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魔法使いは自衛隊で無双したい  作者: 賽の目四郎


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33◇発射試験

33◇発射試験

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ガーソンに発注してから5日後、完成したとの連絡があったのでマークの所に行った。

護衛詰所ではマークとガーソンが完成した物を見ながらあれこれ言っていた。


「おはよー。出来たんだね。」


俺はテーブルの上に置いてある無骨な塊を見た。

一辺が20cmくらいで長さが1.5mくらいの木の角棒の上に溝が掘られ、その中に太い鉄の銃身がすっぽり収まっている。

銃身長は約1m、内径は16mm、外径は60mmくらいだ。

初めてなので必要以上に頑丈にした。

多数の金具でがっちりと角棒に固定されているが、必要に応じて簡単な工具で外せる様にしてある。

固定金具に合わせて工具も作って貰った。

尾栓の所の後ろには木組み細工がしてあり、填め込まれた木のブロックを外せば尾栓をねじって取り外せ、貫通した状態で目視出来る様にしてある。

木組みの箇所は30cmくらいの長さで発射の反動を受ける様に組み合わせてあり、そう簡単には壊れないだろう。


「ちょっと見るね。」


俺はそう言い、木組みのブロックを抜いて尾栓を外した。

尾栓は軽くねじ込まれていただけなので手で抜けた。

尾栓は六角頭にしているので、それに噛み合うスパナの様な工具も作って貰っている。

銃口の先に白紙を置いてもらい、後ろから銃身を覗いてみる。

内面は寸法公差を指定してあるので研磨されている様だ。

火口の穴もちゃんと尾栓の雌ネジの向こうに上向きに開いている。

尾栓と木組みのブロックを元に戻して強化方法をガーソンに聞いた。


「うん。注文どおりだ。強化魔法はどの様にかけたの?」


「はい、まず内側の表面が強い力に晒されるということですので、強化魔法のリジットをかけました。これは材質そのものを強化し、表面に薄くて強い皮膜を作ることで消耗を防ぎます。次に締結魔法のタイトンも全体にかけています。内部から強い力で膨らもうとするということですので、それに対抗する処理ですね。」


素晴らしい。

表面の薄くて強い皮膜ってメッキなのかな?

それとも浸炭工法や窒化工法に近いことなのかもしれない。

いずれにしても魔法なんで前世の材料工学の知識は通用しないな。


「うん。いいね。注文どおりだ。これほど図面どおりに作ってくれるとは思ってなかったよ。」


「ありがとうございます。では今回はこれでよろしいでしょうか。」


「うん。ありがとう。あとは鉛玉を作る掴みバサミみたいな奴と鉛と鍋だね。」


「それはあと2日ほどお待ちください。まとめて持ってきますので。」


「うん。分かった。よろしくね。」


そう言うとガーソンは帰って行った。

計算上、これは80kgくらいあるので俺では持ち上がらない。

マークとスティーブに持ってもらって射場のテーブルの上に的に向けて置いてもらった。


―――――――――――――――――――――――――――――


「ハンス、居るー?」


俺は声を掛けながら隣の治療棟に入る。

ハンスは訓練で怪我をした護衛を治療していた。


「少しお待ちください。あと一人治療したら手が空きますので。」


うんと返事をし、治療棟のベッドに腰掛けて色々思う。

鉛玉を作る『玉造り鋏』は2日後だから今日は木を削って弾丸の代わりにしよう。

万一内圧が上がりすぎても木の弾丸ならそちらが先に吹き飛ぶだろうから好都合だ。

いっそのこと、柄の直径が16mmの槍を突っ込んでもいいな。

長さ1.5mの穂先が付いた槍がぶっ飛んで来るのだ。

普通の弓の数倍は威力があるだろうな。

ん?これって、鯨漁の捕鯨砲みたいなもんか。

これはこれでアリだな。


「お待たせしました。発火魔石粉ですよね。」


ハンスはそう言うと壁の引き出しから瓶を何個か出してきた。

テーブルに並べ、小さじで紙に少量ずつ出してゆく。


「何種類か作りました。試薬1号は従来の手法で作った発火魔石粉、試薬2号は発火魔石粉の挽き方を少し粗めにした物、試薬3号は従来手法の粉に細かく挽いた木炭を半分混ぜた物、試薬4号は従来手法の粉に細かく挽いた硫黄を半分混ぜた物、試薬5号は従来手法の粉に細かく挽いた小麦粉を半分混ぜた物です。」


「うん。色々あるね。もう魔道銃の試作が出来たので、先日みたいな斜めに発射するのは中止して全て圧縮して爆発する状態を見ようと思うんだ。」


「はい。それでしたらまず詰め込んでいない場合の発火状態を先に見て貰えませんでしょうか。」


ハンスは小さじで少量出した紙を順番に鉄板台の上に置いて発火魔方陣をふれさせて燃焼させていく。

圧縮していない状態ではどれも同じ様な感じだった。

試薬2号だけちょっと燃焼が遅かったかな。


「うん。確かに2号は燃えるのが少し遅いね。だけどちょっとだけだ。まぁこれも含めて5種類とも次の実験に移ってくれないかな。あ、次に進む前に先日お願いした防護メガネはあるかな?」


