第八百八十八話
「えっ!生徒会での対抗戦があるんですか!?」
『イベント』という言葉を聞くと、途端に元気になる子がいる。
なんだかセリフを聞くだけで誰がしゃべったのかわかるが……さて、椿はキラキラした瞳で秀星と話していた。
「みたいだな」
「むうう……生徒会限定ですか……」
椿は悩んでいる。
どうやらイベントに参加したいのだろう。
何らかの形で加わりたいのかもしれない。
しかし、難しいだろう。
すでに生徒会役員は決まっており、誰が出場するのかも決まっているのだ。
さらに言えば、この戦闘イベントは、本題となる『会議の余興』なのである。
外部からの協力者を呼ぶという意味がないとは言わないが、基本的に野暮と思われても仕方がない。
秀星から見て、フォルノスは『リーダー』というだけあって、ミーシェを上回るような『何か』を秘めているようにも見えるのだ。
それを前提にすれば、既に沖野宮高校側の方が強いのだ。
これ以上、余計な戦力を投入するのは無理だろう。
天窓学園の生徒会の頭脳メンバーはおそらく基樹だ。
その彼女である美奈は弱くはないのだが、作戦の指揮が取れるような訓練はしていない。
ミーシェは作戦指揮においてはポンコツなので頼れないため、結局、元魔王として君臨していた基樹が戦うことになるだろう。
そんな中で、しっかりした『実力』がある椿が乱入すると、向こうにとってはとても面倒なはずだ。
(……まあ、こちら側の戦力を考えたら、多分牧人が一時的に外れることがあるっていう程度だが……すでに確定してるみたいだしなぁ……)
そう思いながら、秀星はスマホでイベントを確認する。
「……」
すでに、参加メンバー全員のリストすら作られていた。
まあ十二人が一度に入って戦うチーム戦なので、別に端折るような量でもないだろう。
ただ、一番気になるのはそういうところではなく、明らかに戦う場所が現代日本っぽくない上に、節々に見える『セフィコット・システム』の影である。
(乱入はワンチャンありそうだな)
秀星はそう考えた。
とはいえ可能性は高いだろう。
そもそもセフィアが『椿を優遇する』というのはありとあらゆるルールの上だからである。
正直、このレベルの戦いになると、ルール管理や審判といった部分では普通の人間ではついていけないので、秀星が考案する制御システムをそのまま運用できるセフィコットに任せるしかないわけだが、そのルールの番人は椿を優先するのだ。
「仕方がないですね。こうなったら……牧人先輩の会計の席を取りに行きます!」
「やめなさい」
普通に奪う気満々でした。
「ぷううう~~~っ!私も参加したいんです!」
「いいか?椿。こういう時は席を奪うんじゃない。席を増やせるように交渉しに行くんだ」
「む?」
「要するに、敵の席も一緒に増やすんだ。そうすれば、その席に椿が入れるだろ」
「その通りですね!今から突撃してきます!」
椿が走り去っていった。
「……元気だなぁ」
「まあ、椿ちゃんだしね」
椿が走り去っていくと、風香が後ろから来た。
「もうそろそろ一月が終わるし、この時間にいられる限界も近づいてきてるからな。何か大きなイベントに参加したいのかね?」
「神祖が二人も入っているイベントなんてそうそうないしね。まあ……ちょっとアレな予感しかしないけど」
「だよな。椿の戦闘手段が刀だっていうのに、剣術神祖である師匠が相手だと何もできんぞ」
「一応、椿ちゃんは風を使った遠距離攻撃もできるけど……」
「いや、椿が使う『神風刃』は刀を起点として発動する。師匠はそれを『剣術』と定義可能だ」
「うわー……どうするのそれ」
「他の人と戦うしかないんだよな……」
もしくはフォルノスの隣に立って戦うということだが、マジで置いてけぼりになる可能性が十分にある。
「ま、何とかなるだろ」
「そういうものかな」
「参加メンバーが椿のこと嫌いじゃないからな」
「それもそうだね」
仕草によっては他者が禁断症状を発するほどのかわいらしさと雰囲気を持っている椿。
他の人がいろいろ考慮してくれると助かります。
「あ、椿からメールが来た……『特別参加枠』をフォルノスと基樹が認めたから参加できるようになったらしい」
「さすが椿ちゃん……」
『さすおに』とか『さすまお』とか、そういった言葉があるらしいが、『さすつば』みたいな言葉が出てきそうだ。
「椿ちゃんのファンクラブを作ったとしたらどうなるんだろうね」
「さあ?……少なくとも規模はでかくなるだろうな」
毒にも薬にもならないことをいう秀星、
……実は『二十年後』ではとんでもないことになっているのだが、この場では伏せておこう。
「このタイミングで椿の参加が決定か。向こうは誰が出てくるんだろうな」
「誰だろうね……そもそも、椿ちゃんは生徒会メンバーじゃないけど入ってきてるから、向こうもその制限がないわけだし」
「あ、言われてみれば」
特別参加枠だが、『椿でも入れる』という都合上、天窓学園の生徒たちなら誰でも遠慮することなく入ることができる。
「そうなった場合どうなるんだろうな……あ、なんか、一人、割り込んできそうな人に心当たりがある」
「誰?」
あまり確信はしていないような様子で、秀星は言った。
「向こうの元生徒会長だよ」




