その1
これは吾輩のブログで発表したものの再掲である。
エクセルの示したのは「20×」、「3」、「17」。方法は「3」
つまり、電話帳「ハローページ」の20×頁、左から3つ目の並び、上から17番目に記載されている人物がおれの最初の殺しターゲットということだ。
方法の「3」は「扼殺」。つまり絞め殺すわけだ。
・・・。
名前は×淵○、D市等々力町3-×、ついでに電話番号は××-××××だ。
電話帳はなんと便利なのだろう。この際、電話番号は関係ないが(毛頭、獲物に「おれはあなたを殺すつもりでいます。気をつけてください」と、電話するつもりは無い)、おれに獲物の名前を教えてくれ、棲家に導いてくれるのだ。
D市等々力町3-×の×淵○氏なる人物は全く知らないが、おれはこの男を手で絞め殺すのだ。
近頃の世の中は、狂っている。
世界同時不況の一因でもある巨額の公的支援を受けて経営再建中の米保険最大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)の幹部連中が目の飛び出るほど高額のボーナス支給をされたのに、ほぼ同時期に真面目にコツコツ働くことしかできないおれが十年近く勤めていた会社を突然リストラされた。
・・・。
アメリカや中国は景気が持ち直してきた、という話も聞くが日本はまだ不況に苦しんでいる。
今年一杯は何とか生活できるが、今年中に次の仕事を見つけないとそれから先は全く分からない。
野垂れ死にするしかなくなる。せめてもの救いは、おれには家族がいない事だ。
なぜ、おればかりが犠牲にならなければならない?
D市等々力町3-×の×淵○氏!
おれに撲殺されても恨まないでくれ。おれが悪いのではない。おれに人殺しをさせる、この世の中が悪いのだ!
おれは、まずインターネットでD市等々力3丁目×を調べた。(幸いな事に、D市はおれの住むZ市の隣だ。正直、おれは方向音痴だし車の運転もあまり上手でないし好きでもないので、×淵○氏が遠いX市住人でなくてホッとした。)
パソコンのディスプレー上の地図によると、D市等々力町3-×は野中というか新興住宅地のたった一軒屋だ・・・。
後は×淵○氏の家族構成が問題だ。大家族に囲まれて生活していたら、簡単には殺せなくなる。
理想的なのは×淵○氏が独り暮らしであることなのだが・・・。
ついでに×淵○氏についても、インターネットでチェックした。
あまり期待しなかったが、何と「×淵○」がヒットしたのだ。
それによると×淵○氏は現在七十一歳で元中学校長、D市の前の教育長だという。
教育に関する本も地元新聞社から出している・・・。
これにも、正直ホッとした。もし、×淵○氏がおれと同じような境遇だったら殺しを躊躇してしまう・・・。
「×淵○?」おれは思わずつぶやき、記憶をたどった。中学校の時の理科の先公がそんな名前だったような気もするが、はっきり覚えていない。少なくとも、その先公とはトラブルはなかった。
まあ、そんなことはどうでもいい・・・。
今のおれと×淵○氏とは“無関係という関係”しかない。警察が(殺された)×淵○氏の身辺捜査をしても、おれに絶対辿り着けない。
目撃者にさえ注意すれば、おれは安全だ!
獲物の棲家は野中の一軒屋で、注意さえすれば殺しの現場を見られる可能性は少ない。
殺人を犯しながら逃げ切るためには、目撃者をださない事が第一原則だ。殺人を目撃されたらおしまいだ。




