第七百九十話
ラターグが愚痴を言いながらもゆりかごセンターの運営をしているため、勘違いしている馬鹿野郎の対応をどんどん続けているうちにちゃんと困っている人にも出会えているので対応してなんとかなっている気がしなくもないが、正直……人を派遣して現場に直行させた方が助けられる場合が多かった。
まあ、『ゆりかごセンターに行ったらぶっ潰すからな!』みたいな指示……というより脅迫を受けている債務者などもいたが、強面と暴力で維持しているようなクソ雑魚闇金などラターグの敵ではない。
結果的に、『かかわった分は好転している』という状況にまで持ち込んでいる。
そのため……
「……思ったんだけど、逆にこれ、神祖が『ラターグが頑張ってるし遠慮しなくていいか!』って判断する材料にならない?」
ミーシェのつぶやきによってラターグの表情から希望が消えた。
「え、マジで言ってるの?僕が対応してるから問題ないって?……誰のせいでこうなってると思ってるんだああああああ!」
最近絶叫が増えてきたラターグ。
どうやら追いつめられるとデカい悲鳴が出る性質なのかもしれない。
「あっはっはっはっは!」
そしてそんなラターグを見て笑う椿。
……以外と、他人の不幸で笑う子なのかもしれない。
「ゆりかごセンターの職員が地球に来て、こっちに追いやられた神々に対して交渉してるみたい。だから神々の人数も減ってる。このままいけば、地球の方は問題がなくなる」
「僕の問題が増えるだけなんですううううう」
「仕事だからしっかりやりなさい」
「……はい」
パソコンを見てタイピングしているラターグ。
「今はどんなことをやってるんですか?」
「ん?友人誘って麻雀やってる」
「ガチで報告しますよ」
「ヒイッ!リビアちゃん。いったいいつからいたの!?」
「パソコンに盗聴器を仕掛けていますから、転移で一瞬です」
「マジで言ってんの!?」
「そのパソコンは仕事用ですからね」
「……」
ラターグが全面的に悪い。
「……いいじゃん!リビアちゃんだって業務時間中に仕事用のタブレットでパズルゲームやってるでしょ!」
「なんで知ってるんですか!?」
「カマかけました」
どや顔になるラターグ。
椿は『ん~』といった様子で二人を見ていたが……。
「部下は上司に似る。ということですかね?」
「似るんじゃないか?多分」
詳しいことは分からない。だが何となくそんな気がしてくる。
「とりあえず、地球の神々の対応は何とかなるか……問題は強硬派そのものをどうするかだな」
「最高神の神器を収集しているのは分かったけど、まだゴールが見えない。いつまで続くのかわからないし、一時的に収集をやめるかもしれないけど、根本的な解決にはならないはず」
「ふーむ……」
とても未来で大豆関係の業種に手を出しているようには見えない。
「……椿。強硬派って未来では大豆関係に手を出してるんだよな」
「より正確には重蔵さんのコネの範囲で働いてますね」
「「「!?」」」
秀星と椿のやり取りにラターグとリビアとミーシェが驚く。
「……マジで?」
「はい!シカラチさんがかかわっているんですよ。重蔵さんは大豆農家ですよ!」
「大豆?……ああ、シカラチの力ってことは発酵か。確かにアイツが作るとおいしいからね。たまに来夏と高志も誘って宴会やってるよ」
「自由すぎる……」
どうやらすでに友好的な関係らしい。
「シカラチ……は未来では働いてるのか」
「今、一瞬接続詞選ぼうとしたよな。シカラチ『も』じゃないのか?」
「なんで僕が未来で働かなければならないのさ。後継者を作ってさっさとやめる予定なのに」
「後継者候補は?」
「僕の知り合いの範囲で任せられる人がいないので育成からやらなければなりません」
「あっそ……でも、部下は優秀なんだよな」
「優秀なんだけど……みんな視野が狭いっていうか、頭が固いっていうか……」
横でリビアが眉間にしわを寄せているが……。
「ラターグさんの頭は豆腐みたいにやわらかいかもしれませんね」
「いや、豆腐っていうよりは枕じゃないかな」
「なるほど!よくわかりました!」
どういうやり取りだ。
ミーシェがここで『コホン』と咳をした。
「話を戻すけど……どこが復帰点なのかいまいちわからないけど……とりあえず大豆関係で働いていることは分かった」
「で、どうするの?」
「強硬派の拠点にその重蔵という人をぶち込んでみる」
「アグレッシブすぎません?」
「え!でも、重蔵さんは九十二歳ですけど、身長が二百三十センチで、体重が百七十キロもあるんですよ!?」
「大丈夫。私は神祖だからあってないような重さ……ちなみに、本当に人間?ゴリラじゃないの?」
「多分ですけど人間っぽいですよ」
切ないことになるから断言してあげて!
「……で、どうする?ぶっちゃけ」
「神祖の皆さんの本気や全力は分かりませんが、多分重蔵さんなら大丈夫だと私は思います!」
椿ちゃんはミーシェの意見に賛成派のようだ。
「……試しにやってみるか?カオスなことになるかもしれないけど」
「えーと……封印神祖でしたっけ?なんか殴り飛ばしたとか言っていた気がします」
「……誰?」
ミーシェは知らない様だ。
まあ、ミーシェの後に神祖になった者も多いようなので、全てを把握しているというわけではないだろう。
「……少なくとも強硬派ではないと思う……まあとにかく、重蔵さんのところに行って、ちょっと行ってきてもらう。これでいい?」
「ちょっとって言うレベルなのかどうか凄く疑問だけど……まあいいってことにしよっか。父さんと同族なら大丈夫だ」
嫌な信頼の典型例である。




