273◇魔道ジェット船試運転
273◇魔道ジェット船試運転
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「それでちょとお願いがあるんだけど。ここの駐屯地の司令官を呼んで貰えないかな。」
「はい、少々お待ちください。」
ニックは俺達を別荘の応接室に案内してすぐに駐屯地に司令官を呼びに行った。
奥さんのエミリーがお茶を出してくれる。
娘のアニーは部屋の隅で掃除道具を持ってこちらに会釈をしていた。
ニックは5分ほどでガタイの良い30半ばに見える大男を連れてきた。
「マーティン様、こちらがここの司令官のグレゴリー様です。グレゴリー様、マーティン様はご存じですよね?」
「マーティン様、お話するのは初めてですがお姿は何度かお見かけしております。様々な業績もお聞きしておりますので、私でお役に立てる事なら何でもお申し付けください。」
「グレゴリー、僕は領主の息子でまだ学生だけど情報局のモーガン中将から指示書を貰っているんだ。身分証と指示書はこれね。なので一応僕の部下扱いにするけど悪く思わないでね。」
グレゴリーの階級は左肩の肩章で大尉みたいだ。
こちらにも前世の軍隊と似たような階級があって、米軍のそれに当てはめると大尉相当となる。
50人の小隊を指揮するには十分な階級だな。
俺の身分証と指示書を見せると俺に向かって敬礼し、挨拶を返して来た。
「はい!わたくしグレゴリー大尉はマーティン様の指揮下に入ります。ご指示をお願いいたします。」
軍隊は苦手なのでちょっとやりにくいなと思いながらも無事指揮系統になっている事に安心する。
そこで早速崖上の荷物を港の漁船工房に運ぶのを指示する。
武器運搬部隊と兵站部隊が持って来た4頭立ての大型荷馬車を3台出し、それぞれに領兵を4人ずつ乗せて別荘の横の道を上って行く。
俺とザンドとデビッドも同乗して崖の上の6機が駐機している所に出た。
大型の飛行機械が6機も並んでいるのを見てグレゴリーも他の兵達も驚いているな。
「これが以前から運用している魔道エアクラフトだよ。今回は海賊退治に使う機材を作って運んで来たんだ。彼らに聞いて機体に積まれている荷物をその荷馬車に積み替えてくれない?」
「はっ!了解しました。3台に分散して載せ替えます。」
領兵12人とスカイコンドルの4人とモーリス、ザンド、デビッドは協力して機体の固定を外し、エンジンを1セットずつ荷馬車に載せ替えた。
荷馬車1台につきエンジン2セット積めるので荷馬車2台で4セットだ。
残りの荷馬車1台に40ミル砲自在スタビライザーや制御ボックスなどを積み込む。
空荷になった6機の3座機はスカイコンドルの4人と共に領兵3人を付けてこの場で待ってもらう。
機首は海を向いているので向かい風だ。
機体は昇降舵を一番下げた状態にしてロープで固定し、機体の少し前の地面にアンカーボルトを左右に2本打ち込んでそこから主翼の前縁の左右の固定用金具に繋いで固定する。
機体の少し後ろにも1本アンカーボルトを打ち込み、尾翼のスキッドプレートの端にある兼引用金具にロープで繋ぐ。
作業に暫くかかるので風に煽られて飛ばされない様にしておくのだ。
念のため、それぞれ後部座席に座ってもらい、海風で煽られて飛ばされない様に重しとして機能してもらう。
1人余るのはいざという時の連絡係として走って貰いたいからだな。
荷を積み替えた荷馬車3台は載せた物をロープで固定し、ゆっくりと坂を下る。
少しでも荷重を減らす為に全員降りて歩きだ。
御者の3人だけが乗っている。
20分くらいかけて別荘の横の道を通って下り、海沿いの市場近くに出る。
そこから東に5分くらい進むと船大工の工房があった。
作業場には真新しい新造船が2隻横たわっている。
作業をしている職人にここの責任者を呼んでもらう。
いかついグレゴリーが言ったので、職人は少しビビりながら慌てて奥に呼びに走って行った。
「これはこれはグレゴリー様。いつも港町の警備をありがとうございます。お陰様で私達船関係の職人も安心して作業に集中出来ます。」
