追憶と書いて懐古と読めるか?
ヴォルフは、怒ってるかな。
当然か。
私は彼の言う〝反逆者〟なんだから。
違う、って私が言うには、遅すぎたかな
後悔が残るなぁ。
そんな思いを抱いたまま、悠姫は一日を過ごしていた。あれからヴォルフラムと話すこともなかったが、彼はどうやら戦う準備を始めたらしい。まぁ、準備と言っても彼は魔王。ラディにかけられた術を解いて、元の姿に戻ることが出来れば戦うまでもなく、ヴォルフラムの圧勝だろう。
いつかこうなるとは思っていた。
小さい頃、ずっと仲良く三人で遊んでいた頃から。
初めて三人で遊んだのは、十歳になるかならないかの時だった。
「ねぇ、人間の街まで来て良かったの?アルに怒られない?」
見慣れない街中を二人で歩いていた時、そう言ったのはユーキアータだった。心配そうなユーキアータにこの脱走計画の首謀者、ヴォルフラムは言った。
「大丈夫だよ、お目付け役なんて。帰りたいのか?」
「そうじゃないけど…」
ユーキアータは罪悪感と好奇心を秤にかけた。無論、ずっと城の中に閉じ込められていたユーキアータには、好奇心の方がずっと重かった。
そうして向かったのは、人間の街で一番にぎわう市場だった。普段接している城の人たちとは違って、気軽に話しかけてきてくれた。
「おや、お嬢ちゃんたちどうしたの?お母さんは?」
「あら、可愛い子たちだね。ホレ、果物持っていきな」
慣れないことだったから、少し緊張もしたが歩いていくうちにそれも忘れ、二人で色々なお店をまわった。そして色々なところでお土産を貰った。
「ねぇ、きみたちはどこから来たの?」
市場を歩きまわって疲れて休憩していた時に、不意に声をかけられた。同い年くらいの少年で、金色の髪をしていた。市場では見かけたものの、こんなに近くで同年代の子供と接することがなかったので、話しかけられた時、驚きすぎて声が出なかった。
「……え?」
そんなユーキアータたちの反応が不思議だったらしく、少年は首をかしげた。
「…どうしたの?」
その声で、より社交的なユーキアータが我に返った。
「あ、えと、大丈夫。ちょっとビックリしただけ」
「そう?ならよかった。ぼくはラディ。ヨロシク」
そう言って少年、ラディは手を差し出してきた。ユーキアータは一瞬躊躇ったが、その手に自分の手を重ね握手をする。
「わたしはユー…ユカ。こっちはウルフ。よろしくね」
ユーキアータと言おうとして、言葉を止めた。魔族の王子と、その従兄妹となれば、人間に名前が知られていてもおかしくは無い。とっさに思いついた名前を使う。何のことは無い。以前飼っていた鳥の名前だった。
「ユカと、ウルフ?一緒に遊ばない?」
このラディの言葉から、全ては始まったのだ。
あの忌々しい事件も。




