後処理
翌日からシャーリーの護衛の数が増え、魔法騎士が追加された。
丸一日、一人になることを許されない状況に辟易している様子だが、誘拐されたばかりなのだから仕方ない。
そして、聞き取り調査も行われる。
今回、シャーリーの元婚約者セジュール・ルルオールが犯人ということで、事前になにかしらの接触があったのではないかと調査が始まった。
そこであっさりと、数日前にセジュールからシャーリーに向けて手紙が届いていたという。
もうそれを聞いた時点で機嫌が降下していく。
婚約破棄されているのに。
シャーリーはすでにジルグロッセの婚約者になっているというのに。
しかも、直接手紙を送っただと?
許されないだろうそれは。
貧乏ゆすりをしながら聞いていたせいか、シャーリーに「でもすぐにアビゲイル様に没収されて、直接受け取ってはいけないと教わりました」と半笑いで弁明される。
そうか、知らなかったのか。
属国の貴族が帝国皇族の婚約者に直接手紙を送ってはいけない、と。
おそらくセジュールもその辺りを甘く見て、シャーリーに手紙を送ったのだろうけれど。
「セジュール様は、どうなるのでしょうか……」
「あれの叔父がすでにロドリゲスの逃亡と逃亡先の提供、匿って世話をしていた。その時点で一族連座が決まっていた。今回の件は最後の抵抗のようなものだろう。家族を人質に取られていると言っていたが、帝国属国の貴族でありながら九神教に与していたのだから自業自得だ。君が気にすることはない。一族で与していたのだから当然だ」
すごく喋っている。
ルシカとソルドが、普段必要最低限のことしか喋らないジルグロッセがこんなに早口でたくさん喋るものだから、他の部下や護衛騎士もポカンとなっている。
とにかく、シャーリーが悪いわけではないと伝えたい。
それがひしひし伝わってくる。
肝心のシャーリーに伝わっているかどうかは、不明だが。
「セジュール様……」
「なにか不満があるのか?」
「一応婚約者でしたから。けれど、私の実家の領地を九神教の神殿建設のために使っていたのですよね。それは許せないです。……それに、父や母はそのことを知っていたのでしょうか? もし知っていたなら……私の実家も……」
「その調査は今進めているところだ。たとえ本当に知っていたとしてもすぐに処刑することはない。君が嘆願すれば、前線に犯罪奴隷として送る程度で済ませられるだろう」
「すぐに処刑されることはないのですね……! よかった。少なくとも弟はなにも知らないと思いますので……弟だけでも無事ならいいのですが」
頰に手を当てて溜息を吐くシャーリー。
そういえば報告書の中に家族構成も書いてあった。
両親、兄、弟。
両親は借金返済のためにまずは兄を仕事に就かせるべく、シャーリーと弟には貴族らしからぬほどの貧乏を強いていた。
跡取りの兄が領地を立て直して収入が安定すれば、シャーリーと弟も貴族らしい生活ができるだろう、と。
だが、結局シャーリーが貴族学園を卒業しても、長男が就職してもまったく生活は楽にならない。
次の手として、シャーリーが婚約して先方の家に援助してもらう――という手に出た。
その対価はシャーリーだけでなく、土地の一部も。
まさかその差し出した土地に八神教ではなく九神教の神殿が建てられているとは思わなかっただろう。
だが、知っていたら?
(少なくとも、シャーリーの両親は知っていた可能性がある。もしも知っていたのなら、連座の対象。ただ、シャーリーが『アルヴァーニュの聖女』である以上、シャーリーが嘆願すれば処刑はできない)
聖人、聖女の家族は庇護対象。
聖人と聖女は精神が安定していないと神力を使う時に、力が発揮されないことがある。
だからこそ聖人と聖女は大切にされる。
「失礼するよ、シャーリー嬢。お加減はいかがかな?」
「あ、ミゲイル様……え、ええと……」
「起き上がらなくて大丈夫。ゆっくりと休んでほしい。それで、ジルグロッセ。どのくらいの情報が集まった?」
「連座についてはだいたい理解が得られた」
「う、うん……。まあ……うん……それは……仕方ないから……うん」
なんとも曖昧な返答。
眉を片方上げると、ミゲイルに咳き込まれる。
「病み上がりのシャーリー嬢には大変だと思うが、父が今回の件で『早急にトドメを刺すべき』と判断をした。申し訳ないのだが、精神的に安定しておられるようなら明日にでも『神の書』をバルコニーで読んでもらうことはできるかな?」
「あ、明日ですか……!?」
「聖女の法衣は間に合いそうなんだ。今のこの警備をさらに割増で厳重にするだけだから、警備の手間も省けるというか。まあ、色々な理由でできたら、という話かな。心の準備をあまりさせてあげられないのだけれど、時間をかけていると九神教の者たちにまた新しい手を取られかねない。一匹見たら百匹いると思えというしね」
それはゴ○○○の話では。
そう思ったが、前線で九神教と戦っている者は頷いている。
そんな扱いでもいいらしい。
「追撃があるかもしれない、という意味ですか?」
「そうです。ですから、早急にトドメを刺しましょう。可能性は低いですが、捕らえたロドリゲスが影武者だった場合は本物の捜索もしなければなりませんしね」
「――わかりました」








