第七百八十七話
「皆さん。今から重大な発表をします……現在なんかやばいことになっている天界を支えるために、上位神や下位神を支える組織を新しく作って、僕はその運営責任者になります!」
豪邸というからには大型のホールがあるわけで、そこに傘下の神や抱えている神兵、使用人などが集まっている。
そこでラターグは盛大に発表した。
「……あの、『正気か?』って顔するのやめてくれない?」
ほぼ全員が訝しげにラターグを見ている。
堕落神であり、基本的に豆腐ハウスでダラダラしているだけの男に援助の方法などわかるのかということもあるし、そもそもなぜそんなことを言い出したのかという疑問があるのだ。
「あの……いままで屋敷にいなかったのは、その準備を進めていたからなんですか?」
誰かがそんなことを言った。
それによって若干空気が変わる。
もしも実際にそのシステムを運営するとなれば、膨大な数の神々を抱えることになる。
実際の援助の内容がどうなるのかはわからないが、基本的には金の話になるだろう。
様々なコネで金を引っ張ってきて、それを運営する必要がある。いっそのこと銀行を丸ごと買ってしまえば話は早いが、さすがにそこまで利権を手放すようなことを考えるような連中ではないだろう。
「いや、そんなことは全くないよ。さっき決めたからね。僕は今までずううううううっとひなたぼっこの旅を満喫してた」
殺意が再燃した。
「ふざけんなこと神型粗大ゴミ!」「磔にしてやれ!パイルバンカーでぶち抜いてやる!」「その運営誰がやると思ってんだ!ふざけんなことクソ○○○が!」「ホモゴリラの巣窟にぶち込むぞゴルア!」の罵詈雑言の嵐。
ていうか物が飛んでくる。時々爆弾が混じっているのでそれは堕落させて機能させなくして、他の者に関しては敷布団堕落バリアで全て無力化する。
「どうだ!見たかこの敷布団の力を!この敷布団には、触れたものを堕落させる効果と、真面目に生きている人間のイライラゲージを増幅させる効果があるのさ!」
そういってドヤ顔になるラターグ。
男性諸君が獣のような唸り声を出し始めたので、なんだか本当にイライラゲージがすごいことになっていそうだ。
……ちなみに、触れたものが堕落するといっていて何故ラターグが元気なのかというと、元から堕落している存在である上に、真面目にならなくても活動できる動機……というより趣味が多数存在するからである。
(さて。盛大に煽るのはこれくらいにしようか)
イライラを貯めこませるが、それと同時に発散するポイントをしっかり作るのがラターグ流である。
「さて、そろそろ発散できたかな。というわけで、運営組織を立ち上げることを宣言したからね!メンバーについては後で僕が指名するから。みんな僕のいうことを聞くように!」
独裁組織みたいな言い方だが、残念なことにラターグはこれでも実力があるのだ。
基本的にダラダラしたいといい続けているが変化には敏感であり、その実力を一目見たものからは警戒されるほどなのだ。基本寝ているからいいものの、本気出したらヤバいと思われるのである。
ラターグがめったに立つことはないホールの檀上。
そこから見下ろした先に整列する千人以上の人間は、全てそんなラターグの実力を垣間見たものなのだ。
「あの、ラターグ様」
「なんだい?リビアちゃん」
「今も『どうすれば僕の不労所得の一部に組み込めないかな?』って考えてませんか?」
「なんでわかったの?……あっ」
千人が『なあ、今『あっ』て言ったよな。『あっ』ていったよなあああああ!』という顔になる。
「……」
ラターグが滝のように汗を流し始める。
「逃げろおおおおおおおおお!」
「「「逃がすかあああああああ!」」」
ラターグは一目散に逃げだした。
さすがに悪いことを盛大に考えていたことがばっちり露見してしまってはラターグと言えどそこから信用を勝ち取るのは困難である。
……まあ、実際はいつもこんな感じだったりするので、実は千人くらいいた中でほぼ全員がわかっていたりするのだが、それはそれとさせてもらおう。
なお、天界は転移阻害の効果が働いているため、作った本人であるギラードルであっても困難であり、転移そのものを司る秀星の母親である転移神サラであってもなかなか面倒なコストが必要になる。
というわけで、身体能力が貧弱なラターグであっても逃げるしかない。
オマケに、全員が『更生神』が作った腕輪を装備していることもある。
大量に作られているので神器ではなく、単純に更生神が作ったアイテムというだけのものだが、これに対抗するためには、堕落という力をばらまく神器を作る以外に方法はない。
ただし、基本的にラターグは自分、もしくは他人がダラダラするためにしか神器を作らないのでそんなものは用意していないのだ。
資金力を考えればそこそこの神器のコアを買えるのだが、その中で使えるように設定できるのが一個だけという制限もラターグは突破できないので、やはり作るならベッドなどがいい。
というわけで結局はフィジカルである。
「ぐうう……不味い。僕の傘下の神々には第一世代型の最高神もいるからな……」
ラターグと同格である。過去に何があったのだろうか。
「だが、今は逃げるしかない!こんな時は……シカラチに頼ろう!」
親友になんてことを……。
……ただ、なんとなく、最終的にはどうにかしてしまうから、ラターグは認められているのだ。
まあ上司にしたら苦労が増えるけどね。




