第九百二十五話
「秀星様。これからどうするのですか?」
「次のダンジョンを制圧しに行くつもりだ」
ゴブリン都市から物資と人をアジトに送った秀星。
そのまま空を飛んで次のダンジョンを目指していた。
そんな秀星にセフィアが話しかける。
「一応聞いておきますが、秀星様は今のノアスフィアですべきことはなんだと思っていますか?」
「近隣のダンジョンの制圧と、人間の勢力圏拡大と戦闘力向上といったところか」
最低限人間たちが戦える土台を作る必要がある。
だが、今現在はそれすらできるような状態ではない。
余裕がないのに人間が希望を見出すことはないのだ。一度かかわった以上、それくらいはするべきだろう。
秀星は別に、力がある物が弱者を救うべきだとは考えない。
それは国家政府に言うことであって、個人に対して求めることではない。
それでも最低限の良心というものはある。
「やることは単純ですが、その分、かなり曖昧ですね。数字としてどれくらいするのかを決めているのですか?」
「いや、まったく」
「……秀星様は作業ゲームになると思ったときは雑になりますね」
「今に始まったことではないな」
基本的に一手先は考えないのが秀星スタイルである。
「それはいつも通りなのでいいとしましょう。ただ、椿様や風香様にいろいろ押し付けて、後で何を言われても知りませんよ?」
「俺は脳筋だからな。椿がやっているようなことをやれって言われても困る!」
さすがに神々が相手となれば秀星だって考えるが、格下相手にごちゃごちゃ考えるようなタイプでもない。
というより、脳筋と言っているが、別に戦いそのものが雑というわけではないのだ。
押さえるところはきっちり押さえて攻撃しているのですべて有効打になっている。
たまに『芸』に走ることもあるが、それはそれだ。
「まあ、そこはもうあえて追及しないことにしましょう。私もつかれますから」
「……で、セフィアは俺に何が言いたいんだ?」
「この世界に対してどれほど骨をうずめるつもりなのか。ということです。現在、あのアジトと町にとって邪魔な存在である範囲に活動がとどまっていますが、これ以上広げるつもりがあるのかどうか。仮に広げるとして、どのレベルまでやるのか。ノアスフィアに存在するダンジョンの数は相当なものですし、今のうちに決めておかないと、ダラダラと最後までやることになりますよ」
「面倒になったらセフィアの端末を大量に開放して強引にやるから問題ないよ」
「……それなら、最初からそうすればいいのでは?」
「いやー……それがな。アイツらが持っている技術を見ていると、どうやら『解析技術』がそうとうなものだった。仮にセフィアに勝てない個体がいたとすれば、情報を抜かれると厄介だからな……」
「それはそうですが……」
別に秀星は自分でやることにこだわりはない。
ただ、神々が相手の場合はセフィアではスペックが足りないから任せていないだけである。
今回のダンジョンだが、現在はセフィアでは倒せないというわけではない。
だが、『本当に巨大なダンジョンはどうなっているのか』が気になるのだ。
「これからいくダンジョンは、かなりデカいやつだ。そのダンジョンに住んでるやつらがどれほどの実力を持っているのか知らないが、それを確認してからでも判断するのは遅くないからな」
「……一応、それで納得しておきましょう」
一手先は考えていない。
ただ、手を出す前の段階で、何もないわけではない。
……と、言ったところだろうか?




