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第七百八十話

「むうう……お父さん。世界中で神々の発見件数が増えているそうですよ」

「みたいだなぁ……」


 アトムがどれほどのコネと金を使ったのかは不明だが、地上波の政府関連の放送で、世界中で発生している情報が発信されている。

 魔法次官という、魔法省のナンバーツーであるアトム。

 年齢を考えるとまだ成人したばかりのはずだが、利権渦巻く魑魅魍魎の裏魔戦士社会を生き抜いてきただけあって言葉の選び方は完璧だ。

 加えて、アトム自身は青い髪を切りそろえたなかなか派手な男だが、抜群のイケメンであり、なかなか似合っているのだ。

 加えて、『頤核(おとがいあとむ)』というキラキラネームだが、それを気に入り、何の躊躇もなく名乗るその精神も話題性がある。


 少なくとも魔法省の内部で、アトムを若造だとか青二才だとか、侮った表現をするものはいない。

 そんなアトムの発言によって多くの情報が出ている。

 ちなみに、『大臣はメディアに出てこないの?』という返答に関しては、六十を超えたおっさんよりもまだ二十代の若いイケメンの方がいいと思うものが多かった。というだけのことだ。他意はない。


「アトムがいろいろ情報を出してるけど、確かに世界中で発生してるな……」


 一応、秀星が決めた地点に誘導する機能が消えているわけではない。

 だが、それらの存在を感知して無視するものはいる。

 準備期間を考慮すると、おそらくユウギリが何かしら影響していると思われる。

 というより、準備時間を考えると、そもそもユウギリがやってきたタイミングが早すぎるのだ。

 天界に追い返したわけだが、おそらく帰ってきたユウギリを見て、何かを感じ取る者はいたのだろう。

 最高神というものは天界という強大な社会のトップに君臨する者たちである。

 社会という形態において最も重要なのは情報収集だ。当然、ユウギリに関する情報を手に入れているものは多いだろう。


 そんな神々が、秀星が作った機能を無視した行動をとったとしても不思議なことは何もない。


「対応できてるのか?」

「そうみたいですね。セフィアさんは、『本当に強い第一世代型の神が来ていないから対応できている』という声もあります」

「……なるほど」


 第二世代型が相手ならば少々面倒なことになるのは避けられない。

 実際、沖野宮高校を攻めてきた神々の中でも、ユウギリに関しては秀星自身がどうにかした。

 第二世代型は、神の名を得る。という一点のみを除いてすべて達成した存在である。

 秀星でしか対応できないだろう。

 第二世代型の最高神……身近な人間でいうと自分の母親が該当するわけだが、あまり比較できない。


「ふーむ……」


 ちなみに、『第二世代型を楽に撃退する』となると秀星くらいの実力が必要になるが、それ相応に本気になって追っ払うことだけを考えればそう難しくもないのだ。

 加えて、たとえ来たとしても第三世代型がほとんどだろう。

 こちらは命名神の負荷が強いタイプである。

 正直強いというわけではない。

 実際、沖野宮高校の生徒たちは、日本の魔法学校の生徒として高い実力を持っているが、何年もプロとして活動している人たちと比べて特別強いというわけではない。

 一部例外はいることは認めるが。


 そういう事情を考えれば、おそらく多少の神が調子に乗ったところで撃退は可能なのだろう。


「そういえば時々気になってるんですけど、この前攻めてきた最高神の皆さん。あまり戦闘経験がないように見えたんですけど、実際、神々ってあまり戦ってないんですかね?」

「……まあ、先輩の神の指導方法にもよるだろうけどな。ぶっちゃけ、戦わずに内政ばかり学んでるやつもいるだろうし」


 内政とはいうが、多くの場合は汚職かもしれない。

 ……というかラターグがそういっていた。

 それを考えるとなんだか救いようのない話に思えてくるのは気のせいではないだろう。とても人間らしいのでそれを変えようとは思わないが。


「むうう……でも、戦っている人もいるんですよね」

「ああ。ただ、戦うといっても、『神々のスペックでごり押しする』ってやつも普通にいる。さすがにそれを戦闘経験とは言わないだろう」

「そうですね。何かと言われれば弱い者いじめだと思います」

「そういうことだ。で、そういうことしかしてない奴らが、スペック差はどうあれ、しっかりと経験を積んだ奴らに挑んだとして勝てるわけがない」

「……確かにそうですね」


 難しい話など何もない。

 ただ、経験を積んでいないものは、戦ってきたものに比べて動きが鈍いことに変わりはない。


