その8
「この野郎!」おれは怒鳴ながら、爺の首を必死に絞めた。
おれはエクセルが偶然に選んだこの爺(たまたま中学時代の理科の先公だった)をこれと言った理由も無く殺す事にしたのだが、殺す時は爺を憎み本気で殺そうと思った。爺の言った事が、おれに爺に対して激しい憎しみを覚えさせたのだ。
爺の言葉に頭に血が上ってしまったおれは、ズボンのポケットに入れていたトラロープを事など忘れ、直接、両手で爺の首を一心に絞めた。
爺は一瞬驚いたようだが、なぜか嬉しそうに笑った。(少なくとも、おれにはそう思えた。)
そして、おれの足元にゆっくりと崩れ落ちた。
その時、おれは視線を感じた!何百という視線を感じたのだ!
おれは慌てて辺りを見回したが、誰もいない!
道路にも車はなかった。
念のため、あの神社の境内を見たが人影はなかった。
単なる気のせいだったのだろうか?。
その時、おれは目の前に丸い窓があるのに気づいた。どうやらその窓は和室の明かり取りのようだが、どうした訳か家の中は見えず、それは鏡のように辺りを映していた。
その中央におれが立っていて、足元には爺の死体が横たわっていた。
おれの髪が乱れていたので、手くしでそれを直した。
おれは辺りを見回して誰もいないのを再確認して、爺の家を後にした。
爺は独り暮らしで、郵便受けは道路沿いの門柱のすぐ横にあるので明日の朝、新聞はそこに入れられる。爺の死体が発見されるまでに数日はかかると、おれは思った。
おれは神社下の木陰に隠したボロ車に乗り、後をつけてくる車がないのを何度も確認した。
おれはボロ家に帰ると、早速、パソコンの電源を入れ「マイドキュメント」から、エクセルの「獲物選定」をクリックした。
次の獲物を選定しなければならない。
おれは連続殺人を計画しているが、最初の殺人を実行しただけなのだ。これからも殺人を続けなければならない!
おれは真剣にそう考えた。
警察がおれを捕まえるか(そんな事はありえない。エクセルが勝手に選定しているのだから、おれと獲物とは“無関係という関係”しかない。目撃者さえ作らなければ、警察がおれにたどり着くことはない)、おれが飽きるまで人を殺し続ける事ができる・・・。
そうだ!幸いにもおれには小さい頃から一つだけ特技がある・・・。
“目立たない”
何をしても“目立たない”という特技(?)があったのだ!誰もおれの事など注目しない・・・。連続殺人をするには酷く都合がいい特技だ。
おれは思わず自嘲した。
それにしても、あの何百という視線を感じたのは単なる気のせいだろうか?




