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聖女たるもの見過ごす訳には参りません  作者: 櫻木サヱ
聖女が真の意味で自分の拳を受け入れ、国と民に影響を与える

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拳の行き先

朝の光は、柔らかく街を包んでいた。

 戦火の跡も、少しずつ消えつつある。


 王城の庭。

 民も兵も、静かに見守る中、私は立っていた。


「聖女殿、今日は一体――」

 団長が、声を潜める。


「……示します」

 拳を軽く握る。

 戦うためのものではなく、守るための拳だ。


 近くの訓練場では、兵たちが日常の演習を始める。

 負傷者も、訓練を再開する。


「今日は、誰も傷つけません」

 微かに笑みを浮かべる。


 でも、拳は握る。

 安心を与える盾として。

 警告として。


 街を歩くと、子どもたちが集まる。

 興味津々で、拳を見つめる。


「……聖女殿」

 一人の子どもが、小さく言った。


「私も、拳で守る人になりたい」


 微笑むだけで十分だ。

 言葉は、必要ない。


 市民の間に、小さな波紋が広がる。

 拳の意味は、力だけじゃないと知る者が増え始めた。


 その日の夜。

 王城の会議室で、最後の会議が開かれた。


「聖女殿、正式に軍を支える役割を認めます」

 王の代理人が、穏やかに告げる。


「……ですが」

 法務官が付け加える。

 「裁きも、責任も、すべて貴女に委ねられる」


 頷く。

 すべてを受け入れた。

 殴ることも、止められなかった命も、責任も。


「……はい」

 拳を開く。

 空虚ではなく、覚悟の重みが詰まっている。


 民も兵も、初めて知っただろう。

 聖女は、ただの英雄ではない。

 象徴でも、統制でもない。

 自らの意思で、殴ることで守る存在だと。


 夜空に星が瞬く。

 拳を握る手が、静かに揺れる。


 守るために振るう拳。

 裁くための拳。

 選ぶのは、いつも自分。


 これが、聖女のやり方。

 誰にも決めさせず、誰にも縛られず。

 ただ、守るために殴る――


 そして、誰かの盾となる。


 静かに、深呼吸する。

 明日は、また新しい命を守る日だ。

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