第八百八十九話
当日!
「沖野宮高校の隣の特設スタジアムがあるのか。そこでやるみたいだな」
「え、会長。今知ったの?」
「神祖である私には、人間基準で作られたスタジアムはどこであっても狭いからな。敵にも神祖がいるとなればなおさらだ」
「雑だなぁ。椿ちゃんが入ったことで向こうが誰を連れてくるのかわかったもんじゃないのに……」
「むうう!私は頑張りますよ!」
牧人が愚痴るので椿はプンプンしながら反論。
現在、彼らは生徒会が所有するマイクロバスを使って移動している。
どうやらこちらからどこかに向かうのではなく、向こうがこちらに来るようだ。
「あのスタジアム。特になんの変哲もないところだからなぁ。ある程度の広さはあるけど。全員が全員を見渡せる状態のままで戦うことになるぜ?」
「だよねー。まあ、神祖を相手に遭遇戦なんて心臓に悪すぎてやってられないのも確かだけど」
「まあ、スタジアムなら全ての場所が間合いっていう生徒もいるはずだ。お互いに言えることだけど」
バトルロイヤルを性懲りもなくやってきた沖野宮高校の生徒なので、基本的に『遭遇戦』に関しては慣れがある。
というか最近、学校が運営する大規模なものではなく、セフィコットにポイントを積んで設置してもらった『セフィコット・バトルロイヤル・カウンター』というものを作ってもらった。なお、ポイントチケットをドロップするモンスターが出てきたり、たまにセフィコットが緊急でミッションを発令することがあってクリアするとポイントチケットをもらえたりするので利用している。
それに加えて、普段からダンジョンに潜っていることもあり、相手が人であろうとモンスターであろうと『遭遇戦』に関しては経験を積んでいるのだ。
しかし、神祖が相手となればそれは別だ。
感知する能力も速度も、何もかも神祖のほうがスペックが上である。
沖野宮高校にだけ神祖がいる状態になると思っていた全ての参加生徒は、『もしかしなくても余興にしかならんな』と考えていたのだが、天窓学園にミーシェが入ってきたことで行方がわからなくなった。
神祖が衝突するとなれば、やはり気になるのは基樹である。こいつをどうすればいいんだと言う話になる。
流石にイベントごときでやらないと思うが、『魔王化』までされたら骨も残らない。
「まあ、戦う前にいろいろ話し合うことになる。それに、天窓学園とは仲が悪いわけでもない。普通にやればいいだろう」
「それはアンタだからそう言えるだけだって……」
国枝はため息をつく。
魔戦士学校における『生徒会』はかなり大きな意味を持っているのだ。
魔法という概念が表に出てきて日が浅く、世界中のメディアが各国の魔戦士学校に注目している。
まあ、どこの新聞社であったとしても、編集して『持ち上げるような記事を書く技術』というものを持っているものだ。
魔法省はそれらの新聞社と連携をとって魔法という概念を養護する記事を書かせているが、今回のような『生徒会同士のイベント』というものは曲解されないことを言い続けなければならない。
フォルノスには無理に決まっているので、国枝は今から胃が痛いのだ。
戦うことが魔戦士の本職ではあるが。もう少し生徒会長としての自覚を持ってほしい。
「大丈夫ですよ!何かあれば来夏さんとおじいちゃんを呼んで場を引っ掻き回してしまえば良いんですよ!」
「そういうこと言うのやめろ。ただでさえ何も言わなくても来ちゃう人たちなんだから」
「牧人先輩。あまりそういう補足しないで。フラグが強固になる」
高志と来夏。
ギャグ補正を持っていて、圧倒的な戦闘力……というよりは『非現実性』がある二人だが、真面目なときには来てほしくない人たちである。
「そういや、天窓学園って、人工島の方の学園から生徒たちが集まってるよな」
「そうだね。確か来夏さんはそこ出身だったかな」
「卒業者の一覧を見たら、高志さんは沖野宮高校の卒業生だった。多分乱入してくるとなったら、高志さんがこっちに入ることになるね」
三人組が真面目に考察しているが、混沌になるのは目に見えている。
「……その高志という男の武器はなんだ?」
「素手だね」
「そうか。それならまあ、ミーシェが相手になっても問題はないな。アイツを相手に剣で挑むことは私だってやらないくらいだ」
フォルノスはうなずく。
安心したかどうかとなると微妙なところである。
「……で、お前たちはその来夏には勝てるのか?」
「いや、あの人は勝てるか勝てないかっていうより……『この人には勝ってはいけない』っていう感じがする」
牧人がつぶやく。
椿を除く全員がうなずいた。
「……一体どうなってしまうんだろうな」
「会長。責任はとってくださいね」
「え、えぇ……ここでいうのか。国枝」
「当然ですよ」
「ま、まあ、最悪何が起こっても……」
「会長、責任っていうのは後で取るものではなく、最初から負うものですよ」
「嫌なこと言うなよ……」
「それができないのなら会議では黙っててくださいね」
「……」
フォルノスは思う。
まず、自分の部下の好感度を上げておくべきだったな。と。
もう遅いけどね。




