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十一話  [役割と分担」

11話となります


アデル達は女将のコーディネートに多少の恥ずかしさは在ったモノの女中達や

他のお客さん達の反応が好意的だった為気を良くした。ボクはこのまま新人2人

をヘルマンの所へ紹介がてら装備の購入へ向った。


「ほぉ~今度はDEダークエルフと猫人族か、また面白い者達を揃えたな」


「ええ。それでこの2人なんですが、実は戦闘経験が無いんですよ。最初は軽い

 運動からって考えてるんですが、返って経験が無いなら僕の希望する得物に

最初から慣れてもらおうかと思うのですが」


「なるほど、それも一理ある。で?何を持たせるツモリだ」


「マギーは俊敏さを生かしてナイフとか二刀流、弓なんてどうでしょう?」


「猫人族…特にこの娘は…野獣系の血が濃い様だの。野獣系は力が強く目も良い。

 動きが機敏で身のこなしも軽い。確かに手数の多い攻撃や命中力を必要とする

技を覚え易いと聞く…良かろう」


「何かお勧めは在りますか?」


「うむ。その前にソッチの娘も話を聞こうか」


「はい。アインは卒無く、全ての能力が高い種族と聞きます。前衛にアデル。

 後衛にボク。遊撃にマギーとなれば、前衛か中盤が良いのかなって

…長剣か槍なんてどうですか?棍棒っても良いかな」


「うむ。どちらにしても両手武器での前・中攻撃か、まぁ~それも有りだろう」


ヘルマンはそう言うと奥へ消える。ゴソゴソとボクの希望に合う得物を

探している様だ。程なくして彼は戻ってきた。



「なるほど…」


マギーには近接近用の大型ナイフと中距離からの小弓を。アインには槍と云うか

薙刀?を持ってきた。


「えっとアインのコレは…?」


「ハルバートじゃ。槍に斧・鉤爪が付いておる。突く・斬る・引っ掛けて倒す・

 振り回して打つ。と、何でも在りの武器じゃ。PTだと実際には

突く、振り払う、引っ掛ける。が主じゃろうが、1人だと振り回して斬るや

叩くも出来る。本来は、もっと大柄な体格で力強い男が持つ事が多いが、

当面お主のPTに男は入らんだろうからな。此の娘に使い方を覚えさせ、

後に教える側に立たせると良い」


「なるほど、彼女達は後々教官って事ですね」


今は幼い身体のマギーには大型ナイフは長剣程も在り、臆病なアインには

腫れ物に触れるような扱いのハルバートだが、ヘルマンの勧めにボクも納得だ。

彼女達には少し荷が重く、不安だろうが頑張ってもらうしかない。


防具はお揃いの『硬革鎧』一式それも赤と黒に染められたヘルマンオリジナルだ

付与に体力+10%アップと防御+10を特別価格で購入。

これなら普段ボクやアデルも装備できる。それぞれ店内で装着してみると

いつもの様にヘルマンは『眼福・眼福』と喜んで居た。別れ際へルマンはボクに

1つの武器をくれた。『旋棒』所謂トンファーだ。琉球空手が発祥とも言われる

一種の警棒の様な物だ。


「何故に?」


「お主は魔法を多用すると聞いた。剣の類では魔術に関する付与は着け難い

 普通の金属では魔力の流れが悪いからな。その旋棒ならば、握り手部分に魔力

アップやら色々付与を付けた。棒の両端には、硬い金属を填める事で打撃力は

高い。今のお主には丁度良いじゃろ。普段はソレを使うと良い」


頭を下げ新たな武器を腰にブラ下げて僕等は残りの買い物を済ませてから風流へ

帰る事にした。

女将の部屋には既に裏の建物を改修する大工が打ち合わせに来ている。娘達を

着替えさせ、女将の部屋に集まった。


「此の案どう思います?私は中々良いと思うですけど」


大工の親方と図面を見ながら女将はボクに尋ねて来た。


「ええ!?もう図面出来てるんですか?」


「まぁ~改修って言っても元々個室が並べてる建物だからな。壁を幾つか

 ブチ抜いて、体裁整える位だしな簡単なモンだ。此の場で今俺が書いた」


と今回依頼を受けた親方が笑いながら応える。


1階に玄関ロビーと大広間と食堂。2階に6畳の部屋を3つ繋げた大部屋を

5部屋と更に広い大部屋が1つ。3階は2部屋続きにしてやや小振りな部屋だ

其れが全部で5部屋に大部屋が2室。


「2階の大部屋1つに4人の相部屋ね。大きい部屋は談話室で3階はリーダーの

 個室とジュン様の個室と会議室…ってどうかしら?」


「どうかしらって…ボク等に個室とか勿体無いですね

 …それに改修に大層お金が掛かりませんか?」


此の質問に親方がまた答えた。


「元々、前後2列の6畳間が横並びって造りだ。廊下で挟んだ作り出し

 一度、仕切りの壁を全部取っ払って片方の廊下を潰すだけさ。

大した手間じゃ無いな。まぁ~強いて言えば…奥の大部屋にシャワールームを

設ける位だがそれも元々配水管やらは通ってるから…やっぱり、

手間は掛からねぇな。

半月もあれば、形が出来上がり残り半月で仕上げってトコだ」


「はぁ~」


こうなるとボクの範疇を越えている。気のない返事しか出来なった。そこへ、

黙っていたアデルが聞いてきた。


「お姉様のお部屋は、何処ですか?」


気を良くした女将が笑顔で答えだす。


「えっとね3階の一番奥がジュン様の部屋でしょ。それから会議室が在って

 貴方達の部屋が並ぶの!皆3階よ。屋上もあるから、眺めも良いわよ」


「わ、私達のお部屋ですか!!」


女将の言葉に驚きアデルはマギーとアインに目を合わせた


「お部屋が在るなんて驚きですけど…お姉様と寝所が別なのは寂しいですわ…

 それに、警備の問題も在りますし…」


「大丈夫よ。ジュン様の部屋は広く取ったのは、代り番こで、お泊りすれば

 良いでしょ!その為に少し広めにしたの。私も泊りにこれるし…ウフッ」


時々では在るが寝所を共に出来ると聞き安心するアデル。それは、ボクとしても

有難い。でも…何故に?女将がお泊りに来るの?…まぁ当面は資金を借りる

身の上。ここは黙って女将の言葉に従おう。


「じゃ~これでお願いね親方。家具類は後で詰めましょう。家の事は全面的に

 私に任せて貰って、ジュン様達は狩りと戦闘の訓練に励んで下さいね」


十一話  「役割と分担」  完

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