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第七百七十八話

 神の中にもポンコツはいる。

 所詮人間の限界である以上仕方のないことではあるのだが、残念なことでもある。

 ちなみに、シャイガは秀星の懸賞金を狙って襲ってきた可能性があるのだが、そもそもあの手配書。出しているのは誰なのだろうか。

 ユウギリが見せてきた手配書をチラ見した限りでは、デッドオアアライブ……生死問わずだったので、秀星の死体そのものを持ってくるか、生け捕りにせよ。ということなのだろう。

 ……なんだか自己再生とか死亡後の自己蘇生を普通にやってしまいそうな状態に至っているので、ぶっちゃけ生け捕り一択になると思われる。


 殺した後でも、特別な処置を施せば、魂は肉体に宿り続ける。

 そしてその魂の方でいろいろ魔法を使えば、普通に蘇生できるのだ。

 言い換えれば幽霊の状態でも魔法を使えるということなのだが、まあこればかりは技術的に困難なので誰かに教えるつもりは毛頭ない。死に対する冒涜というわけではなく、単純に前提と感覚が普通の人間と大幅に異なりすぎて、受け入れることそのものがゲロ吐くほど面倒なのだ。

 死後に天界に行って転生の処理を受けたものは、死後に行われる魂の感覚というものをある程度掴んでいる場合もあるが、あまり地上から天界に干渉するようなことをすると怒られる。


 魂の考え方はいろいろあるが、深く追及しても答えは出ないので手配書の話に戻ろう。

 たとえゴールが死であったとしても、秀星が相手だと大した意味はない。

 これは要するに、『秀星を殺せるほどの実力を示せるかどうか』ということになる。

 その後に蘇生することそのものは関係ないのだ。まあ秀星だって大した意味もなく死にたくはないし。

 ……ただ、シャイガは強硬派の神祖である。

 これは言い換えれば、手配書を出したのは強硬派の神祖ではないともいえる。

 基本的に最高神の神器を奪うことが競争手段だとしても、秀星は大幅に別枠扱いだと思われるが、いずれにせよ秀星はほぼ無関係だろう。

 もちろん、イレギュラーな思考をする神祖がいても不思議ではないし、そういった神祖が向かって来たときのために対策しているわけだ。


 屋根の油と窓付近の鉄の棒の高圧電流に関しては純粋に椿の後片付けの問題だ。

 ……秀星も時々窓枠につかまったり、屋根の上を走ったり跳ねたりする。

 同業者に迷惑が掛からないようにしっかり後片付けをすることを教えておくべきだろう。というか何をやっていたのだろうか。最近理解不能になるパターンが多すぎて、きちんと関われていない気がする。

 油と電流だし、何かの実験だろうか。秀星には効かないのだが、それでもあるよりはない方が何となく気持ちが楽なのでそちらが優先だ。後片付けはしっかりしておこう。敷地の中でもね。


 閑話休題するが、手配書は一体誰が出したのだろうか。

 強硬派は神祖の中でもかなりの数が集まっていると思われる。

 でなければ、巨大な社会を形成している最高神たちに対して影響が大きいとは思えない。

 正直、今まであった神祖たちとは全く関係のないところからきている可能性もあるのだ。候補を絞ることができない。


 ……正直、神が相手だとし、狙われる心当たりがあるかどうかと言われるとものすごくある。

 まだ悪いことがばれてないだけなのだ。もちろん全知神レルクスにはバレているが。


 ただ、秀星を別枠として取り入れようという判断を下せるだけの情報力があること、そして、秀星がゲームの中に入ってくると、面白いことになると期待している者の可能性が高いだろう。

 神々にとっては大体のことは茶番である。

 というか茶番じゃなかったら次元が終わる。


 なら、茶番にするとしてももう少しやりがいがあった方がいい。

 そんなエクストラステージっぽい感じなのだ。


(……ていうか実際、神祖が相手じゃなかったけど、そういう感じで巻き込まれるのが実体験なんだよな)


 嫌な思い出である。一番かかわったのはもちろん師匠のミーシェだ。

 ああ見えて口が弱いので秀星もいろいろ巻き込まれたものである。

 秀星を討伐することに謎の報酬を設定し、そして裏で『アッハッハ!手配書見て目の色かいて挑んでやんの!お前ら如きに勝てるわけないじゃん!』みたいなバカ騒ぎをして喜んでいるやつが昔いたので嫌なのである。


「まあ実際、どうなっているのか調べるのは重要か」


 今も天界は神祖によって攻められているのだが、神器以外はどうでもいいので、思ったよりも上位神や下位神が力を残したままだ。

 結構頑張る必要はあるが、速度重視で活動すれば天界のルールの一部を変えることくらいはできるだろう。


 その変化が見たくて強硬派は現在競走中なのかもしれない。


「俺をゲームに巻き込ませたいって考えてるやつか……まあでも正直、もしかしたらあるかもしれない隙をついて俺の情報を集めた奴がいるとしても、多分俺は分からんからな」


 神祖にもポンコツはいるが、やたら強いやつもいる。


(ただ、師匠が言うには、パライドは俺の排除ではなく、俺が持っている技術などを俺に使わせるために観察するべきだって言ってたみたいだし……候補には上がるか)


 ライズの脳を支配していた寄生神祖パライド。

 いまいち何を考えているのかわからないのは彼も同じだ。

 とりあえず候補に挙げておくとしよう。


「お父さん。なんで数学的帰納法はあるのに、数学的演繹法はないんですか?」

「えーと……演繹法って、前提となる事柄をもとに、そこから確実に言える結論を導き出す推論法のことだろ?数学っていうのはまずセオリー……公約……まあそもそも前提みたいなのを設定するんだ。1+1が2になるのも前提があるからだな。数学そのものが演繹法だから、数学的演繹法っていう考えはないんだよ」


 我が娘ながら何に興味を持つかわからないものである。

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