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「おはようございます!ヴィクセン様!」
訓練所に入るなり、休憩中らしい兵士達はヴィクセンの元へと走ってきた。
「だれだ。お前」
その中の1人が私に向かって話しかけてきた。
「それは、対戦を申し込むというポーズか?」
如何なる場合であれ、柄に手をかけるというポーズを取ると、相手に戦いを申し込むことになる。
「も、もちろんだ」
恐らく無意識だったのだろう。しかし、認めてしまった以上、戦わなくてはならない。
「ではヴィクセン。審判をしてくれ」
「おいリオ。こいつ、班長だぞ」
「大丈夫だ。さ。いつでも始められるぞ」
ヴィクセンは渋々といった様子でやってくれた。
「始め!」
名前も知らない彼は、いきなり攻撃を仕掛けてきた。だが。
「遅い」
剣の棟で相手の手を打ち、剣を落とす。
「うぇ」
「遅い。隙がありすぎだ。訓練が足りないのでは?…名乗るのが遅れてすまなかった。僕は未来のマルメゾン女王、マリー・ローズ様の護衛、リーオだ」
「お。お前があの美人の護衛か?」
「口を慎め」
班長はローズの名前を出した途端に目をキラキラさせている。なんと単純なやつ。
「リーオ、と言ったか。班長はうちの隊でも強い者しかなることはできない。それを侮辱するとは何事だ」
「侮辱?ただ本当の事を言ったまでだ」
「ほぅ。ではそのような口を二度と叩けないようにしてやろうではないか。ヴィクセン。頼む」
「リオ。お前はいいのか。こいつは班長がよってたかっても勝てないくらいの力があるぞ」
「もちろん。売られたものは買うまでだ」
「…わかった。始め!」
さっきより格段に早い。しかも、技術も明らかに上だ。
「そんな程度か?王女様を守る護衛というのは」
「そんなわけ無いだろう?とりあえず実力を見ているだけだ」
「そうか?受けるだけで手一杯に見えるが」
確かに、早いだけでなく、間も不規則で攻めづらい。指摘された事はあながち間違ってはいない。
「気のせいでは?」
何回か攻撃を受けていると、癖のせいで隙が多少なりともあるのに気がついた。
「はっ!」
彼の刀をかわして、棟で腹を討つ。
「勝負あったな」
刃がついた方を使えば、確実に斬られている。
「なんてことだ」
どうやらショックを受けているらしい。
「リオ。こいつはマルモン。上から数えたら両手に入るくらい強い人物だ」
「よろしく頼む」
しかしマルモンは何も言わずに行ってしまった。
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