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壁の花がいたので婚約破棄させて連れ帰ってみた。  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』


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極貧令嬢はお返事を悩む(2)


「じゃあ、この『土葬よりも火葬』がいいというのはなんなの?」

「ご遺体の処理について書いてありましたので、感染症を防ぐためにも火葬がよいとご提案させていただきました」


 そう答えると、アビゲイル様とジュエリ様が頭を抱える。

 や、やはりなにかおかしなことを書いてしまった……?


「いったいどんな手紙を寄越したの、ジル兄様……」

「なんというか、まあ、ジルグロッセ様らしいといえば、ジルグロッセ様らしい……の、かしら……?」

「このシャレ豆というのはシャーリーさんの実家が育てている豆なのよね? 豆と小麦を交互に育てることで、二毛作が可能っていうのはどういうことなの? 小麦は一度育てたら、土地を休ませ肥料を混ぜ込まないと育たないんじゃないのかしら? 豆を育てたら土地の栄養がなくなるんじゃない?」

「いえ、実家で育てている豆は祖父母が生涯をかけて研究した品種で、小麦のあとに植え育てると小麦にとっての肥やしになるんです。小麦に吸われた土の栄養だけでも十分育ち、かつ、栄養を分け与えられるんです。もちろん肥料があればどちらもよく育ちます。畝を交互にすることでどちらも育てることもできますよ」


 答えると、顔を見合わせるアビゲイル様とジュエリ様。

 この辺りのことは、農業書などに普通に書いてあることだ。

 でも、アビゲイル様たちはそういう本を読まれないのだろう。

 結構読まないものよね。


「ち、ちなみに、この『お風呂について』も、なに? 牛の胃を乾燥させ、革加工して小さな穴を多く開け、そこに人肌よりも少し温かくした湯を入れて……っていうのは」

「昔読んだ本の中に、戦場での問題点が多く書いてあるものがありました。その中に戦地での生活問題に『体臭』がありましたので、もしかして、と思い書かせていただきました。板で区切り、牛の胃を加工した革に小さな穴を開けて“シャワー”にすれば多くの方が清潔に保つことができます。糠に少しの塩、または灰を入れると簡易石鹸の代わりにもなるそうです。肌の弱い方にはお勧めできないのですが」

「体臭、ね。確かに臭そうよね……」


 その他にも“笠”についてを記載した。

 笠は東部の民族が開発した兜。

 三角の形をしており、特徴的なのは固定せず“回転すること”。

 回転することで、矢が当たっても受け流すことができる。

 表面をツルツルに仕上げた木材などで作れることから、経費節減かつ、防御力を上げることができるらしい。

 そして、洗濯について。

 大きな桶に水を張り、できるだけ毎日洗濯することで清潔にできる。

 なおかつ、体臭の改善に役立つ。


「戦場の体臭は士気に関わると本で読みました。改善できるのなら、できる方法をお送りした方がいいと思いまして」

「まあ、そうね。匂いは……うん」

「香水ではダメなの?」

「香水は香水で強い匂いが入り混じって大変なことになるので、そもそもひどい匂いになる前に体臭を改善するのが一番手っ取り早い解決された方がいいかと」

「確かに……」


 と、呟いてお二人は再び私の返事の手紙に覗き込み、読み進める。

 表情が、険しく見えて……思わず紅茶をごくごくと飲んでしまう。


「えっと……あ、あの……」

「――そうね、いいと思うわ。兄様がどんな手紙を書いてきたのかわからないけれど、まあ……そうね。正直婚約者同士の手紙としては……いや、まあ、見えないけれど……」

「ほ、ほう……」


 確かにー!

 婚約者同士の交流の手紙とは思えないかもしれないー!


「で、ですがあの、はい……すみません」

「いいのよ。どうせ兄様の手紙も色気も甘酸っぱさもなんにもない内容だったのでしょう? それにしてもとは思うけれど」

「でも、ジルグロッセ様にとってはいいのではないかしら? それになにより、シャーリーさんの知識量がすごいのがよくわかるわ。読書が好きだと言っていたけれど、これなら“好きなこと”を伸ばす方向にしてあげた方がいいかもしれないわね」

「好きなことを伸ばす方向? 確かに……まあ、そうね。それじゃあ、国公図書館に行ってみる?」

「国公図書館に!? いいんですか!?」


 喜びでじっとしていられなくて、思わずソファーから立ち上がってしまう。

 微笑むお二人は「その代わり」と言葉を続けた。

 そ、そ、そのか、わり……?

 い、嫌な予感が……。


「採寸も済ませましょう」

「さ、採寸!?」

「夜会用、お茶会用、交流会用に五着ずつ。普段使いのものと、外出用のものを十着ずつ。夜、寝る用のネグリジェも十着ほどほしいわね。それからお父様とお母様にお会いする時用の、特に上質なものを一着。そうね、これぐらいは最低限ほしいわ」

「そんなに!? そ、そんなの選んでいたら本を読む時間が……」

「まあ……なにもアビゲイル様は“今日行く”とは言っていないわよ?」

「ガッ……!」


 確かに。

 あ、あ、あ、あ、こ、これが王侯貴族の、やり方――!


「外に出しても問題ないくらいに成長されたということよ。それに面倒なことは早めに終わらせた方がいいと思わない?」

「そ、それは……」

「あまり時間をかけすぎてもお父様とお母様への挨拶が遅くなるわ。外に出る用のドレスは早めに作らないと。それでなくとも作らなきゃいけないドレスの量があるんだから」

「あ、あう、あう」

「ルシカ、外出の準備をお願い。シャーリーさんの書いた兄様への返事は出しておいて大丈夫よ」

「かしこまりました」




8月27日に予約されている45話に災害に関する記述がございます。

7月28日に起こった九州の震災を意図したものではございません。

該当地域の皆様は、どうぞ安全第一にお過ごしください。

また、今回被害に遭われた皆様には謹んでお見舞い申し上げます。

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございました ちょいと気になりまして 「体臭 どんな匂い」でググってみたら 「甘酸っぱい」はありませんでしたが 「酸っぱい」はありました そして「戦場 体臭」でググったところ 「ぜんぶ混…
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