そう言うとハンスは透明なお面の様なマスクを2枚出してきた。

目の下と鼻の両脇でささえる様な丸めた布地が裏に貼り付けてある。

両横には穴が開けられ、紐が通してあった。

ハンスがまず顔に当てて紐を頭の後ろに回して縛って見本を見せる。

俺もそれに倣って顔に装着する。

うん、丸めた布地が仕切りになって、息が目のところに上がって曇るのを防止してるのはいいな、


「僅かに視界がゆがむけど十分使えるね。それは今後の課題にしよう。ありがとう。」


俺が言うと、ハンスは予め作ってあった紙筒を5本出してきた。

直径3mmくらいの木の棒に巻き付けて作ったもので、長さは約5cm、厚さは2mmくらいにしてある。

片方は潰して折り曲げて密閉してあり、番号が振ってある。

ハンスは試薬用の精密天秤を使ってそれぞれ1gくらい取り、それを紙の漏斗で紙筒に詰めていく。

少し細い木の棒で突き固めて端部に薄い紙を直径3mmに切り抜いて押し込め、漏れ止めとする。

それを箱に入れ、各試薬と小さじも持って隣の射場に移動した。


発火魔石粉の発火試験は今後必ず射場で行い、護衛を一人以上同席させることにしている。

これはハンスが一人で実験をして事故があった場合に治療する者がおらず、非常に危険だからだ。

場合によってはハンスか俺が指示して護衛に実験作業をさせる場合もある。


射場ではマークと魔法組の3人が待っていた。

さきほどテーブルに置いた据え置き型魔道銃第一号を囲んであれこれ言っている。

俺とハンスが来ると期待の篭もった目で見てくる。


「今すぐは撃たないよ。まず発火魔石粉の特性確認からだ。」


俺はそう言い、テーブルから的に向かって3mくらい先に土魔法で高さ50cmくらいのブロックを作って発火実験台とする。

試薬1号紙筒をブロックの上に横に置き、紙押さえの側に導火線となる発火魔石粉を練り込んだ紙こよりを差し込んでおく。

護衛は全員テーブルの後ろに避難してもらい、俺とハンスは護衛用の盾を借りて紙筒との間に立てる。

後ろを振り向いて護衛達に指を耳に入れておけとジェスチャーする。

勿論、俺とハンスは耳栓をしている。


盾の上から目だけ出る様に構え、1.5mくらの細い木の棒の先に発火魔方陣を書いた紙を挟んで盾の横から手を伸ばし、導火線に触れた。

僅かな間を置いて試薬1号紙筒はパンと破裂した。

紙筒もバラバラで紙吹雪状態だ。

続けて2号から5号まで同じ様に実験する。

全て破裂したが、破裂の音と紙筒の状態が結構違う。

1号に比べて2号はやや篭もった感じでボンと聞こえた。

紙筒もだいたい紙吹雪だ。

3号は2号よりもっと篭もった様な音がし、紙筒は裂けて紙吹雪にはなっていない。

4号も3号と似た状態だ。

5号はもっと破裂音が小さく、バスっという様に聞こえた。

紙筒の裂け具合は4号とあまり変わらない。


うーん、この結果をどう見るか。

1号と2号は純粋に発火魔石粉だけなので、発火させた後の土ブロックの上に焦げた様な跡は殆ど付いていない。

それ以外は土ブロックの上に結構な焦げ跡があった。

木炭、硫黄、小麦粉の燃焼跡だな。

酸化物が無いんだがどうして燃えるのか理由は不明だが。

これは銃の発射薬として使った場合、銃身内に燃えかすが残るということだ。

まぁ黒色火薬はもっと燃えかすが多いからそれに比べるとマシだけど。

俺は安全を見込んで、試薬5号から試すことにした。


―――――――――――――――――――――――――――――


まず、据え置き型魔道銃第一号の取り扱い方を皆に説明する。

・銃口の位置と弾の出る方向を示し、その向きは必ず的の方を向ける、絶対に銃口の前に立たないということを徹底させる。

・木組みのブロックを外すと尾栓が見えるが、これは通常はきつくねじ込んだままとする。外す時は弾詰まりか、銃身内の掃除の時とする。

・尾栓のネジには薄い油布を巻き、それ越しに銃身後部のネジにねじ込んで行き、最後は付属の工具で強く締め付ける。

・装填するときはまず銃口を上に向けて反対側を地面に着け、まず発火魔法石粉を指定量銃口から入れる。

・木の棒を銃口から差し込み、強く突いて押し固める。

・丸弾を銃口から入れて、木の棒を差し込んでぐっと押さえる。強く突くと鉛の丸弾が変形するので加減する。

・銃をテーブルの上に戻し、銃口を的に向ける。

・尾栓の上の小穴(火口)の中に発火魔法石粉を入れ、入り口の所で少し盛り上がる様にする。

