第七百七十九話
地球にいる状態で、天界の状態を詳しく知る方法はない。
秀星の懸賞金を狙って性懲りもなく自分からペラペラしゃべりだす人間関係の中で、どれほどの影響が出ているのかをある程度把握することはできても、完全とはいかないだろう。
天界というのは社会であり多くの神々が存在するため、多少の神が地球にやってきたとしてもあまり変化はない。
だが、一つの指標のようなものはある。
「……」
リオ先生の表情がだんだん優れなくなっていくのだ。
天界にいる神よりも上位の存在から攻められないようにするために成長することが必要で、それを個人レベルで行うのではなく天界全体で行うべきだという主張を持っていたギラードル。
神祖が攻めてきて神器を奪われて、天界に存在する裏とも呼べる権力構造はかなり弱弱しいものになっている。
で、その影響がギラードルに出ているわけではないと思うが、なんだか落ち込んでいるような雰囲気だ。
地球にいても天界のことを認識することはたやすいのだろう。
天界にいた最高神たちが傲慢でいられたのは、創造神ゼツヤが作った神器というシステム……いや、ゲームに参加していただけなのだということに気が付いた部分もある。
多くの最高神が、自らの権力と影響力を維持できていたのは神器を所有していたから。言い換えれば、彼らの権力は、神器に依存したものだったということになる。
「……表情が優れないな。リオ先生」
「まあ、そうなるのも当然ですよ」
放課後。
屋上のベンチでぐったりしていたリオ先生を見つけて、秀星は溜息を吐きながら話していた。
自分たちよりも上の存在が攻めてきたという意味では確かにそうなのだが、神器に関してこれほど依存していたというのは想定外だった。
「神祖云々っていうのも確かにあるけど、神器に依存してたからこうなってるって結論か」
「そんなところです。まあ何と言いますか……自分が構造を理解していないものに依存するということが一体どういうことなのか。それが彼らにはわかっていなかったのでしょうね……」
「だろうな」
「私も神器は使いますが、手段の一つとしてとらえているつもりです」
「……」
「……同意してくれないのですか?」
「あまりできないな」
依存していないという感覚というのはひどく主観的なものだ。
実際はそれがなければ生きていけないような状態に周りがなっている可能性だってある。
「先生は今は神器を使ってないけど、有事の際は使うだろ。で、『有事の際に使われる』ってことは依存してるのとあまり変わらんよ」
「まあ、それを言われるとつらいですけどね」
溜息を吐くリオ先生。
「正直、神器というゲームにここまでの影響があるとは思っていなかった。というのは誤算ですね。まさか神祖が狙うほどのアイテムだとは……」
「まあゲーム感覚で奪ってるだろうし、神器っていうのは使用制限がかなりエグイから、神祖にも使うことはできないだろうけどな」
「それはそうですね」
ダラダラと話している秀星とリオ。
だが、二人としても、神祖が何を考えているのかはわからない。
ただ……きっと暇なのだろうな。と思う。
おそらく神器を集めることにしたって、ほぼ何も考えていない結果のはずだ。
彼らはこの神器が存在する中で行われるゲームすら、楽しいとは考えていないのだろう。
天界の最高神に限って不利益が多いだけなのである。




