第八百十一話
釣りスポットがあるくらいなので、他にもいろいろある。
「お!あれは誰かが戦車に乗って戦ってますね!」
……ほかにもいろいろある。
なお、今回は秀星が全く運営にかかわっていないので全て魔法省が決めた設定で進んでいるわけだが、最初から戦車などを持ち出す程度には容赦はないらしい。
秀星が次々とバトルロイヤル中にシステムを追加することがない反面、『こういうことなら一応参加者の方が対応してくれる』という前例にもなっているので、かなり理由になっているようだ。
というか人間がバトルロイヤルで戦っているときに戦車を持ち出してどうするのか。という意見が出るかもしれないが、そもそも神器持ちが多数参加しているので何も問題はない。
「ですが、こっちはゾウさんですよ!突撃ですうううう!」
「ぱ、パオオォ……」
ちょっとゾウさん引き気味だけど大丈夫?
椿の中では『ゾウ』≧『戦車』なのかもしれないが、それは無茶というものである。
そもそも基本的に兵器と動物を比べて動物の方が強かったらなぜその兵器を作るのかという話になるだろう。
まあ、そんなことは椿の頭の中にはないわけだが。
「む?ゾウさん。元気ないですね」
そりゃそうだ。確かに陸上生物の中ではトップクラスの体格と重量があるアフリカゾウとはいえ、戦うためだけに作られた戦車をどう相手にしろというのだろう。
「こういう時は作戦が必要ですね。むうう……とにかく前進です!」
アフリカゾウは『この子に期待した俺がバカだった』と思ったが、ここで突撃しておかないと自分の見せ場がないと思ったのか、覚悟を決めて戦車の方に向いた。
そして、突撃!
アフリカゾウは大体時速四十キロを出せるのだ!
「もうちょっとスピードアップです!マッハ1で突撃です!」
無理無理無理無理!
と内心叫ぶアフリカゾウ君。
さすがのアフリカゾウ君と言えど、一般的な最高速度の三十倍を出せといわれても無理なものは無理である。
そういうマッハ1というのは君のお父さんに頼みなさい。ゾウ君では無理です。
「うわっ!戦車がこちらに主砲を向けてきました!」
アフリカゾウ君大ピンチである。
が、かわいい女の子のために突撃した。
そして、戦車の主砲から砲弾が発射!
アフリカゾウ君めがけて一直線に飛んでくる。
アフリカゾウ君は長い鼻を持ちあげてバシッ!とたたいた。
すると、砲弾が鼻に叩き落されて地面で砕け散る!
『おお!やればできるもんだな!』と内心興奮するアフリカゾウ君。
戦車に乗っていた人は盛大に驚いているわけだが、こればかりは仕方がない。
次弾装填されて次々と発射される砲弾だが、アフリカゾウ君はその鼻を使ってバシバシ弾いて突撃する。
「おおっ!まさかできるとは思ってなかったです!」
ひどくない?
あと多分、アフリカゾウ君がすごいというより、君のギャグ補正の影響じゃないかな?
などということを突っ込んでいる間にアフリカゾウ君は戦車に激突。
「パオオオオオオオオ!」
戦車の砲弾を弾きまくるというアドレナリン出まくりの状況での全力突撃。
戦車の鉄のボディをぶち破って、正面から破壊する。
「……」
そして、中にいた優奈と美咲が絶句していた。
美咲の傍には子供バージョンになっているポチはアフリカゾウ君の後光に当てられてビビっている。
「あっ!お久しぶりですね!優奈さんと美咲さん!」
剣の精鋭の中でも結構空気が薄そうなメンバー二人の絶句状態である。
……片方が虎を連れている小学六年生で、片方が最高神の一角である模倣神だというのに空気が薄いってどういうことなんだろうね。
「つ、椿ちゃん。元気そうだね」
優奈はそれを言うのが精いっぱいであった。仕方がないね。
「むふふ!私のアフリカゾウ君はすごいんですよ!」
アフリカゾウがすごくないというわけではないが、もっとすごいのは椿の方だろう。
これが椿でなければもうちょっと常識的なことになってくれそうな感じがするのだが、椿なので仕方がない。
「美咲。とりあえず……」
「そうですね……」
「「退散!」」
戦車から飛び降りてダッシュする二人。
「あ!これはバトルロイヤルなので戦いますよ!アフリカゾウ君!突撃です!……あれ?」
動いてくれないアフリカゾウ君。
「ぜーはーぜーはー……」
完全に息が上がっていました。
ついでに言うと、レンタルタイマーも十秒を切っている。
「おー……これは仕方がないですね」
アフリカゾウから降りる椿。
そして、正面から笑顔でゾウを見る。
「とても楽しかったですよ!また会いましょう!」
「……」
笑顔はとてもかわいいのだが、また会うのは勘弁だと思ったアフリカゾウ君。
ゾウではあるが苦笑いで転移で消えていった。
「よし、私は二人を追いましょう!待てええええええ!」
自分の足で走って優奈と美咲を追う椿。
楽しそうで何よりである。周りの人間の常識崩壊力が少々気になるところではあるが。