船大工工房の主らしき初老の男が出て来て応対する。
「いつも廃棄物の処理で世話になる。今日はこちらの領主様ご子息のマーティン様がご用事があるので訪問させてもらった。」
「いらっしゃいませ。領都の護衛の方から小型漁船の注文を受けまして、こちらにマーティン様がいらしたらお渡しする様に言付かっておりました。」
「僕がマーティンだ。対応ありがとう。早速だが、注文していた船を見せてもらえないだろうか。」
「どうぞこちらでございます。足下にお気を付けください。」
工房主に案内されて工房の奥の方の少し小型の船に案内される。
工房の手前にあった2隻は俺が注文した船よりも少しだけ大きな漁船だそうだ。
「これでございます。まだ艤装は施しておりませんが、ご要望があれば追加可能でございます。」
寸法を聞くと長さは16mくらい。
幅は3.5m程度との事だった。
うん、これでも全然デカい。
前世の52フィート級だな。
立派な近海用の漁船である。
艤装はまだだと言っていたが、基本的な帆走用のマストと左右で3対のオール受けは装備されていた。
オールも左右3本ずつ舷側の内側に積まれて固定されている。
船尾中央には舵とそれを操作する長いアームが装備され、左右からロープで中央になる様に固定されていた。
帆はまだ用意されていないとの事で、後ほど艤装の時に取り付けると言われた。
まぁぶっちゃけ帆走する気は無いから要らないんだけど。
「うん、艤装は後回しにしてもらって、この船に付けて貰いたい物があるんだよ。」
俺はザンドに合図すると工房の前で待っていた荷馬車3台が馬を外し、工房の通路を押されて入って来る。
まずエンジンの梱包を解き、モーリスとザンドとデビッド、それとグレゴリーの4人で床に降ろす。
4セットとも降ろして並べる。
次にそれの制御ボックスも4セット、更に40ミル砲自在スタビライザーも降ろす。
「まずこの2個を船の船尾に並べて付けて欲しいんだ。モーリス、指揮をしてくれない?」
「まかせておけ。とりあえずお試しで船尾に2セットだけだな。これならすぐだぜ。」
そう言うと工房主に交渉して職人を4人ほど借り、4基が束になったフレームの下部マウント金具を船尾の平たい板に上から咬ませる。
厚さが少し足りないので板も交渉して用意してもらい、その場で船職人が船尾板の厚みを増やす。
ここの強度が足りないとエンジンの推力や重量で壊れる場合も考えられるのだ。
前世の船外機を付けるモーターボートもこのトランサム部分の強度は強大なものにしていた。
なにせ300馬力クラスの船外機が複数個付き、その推力で40ノットくらいまで加速するのだ。
エンジン4基が束になった推進器は60cm立方くらいのサイコロの様なフレームに納まっている。
このフレームの中心には上下に軸が通っており、下部のマウント金具の上に自在に回転する様に接続されている。
その間にはブレーキ円盤があり、ちょうどディスクブレーキの様にフレーム側にキャリパーが付いていた。
ハンドルをフレームに2本差し込んで固定し、ブレーキレバーのワイヤーをキャリパーの受け金具に接続する。
俺は船に乗り込み、ブレーキレバーを握ってハンドルを回してみると重さは感じるもののスムーズに回転した。
これは2人で扱った方が良いだろうな。
2セットの推進器を2mくらい間隔を空けて船尾に搭載し終わったところで制御ボックスをそれぞれ設置し、ケーブルをエンジンと接続する。
制御ボックスはなるべく中央に寄せて積んでいた木箱に座って両足で操作出来る様にする。
試しにスロットルペダルのロックキーを外して軽く踏んでみるとゴウという音と共に船体が少し揺れた。
「ちょっとこれで試運転してみたいんで海に降ろせるかな?」
「はい、この台座の止め金具を外して船尾に繋いでいるロープを緩めるとそこの斜面を下って海に降りられます。」
工房主は職人に合図して工房の海側の大扉を開ける。
するとすぐに海面が広がっており、そこに向かって伸びる斜面には複数本のレールが敷かれていた。
それでは早速試運転と行こうではないか。




