようやく来れるようになったんだろう。精々観光させてやるといい』
ツバキの指示がサクラの身体と心に染み渡っている中、かたわらで漏れた音を拾っていた女性が割り込んできた。ツバキの詞に反応したようだ。
「寄り道だなんて……失礼ね。この時期が祭の時期にリンクして一番捨てるもの多いから墓所の見所って言ったのは誰だっけかな〜?」
『あっ! お前そんなこと言うのか!』
ツバキもいい耳をしている。電話越しに真っ向から反駁した。
「誘ってたくせに」
『誘ってねえよ! 墓守の苦労をしみじみ告白しただけだ。それを曲解すんなよな!』
「はいはい、わかってますよ。あ、そうだ。ここで見るもの探すもの終わったらそっちの研究室借りたいんだけど。できる?」
『は? お前研究室まで借りる気なのか?』
「旅人は根無し草だからね。たまには設備の整った部屋で寝泊まりしたいのよ」
『俺の部屋だったら貸せる。ただ入るのだけでも難しいぞ。ゲストじゃ長居は出来ない。まして徹夜とかになると……』
「大丈夫よ。考えも手もあるから。そこはわたしに任せておいて」
『ふむ……なら俺がこれから研究室に行くから用事が済んだらサクラを連れて寄ってくれ』
「わかったわ。じゃ、サクラちゃんに代わる」
『おう。サクラ、そういうわけだ。レインの用事とお前の仕事が済んだらレインを俺の研究所まで連れてこい。いいな?』
念を押すツバキの命令に、サクラはその場で頷いた。
「わかったわ兄さん。この人の対応とわたし自身の仕事、ちゃんと遂行いたします。任せてよ。わたしだって、仕事できるんだから」
『そうだな。信じているぞ。じゃな』
プツッ。ツー、ツー。電話が切れた。




