あとがき
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
本作「聖女たるもの見過ごす訳には参りません」は、
優しく祈るだけの聖女ではなく、
必要とあらば拳を握り、真正面から問題に向き合う聖女を書いてみたい、
そんな思いから生まれました。
暴力は決して万能ではありません。
ですが、現実でも物語の中でも、
「話し合いだけではどうにもならない瞬間」が存在します。
本作の聖女は、その現実から目を逸らさず、
誰かが傷つく前に、自分が泥を被ることを選びました。
殴ることを肯定したいわけではありません。
それでも「見過ごさない」「逃げない」「責任を取る」という姿勢は、
聖女であっても、人であっても、大切なことだと考えています。
コメディとシリアスを半分ずつにしたのは、
どんなに重い選択の中でも、人は笑い、日常に戻っていくからです。
拳を握る聖女が、子どもにからかわれたり、
商人に冗談を言われたりする場面は、
この物語の中での「平和の証」でもあります。
最後まで一貫して描きたかったのは、
この聖女が「選ばされている存在」ではなく、
「自分で選び続ける存在」だということでした。
守ることも、殴ることも、引き受ける責任も、
すべて自分の意志で決める。
だからこそ、この聖女は強く、そして人間らしいのだと思います。
ここで物語はいったん終わりますが、
街の日常も、聖女の拳も、きっとこれからも続いていくでしょう。
誰かが困り、誰かが泣き、誰かが笑う。
そのすぐそばに、見過ごさない聖女がいる。
それだけで、この世界は少しだけ優しくなれる――
そんな余韻を残せていたら幸いです。
本当に、ありがとうございました。
またどこかで、拳を握る聖女に会える日まで。




