エピローグ
2018年 インディペンデントシティ
大手製薬会社「ダットン製薬」の工場から警察官に両側から挟まれた数名の男が出てくる。多くのマスコミのカメラがそれを捉え、リポーターが大声を上げた。「たった今ダットン製薬インディペンデント第四精製所から違法な人体実験に関与したとされている所長オリバー、ブース研究主任、カーラ副所長が出てきました!インディペンデント警察は信用できる筋から捜査の提案があり、令状を取って捜査をしたところ三人とも人体実験の関与を認めたということです。警察庁はインディペンデント市警からの報告を受け、ダットン製薬研究推進室副室長ローリーに任意同行を求める方針であることを明らかにしました。」
別の建物。「じゃあコーネリーはここに潜伏していたんだな?」警察官の問いに手錠をかけられたアイルランドギャング達は頷いた。「で、何故コーネリー他殺死体で見つかる?」「コーネリーさんは政府の殺し屋に狙われてるって言ってたぜ。コーネリーさんを殺した黒幕も・・・あんたらと同じ政府の犬にちがいねえ!」わめくギャングを力いっぱい警察官は警棒で殴りつけた。
翌日 ジェファソンシティ
「さてと・・・今日は何の用かしら?」首都警察警視総監ウェバリーは応接室に来たバーナードに尋ねる。
「すまんが・・・あんたが内線で部下を呼んで俺を逮捕させるまでは全て話せない。」とバーナード。「なんですって!?」あらゆる事件について冷静に対処してきたウェバリーでさえもにわかに考えられない事態だ。軍隊にコネがある軍事会社社長の来客が応接室に尋ねてきたと思えば自分の逮捕を要求するという事態。
「驚くのも無理はない。だが俺は今、自首しに来た。俺が関与した数件の殺害事件についてな。もしかしたらあんたにも迷惑がかかるかもしれないが。司法省の連中が関与してるからな。俺が語ったことが表ざたになればああんたもマスコミ批判の対象となるだろうな。もちろんあんたの判断で捜査するか決めろよ。だけど俺は思う・・・あんたは自分のキャリアよりも真実を明かすことを優先したい数少ない警察幹部だってな。」
ウェバリーには思い当たる節があった。司法省の連中との会議。脱獄犯の暗殺に関する秘密の計画。彼女が告発したかったものだ。だが証拠がなかった。会議室には盗聴器探知機が設置されていたし、入り口で入念な身体検査も受けた。彼女は仕方なくキャリアを守った。だがいつかは告発してやると深く心に決めたのだった。
ウェバリーは意を決してバーナードに伝える。「分かった。私が逮捕するわ。手錠はいらないわね。まず権利についてですが、あなたには黙秘権があり・・・」
同時刻 ウェストランドシティ
「バーナードシールドコープ」の副社長室のドアをノックする者がいた。「どうぞ。」と副社長レイスは答えた。
「失礼いたします。」「やあキャサリンじゃないか。」入って来たのは社長バーナードの秘書キャサリンだ。「どうしたんだ?」「社長からあなたに渡してほしいと頼まれています。中身は分かりませんが。」一つの封筒だ。
「では失礼いたします。」と言ってキャサリンが出て行ったあとレイスは封筒を開けて中を見る。「これは・・・」中身からは複数の書類が出てきた。社長業務の引継ぎ資料、バーナードが書いて自らサインした辞表。「緊急事態における取締役の権限について」という書類のコピー。「副社長の暫定的な社長権限」の「社長が何らかの理由で業務を執行できなくなった場合」に印がつけられている。
そのとき、内線が鳴った。動揺をおさえながらも慌てて受話器を取る。電話の向こうからはすすり泣く声が聞こえた。「エレーナ?」「・・・・すいません、動揺してしまって。今バーナード社長、いやバーナード元社長からメールが届きました。」「ほ、ほう・・・それで彼は何と?」「彼は・・・正義を遂行します。レイス社長、これからよろしくお願いします。」