・発火魔方陣を火口に当てると銃身の中に燃焼が伝わって詰めた発火魔法石粉が破裂し、丸弾が撃ち出される。


言ってる最中に覚えきれないだろうと思ってハンスに書き留めて貰った。

後で各自書き写して貰い、現本は俺が貰おう。


「以上がこれを兵器として使う場合の手順だよ。かなり面倒で時間がかかるけど、これは一番原始的な構造なので仕方が無いんだ。魔拳銃や魔強銃はこれが使われていた時代よりかなり後の進化した武器だからね。」


「これ、持ち運びにかなり無理があると思うんですけど、どうやって魔獣相手に使うんですか?」


デビッドが聞いてくるが、それはそうだ。

これはあくまで動作検証の為の実験装置だと説明する。

最終的には魔強銃(バレットM95)の半分以下の重量で片手でも持てるようにし、装填も慣れれば1分以内に出来る様になると言って、とりあえず今はそれ以上突っ込まない様にお願いした。


「今から発射の実験をするんだけど、まだガーソンに頼んだ工具が無いんで丸弾が作れないんだよ。その代わりに護衛部隊で使っている弓の矢を少し使わせてもらおうと思う。」


俺はそう言って、ルークに矢を10本持って来て貰う。

長さが銃身長より少し長いので、尾羽から差し込んでも鏃が銃口から飛び出る。

これならそのまま使えるな。

木組み細工部分のブロックを抜き、尾栓を回して外す。

後ろから銃身を覗き、的の方を見ると的と高さが合っていない。

土魔法で少し低めの的を置く台を作り、銃身の延長線上に的の中心が来る様に調整する。

テーブルには木の角棒に沿って方向の目印の線を引いておく。

尾栓に薄い油布を巻き、付属の工具で締め付ける。

木組み細工部分に外したブロックを入れ、尾栓に当てて支える。


まず魔道銃をミラーとザンドに銃口を上にして地面に降ろして貰う。

銃口から試薬5号を3gほど入れる。

先ほどの紙筒の破裂を見てこれくらなら余裕で耐えると想定した。

細い木の棒で試薬5号を突き固め、フェルトを直径16mm長さ20mmくらいに固めた物を銃口から入れて押さえとする。

これは矢を撃ち出す時の押し出しパッキン代わりになる。

散弾銃のワッズみたいなもんだな。

魔道銃をテーブルの上に戻してもらい、的の方向に合わせる。

照準器は無いが、銃身の上面を透かして見ることでだいたい合わせる。


銃口から矢を尾羽から回しながら入れ、奥に当たるまで押し込む。

銃口の中央に矢の軸が来る様に紙を小さく千切って詰めて調整する。

火口の小穴の中に試薬5号を小さじで入れ、入り口に少し盛る。

これで準備完了だ。


「さぁ撃つよ。皆後ろに下がって耳を塞いでおいて。」


念のため、銃口にウィンドエバキュレーターを発動させる。

俺はそう言うと、魔道銃の斜め後ろに行き、盾を構えて発火魔方陣付きの木の棒の先端を火口に当てる。

パンっという音がして前に煙が吹き出る。

反動で魔道銃が少し下がる。

矢は10mくらい先の地面に突き刺さっていた。

うーん、ショボい。

単純に威力不足だな。

この程度なら日本の火縄銃の方がもっと音が大きい。


次に試薬5号のままで量を倍の6g程入れた。

同じ様に試射するが、まだ的に届かない。

的までたったの20mなので、水平撃ちで届かない距離でもないのでまだまだ威力不足だろう。


更に試薬5号の量を増やして9gとする。

今度は的の下の方に当たって、鏃が後ろの土壁に5cm程度突き刺さった。

試しにマークに護衛装備の弓矢で同じ的を撃って貰ったら10cmくらい突き刺さった。

こりゃー駄目だ。


銃口から入れる発火魔石粉の量をあまり増やしたくないので、木炭配合の試薬3号に切り替える。

試薬5号の配合比を変えても良いんだが、量産時の誤配合が怖いので1対1で作りたい。

試薬3号の木炭なら黒色火薬にも使っていたので成分的にもそう悪くもあるまい。

入手性もいいのでどこでも調達出来るし。


同じ様な手順で試薬3号を3gから始める。

3gで鏃が的の一番下に刺さって後ろの土壁に5cm程度突き刺さる。

6gで鏃が的の少し中央寄りに刺さって後ろの土壁に10cm程度突き刺さる。

9gで鏃が的のほぼ中央に突き刺さって折れた。

これくらいなら実用になるかな。

魔道銃は特に損傷は無い。


データを記録し、今日はここまでとした。

ハンスに試薬3号を多めに作っておくように頼んでおこう。


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