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聖女たるもの見過ごす訳には参りません  作者: 櫻木サヱ
聖女が真の意味で自分の拳を受け入れ、国と民に影響を与える

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拳のあとに残るもの

朝の光が、街を金色に染める。

 瓦礫は片付けられ、人々の生活がゆっくりと戻ってきた。

 戦いは終わった。

 でも、私の拳は、まだ覚悟を宿したままだ。


 王城の庭。

 民も兵も、静かに集まる。

 私は、中央に立ち、拳を軽く握る。

 もう振るう必要はない。

 しかし、守るという意志は手元に残る。


「聖女様!」

 子どもたちが駆け寄る。

 市場での出来事を覚えていたらしい。

 怖がるでもなく、憧れのまなざしで私を見上げる。


「今日も、誰も傷つけません」

 微笑む。

 小さな拳を握る真似をする子どもたち。

 その姿に、心が和む。


 その日、私は民と共に市場を歩く。

 商人たちは笑顔を取り戻し、客は安心して品物を手に取る。

 ここに、拳を持つ聖女がいるという事実が、彼らに安全を与えていた。


 王城に戻ると、代理人や法務官が待っていた。


「聖女殿、今回の戦いにおける裁量、国として正式に認めます」

 代理人が告げる。


「ありがとうございます……でも、私は自分の裁きを続けます」

 拳を軽く開く。

 評価や褒賞は必要ない。

 私に必要なのは、責任を果たす意思だけだ。


 夜、城の塔の上から街を見下ろす。

 光が川面に反射して揺れる。

 民の生活は戻った。

 笑い声も、店の呼び声も聞こえる。


「……守れた」

 静かに呟く。

 でも、守るべきものはまだまだ多い。

 拳を握る手に、責任と覚悟が宿る。


 その夜、団長がそっと声をかける。


「聖女様……民は、あなたの存在を誇りに思っています」


「ええ、でも誇らしさなんて要りません」

 拳を開き、夜空を見上げる。

 私が守るべきは、民の命。

 誇りや称賛ではなく、ただそれだけだ。


 静かな時間が過ぎ、街の灯りが消えていく。

 でも、民は知っている。

 どんな時でも、私が拳を握り、盾となる存在であることを。


 拳のあとに残るものは、破壊ではなく、安心だ。

 裁きではなく、守る意思。

 そして、聖女の存在そのものが、街に灯した希望。


 深呼吸し、拳を開く。

 空に星が瞬く。

 守るために選んだ拳は、今日も明日も、誰かの盾であり続ける。


 静かに微笑む。

 この街を、民を、そして未来を守るために――

 私は聖女として、拳を握り続ける。

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