「しかもそういう奴に限って、『自動で体を動かしてくれるアイテム』って作らないんだよな。かなり謎なんだが」

「神器の性能で『自動防御』ということですね。確かにスペックを考えるととても堅そうです」

「まあ、基本的に神々は自分用に神器を作るときは、自分がつかさどる概念にかかわるものか、もしくは武器しか作らないからな」

「そうなんですか?」

「というより、神々っていうのは神器を作るときに『効果』と『使用制限』を決められるが、使用制限に関しては『意図していることが同じもの』を作ることができない」

「?」

「まず、そもそも神器っていうのは作った神々本人ですら使えないのが基本だ。だが、使用制限として自分が当てはまるように設定すればその神器を使うことはできる。ただ、意図していることが同じもの……要するに、『自分が装備できる』という意図がある神器を二つ以上作ることはできないんだ。加えて、特定の誰かが装備できるような意図を制限の項目に設定する場合、二人以上の人間を同時に指定することはできない」


 このルールがあるからこそ、同じ神が作った神器『のみ』を複数個使用するということに対してボーナスが設定されているのだ。

 神器を使用する場合、魔力が増える。

 下位神なら十倍、上位神なら百倍、最高神なら千倍になる。ただ、一人の神が作った神器を複数個使う場合、この計算が重複して行われるのだ。そうでない場合は、その使っている本人の本来の魔力量を軸にして計算される。

 仮に別々の最高神の神器を使っている場合は魔力量が二千倍になるが、一人の最高神が作った神器を二つ使っている場合、千の二乗で百万倍になる。ということだ。

 下位神である創造神ゼツヤの神器を十個使用する秀星の魔力量は、本来の魔力量の百億倍になるのだ。

 アイテムマスターが最強クラスのスキルである一つの『事情』である。


「お、おお……む?でも、人数が集まれば解決できますよね?AさんとBさんとCさんがいたとして、Aさんが三人分、Bさんも三人分、Cさんも三人分。といった形で作っていけば、三人とも三つずつ神器を使えるようになりますよ?」

「その通りだ。まあ……神器のコアってものすごく高額だから、三人で九つを購入できるコミュニティはほぼないと思うんだが……」

「お父さんは買えますか?」

「無理」


 神ではない秀星に神器を作ることはできない。

 というより、『どの神によって作られたのか』が明確に定められているのが神器の根本的な部分である。

 神ではないというより、『神としての名を持たない』秀星には作れない。といった方が正しいだろう。

 ただ、仮に何らかの形で神器を作ることができたとしても、そもそも秀星の資金力ではコアを買うことはできない。


「ただ、大型のコミュニティなら、少なくとも『傘下となった神々に対して、上層部専用の神器を作らせる』ということは可能だろう。まあ神器の数がインフレする原因でもあるが、別にこれはルール違反じゃないからな。天界に行ったときに図書館に入ったことがあるが、ゼツヤがが神器のコアを作る以前の天界って、二十一世紀初頭……要するに今の地球と文明力がほぼ変わらないらしいし」

「なるほどです」

「で、一回負けるたびに一個取られるんじゃなくて、一度負けたら根こそぎ奪われるから、『大量の最高神の神器』が一度のコミュニティから消滅する。まあ、正直やってられんわな」

「事情は何となく分かりました。お父さんが考えている最悪って何ですか?」

「……ひどく俺個人の話になるが、俺が使ってる神器って全部下位神である創造神ゼツヤが作った物なんだよ。ただ……もし今ゼツヤが最高神に昇格したら、俺も狙われるんだよね……」


 神々の名前の格は『どのように登録されているか』が重要である。

 そのため、仮に今ゼツヤが最高神に昇格した場合、秀星が使っているすべての神器が『最高神の神器』というカテゴリになる。

 そうなると、強硬派が競っている神器収集ゲームに参加しなければならない。

 これはめんどくさい。

 もちろんメリットはある。

 魔力量が秀星本来の魔力量の『千の十乗倍』となるのだ。ゼロの数が三十個である。

 百億はゼロが十個であることを考えると、けた違いとかそういう領域をはるかに超えた話だ。


「さすがにそれは面倒だ。だから……ゼツヤを昇格させようと暗躍してるやつがいたら全力で止めるよ俺」

「なるほど。よくわかりました」


 というわけである。

 裏からではあるが自分からかかわっていく必要があるのだ。しかも昇格妨害というなんとも悪い意味しか宿らないことである。


 ……正直、テンションは上がらない。

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