第七百八十四話
神祖が衝突する場合、ダンジョンの安全地帯一つというのはあまりにも狭い。
……と思われるかもしれないが、実はそうでもなかったりする。
人間の体であれば、銃弾をぶっ放そうが、刀で斬ろうが、当たり所によっては助かったり助からなかったりする。
が、人間一人を殺すのに戦車が必要というわけではない。
……なんか戦車を持って来ても死んでくれない人間が一定数いそうな気がしなくもないが、この場では除外する。
神祖の領域だと、部屋にあるものを破壊すると、場合によってはその影響が自分に出る可能性がある。
瓦礫が自分にどんな影響があるのか、瓦礫の向こうに敵が何かを配置したかもしれない。遠距離攻撃としてまき散らした神力が利用されるかも……考えていけばきりがない。
近接攻撃が主体になる。
そして、無駄な破壊をもたらそうとすると、その隙を突かれる。
神祖のレベルとなると、少し力を入れると破壊をもたらすので、出来る限り神力すら抑えて、隙をなくそうとしなければならない。
そのため、いつもよりも近接攻撃寄りになるものの、滝のように魔法陣を武器に叩き込み、敵の攻撃の属性を有効な属性で突破する点は変わらない。
なんどもいうが、神々の戦いはじゃんけんだ。二回以上負けたら敗北。それ以外にルールはない。
……このルールで剣術というものを完全に極めた存在であるミーシェと、そもそもそこで何が起こっているのかをすべて鑑定できてしまうライズを同時に相手するというのは、秀星であっても頬をひきつらせて帰りだそうとするはずだ。勝てる勝てないは別として。
「面倒ねぇ……」
槍、棒、鎖……様々な神がいるということは、言い換えれば『様々な武器のジャンルが存在する』ということでもある。
ただ、圧倒的に剣が多いのが現状である。
神器のコアは高いので、それを実際に神器にするとなれば、戦闘力目的なら剣にするものが多いのだ。
見栄えの問題もあるが、剣ならこまらない。
そしてその『大体の場合に剣にする』というのが、今のリリスにとっては嫌な現状だった。
「ほとんど奪ってきた神器が剣だっていうのに、あなたを相手にしなければならないのは嫌な話ね」
「私にとってはうれしい誤算」
「でしょうね」
剣の形になるように魔力を固めたミーシェが、それを振るってリリスに次々と連撃を打ち込んでいく。
それに応戦するように剣以外の神器で応戦するリリスだが、あまりいい結果にはなっていない。
神という存在は何かを司る関係上、もちろん得意分野が存在する。
剣術神祖であるミーシェの得意分野はもちろん『剣』だ。
これは、自分が使う場合は当然優れているが、相手が使った場合であってもすぐに解析できる。
鑑定神祖であるライズは、自分の鑑定能力は優れているが、それと同時に敵の鑑定能力も把握できる。
解放神祖であるリリスは、ありとあらゆる『制約の開放』……まあ本来出せない部分の力を発揮したり、脳のリミッターを外すとかそんな力だが、それが自分が優れている上に敵の解放能力もわかる。
「秀星は神々の戦いはじゃんけんゲームと言っていた。ただし、それはお互いの得意分野を把握し、そして敵が完全にそれを避けている場合のみ成立する。もしもここでリリスが剣を使えば、私が勝つ」
「その通りなのよ。だからあなたには会いたくなかったのよね。あなたは私の敵ではないけど、確実に邪魔しあう関係は避けられないから……おっと!」
リリスは横から突き出してきたライズの槍を回避する。
そのまま距離を取って、爆弾精製神器を使ってその地点を爆破する。
三人ともその地点から距離を取った。
爆発の威力はあまりない。
ただし、『爆破耐性貫通』の特性がありとあらゆる次元視点でガン積みされているため、最も適した防御が『迎撃』ではなく『回避』なだけだ。
本来ならば、この程度の爆弾であれば叩き切ることそのものはできる。
「ふう……ちょっと休憩……」
息を吐くリリス。
持っていた神器をとりあえず黒い渦の中に引っ込める。
それを見たミーシェは剣筋を下げた。
「……フフッ。さすがに本気では来ないわね。ミーシェ」
「……」
指摘されたミーシェだが、視線をわざとらしくリリスから外しているので、図星であることは間違いない。
「……それで、剣筋を下げたということは、知りたいことは分かったということでいいかしら?」
「なんとなく」
ミーシェは無表情のまま変わらずそういった。
そして、リリスに背を向ける。
「もういいのかしら?」
「これ以上あなたに付き合うことに意味はない。私は剣術神祖。剣を使えば何でもできる。相手の企みを見ることも同様」
「悪趣味ねぇ。剣を使ったあなたを相手にするんだからそこそこ真剣に戦ってたのに、あなたは全然本気じゃなかったの?」
ミーシェはそう言われて、振り向いてリリスを見る。
「世界最強の男の師匠が、この程度で戦ってるつもりだと思う?」
「……思わないわね」
神祖の中でもいろいろ『差』というものはある。
その領域において、ミーシェはリリスよりも上だ。
「本気を出してほしくないのはあなたの方。まあ、想定よりも面倒なことを企んでいなかったし、これくらいにしておいてあげる」
そういって、ミーシェは部屋を出ていった。
ライズは溜息を吐いてリリスを見る。
「リリス、私もあなたに対してどうこう言える立場ではありませんから、私も失礼しましょう。私もいろいろ分かりましたので」
そういってライズも部屋を出ていった。
部屋に残されたリリスは、再度、息を吐いた。
「最後にあった時よりもかなり強くなってるわね……私もそのはずなんだけど……」
面倒だ。とても面倒だ。
「アイツに感化されてる部分が多そうね。私の前には姿を現さないのに……朝森秀星。いや、この場合は『ユイカミ』というべきかしら?」
最後に彼女は、秀星の『器の名』を呼んだ。
ほぼ八百話になってくると章ごとの文字数など楽に把握できないので、とりあえず思い出したころにExcelを使って各話の文字数を打ち込んで計算し、大体十万字から十二万字くらいになったころに次の章に行こう。というのが私のこの作品での執筆計画のですが、今日、この章をほぼノープランで書き進めて十万字に到達です。
不味いですね。ダラダラ書きすぎました。




