148◇送風機
148◇送風機
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ストライカーハンマー鍛造機はガーソンが気に入ってくれたおかげで導入は決定となった。
次は送風機だな。
こっちは分かりやすいので説明も楽だろう。
「次にこちらの機械も説明するよ。今は手や足で押すふいごを使って炉の温度を上げているよね?それって結構重労働で辛いでしょ?この機械はそれを勝手にやってくれる魔道具だよ。ちょっとこの炉の炭に火を点けてくれない?」
ガーソンの弟子がファイア魔法で炭に点火する。
え?
ウィンド魔法で風を送り込まないのかって?
残念!
数秒で終わる点火のファイア魔法なら大概の人が出来るが、数十分に渡って一定の風を送り続けるのは普通の平民には無理だ。
そして、普段ならここでふいごからゆっくり風を送り込んで火力を上げるのだが、今は妙な機械が嵌っているので何も出来ない。
そこで俺が魔道送風機のカバーを開けてメインスイッチを入れる。
魔力ブースターのレベル調整つまみを10段階の一段下のオフの位置から1段階上げる。
すると弱い風が炉の吹き込み口に吹き込まれ、わずかに煙が上がる。
炭の色を見ながら調整つまみを徐々に上げ、6段目にした時に勢いよく炎が噴き上がった。
更に上げると今度は逆に炎が吹き消される様な動きをしたので元に戻す。
しばらくすると安定したので更にもう1段落とすと少し弱目の炎になった。
「こうやって使います。この中に入っている魔石で連続10時間くらいは動きます。魔力補充用の魔石と魔法陣は用意していますので、1日1回補充すれば十分かと思います。」
すると、なぜか工房中が拍手と歓声に包まれた。
ガーソンの弟子達が涙ぐんでいる。
理由を聞くと、やはりふいごの操作が辛かったそうだ。
炭の品質があまり良くなく、常に強めにふいごから風を送り込まないと安定して燃えなかったそうだ。
それが今見せたデモンストレーションで一気に解決すると理解しての拍手と歓声だった。
よく見るとガーソンも嬉しそうに笑みを浮かべている。
やはりテクノロジーは労働者の味方だ。
初期投資は要るが、減価償却した後は労働者も経営者も両方にメリットがある。
正にウィン-ウィンの関係だな。
まぁ今回のは俺からの無償貸与だけど。
「この魔道送風機は4台あります。あと2台はお好きに使ってください。」
更に歓声が上がった。
こりゃー魔道送風機だけでもすぐに増産の連絡をせにゃならんなー。
「ガーソン、先ほどの鍛造機とこちらの送風機、王都での増産が可能です。3日ほど使ってみて、各々追加で必要と判断した数量を教えてください。すぐに発注しますので。」
「ありがとうございます。でもこれってお高いんですよね?今据え付けていただいた物はいかほどになりましょう?」
ははは、ガーソンがビビってる。
どうやら王都製の高級道具を押し売りされると思ってるんだろうな。
頭の中で分割払いや利益率を考えているのだろう。
「ガーソン、魔導銃の生産に直接関わるこれらの機材は僕が無償で貸与します。消耗や壊れた場合の修理もこちらで行います。鍛造機の方は送風の部分以外なら自分で修理したり、より使いやすくするための改造も許可します。但し、修理や改造した場合は事後でいいですので、必ず修理改造箇所を簡単な図を入れて理由と共に報告してください。王都での新たな鍛造機製造時に考慮します。また、改造しようとして修復不能になった場合もそのまま報告してください。改造しようとした箇所とその理由が明確な場合は責任は問いません。」
どうだ、これ以上の好条件はあるまい?
あれ、反応が無いぞ。
うわっ、急にガーソンに手を掴まれた。
「マーティン様、ありがとうございます、ありがとうございます!今まで魔導銃の増産にかなり神経をすり減らして来たので、この機械は救いの神です!弟子達が熟練したのはいいのですが、最近生産量の伸びが止まったのでどうしようかと悩んでいたところなんです!」
「分かった、分かったから手を離して、ちょっと痛い!」
「こ、これは失礼しましたっ!でもありがとうございますっ!」
ふぅ、ここまで追い詰められてるとは思わなんだ。
いや、追い詰めているつもりは無かったんだけどね。
たぶん父上がたまに生産数を聞くのでそれで大きなプレッシャーを感じてたんだろうな。
職人なんで技術の伸びで生産量をアップさせるのを誇りとしているんだろうけど、それが逆に自分自身を追い詰める原因になっていたのだろうな。
面倒な人種だ。
後は魔石の魔力補充だな。
簡単に説明しておこう。
「この2種類の機械は魔石の魔力の力を元に動いています。いずれも補充用の大きな魔石から魔力は補充可能です。取り扱い方はこの取説に詳しく書いてありますので、まずガーソンが一通り使える様になってから他の人に指導してください。補充用の魔石は領主屋敷の治療棟に居る魔術治療師のハンスに言ってください。彼が追加補充の采配をしてくれます。」
「ありがとうございます。早速確認して弟子共に指導しやす。」
まぁガーソンほどの腕ならそう簡単に壊す事もあるまい。
魔石の魔力補充も原理は理解してそうだしな。
「さて父上、以上で引き渡しは完了しました。しばらくは機械の扱いに慣れるために少しだけ生産量が減るかもしれませんが、それは大目に見てもらえませんでしょうか。」
「もちろんだ、マーティンよ。扱いはガーソンに一任するから経緯も報告してもらおう。」
うん、これでランバート領機械化計画の第一歩が踏み出せたな。




