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第六百九十一話

「高校生活。とても楽しいです!」


 とりあえず一日終了。

 特に何かが起こるわけでもなく、椿は一日中笑顔だった。


「沖野宮高校の生徒の皆さんは優しいですね!」

「ソーデスネ」


 片言になっている秀星。

 まあ実際のところ、学校にいる生徒全員の性格がいいということはありえない。

 ではどういうことなのかというと、その『悪い部分』を発揮されると面倒だと判断した秀星がいろいろ実力を見せつけたり、マスコット・セフィアで制裁したりして抑え込んでいるのだ。監視カメラがない部分であってもマスコット・セフィアはいつも見守っているので問題はない。

 ついでにいうと、マスコット・セフィアの数は全校生徒の五倍以上だ。明らかに過剰供給である。


 そういうわけで、椿はそういう悪い部分を見ていないだけだ。

 まあそもそも、秀星の娘だという椿に対して余計なことができるものはほぼいないというのも事実ではあるが。


「授業もすごくわかりやすくて、先生のみなさんも私の質問にすべて答えてくれました!」

「椿が先生に聞いてたこと、教科書に全部書いてることだからね」

「!?」


 驚愕する椿。

 まあ、その程度の穴があるような教科書ではないのだ。

 秀星は教科書を作り、おまけに魔法学校の指導要領を決める側だ。流石にそこまで視野を狭く作っていない。


「フフッ。椿ちゃん楽しそうね」


 そう言いながら椿の頭を撫でる風香。


「とても楽しいです!あと、高校の制服を着て、こうして授業を受けていると、やっぱりお母さんすごく若いだだだだだ!」


 イラッとしたのか、手に力を入れて強烈な握力で頭を掴む風香。


「フフフ。椿ちゃん。いくら過去に来ているからと言って、そんなことを言っちゃだめよ♪」

「はい!ごめんなさい!」


 というわけで開放された。


「おううう……凄まじい力です。未来だといろいろな面からお父さんを手のひらの上で転がしていますが、この頃からすごいですね!」

「未来の風香ってそんなに強いの?」


 ちょっと驚いた秀星だが……。


(……あ、そうだ。嫁と姑が手を組んでるわ。勝てるわけねえ……)


 夫婦という戦場では、双方にしっかりした羞恥心が備わっている場合、本来の実力云々はガンスルーして展開される。

 そんなときに嫁と姑が手を組んでいるのはヤバイ。


「楽しかった授業ってある?」

「もちろん実技ですね!モンスターを倒すの楽しいです!」


 満面の笑みを浮かべて答える椿。

 特に珍しさのない意見だが、そんなことを気にするような親ではない。


「未来の授業ってどんな感じなんだ?」

「あまり変わってないですね。優秀な鑑定スキルを持っている人が一定数いるので、担任教師は全クラスにいますし。あと、リオ先生が未来では沖野宮高校では生きる伝説的な教師になってますよ」

「あ、結構長いな」


 考えていることは間違えているが言っていることは間違っていない不思議な言語能力を持っているリオ先生。

 言っていることは間違っていないので、生徒たちもしっかり育つのだろう。

 内心で何を考えているのかわからないので、アトムたちもリオの意見を考慮した資料は作っていないようだが、リオの指導能力は高い。

 というか、普通の人間レベルだと、ちょっとしたコツを教えるだけで『!?』となるようなことが数多くあるのだ。

 それらの『コツ』は多くはないそうだが。


「あと、未来でも皆とっても優しいですよ!」


 そう言って笑顔になる椿。


「まあ、そうだろうね」


 椿はパーソナルスペースがすごく狭い。

 好奇心と素直さがマックスの瞳でグイグイ迫っていくのだ。

 勘違いさせることもありそうだが、周りから守られて生きているのだろう。


 とても、愛されやすい体質である。


「あと、沖野宮高校は宿題がないんですね」

「ダンジョンに行ってモンスターを討伐して、何かを持って帰ってきたほうが学校にとっても得だからな。未来ではどうなんだ?」

「未来ではそのノルマも消失してますね」

「そうなのか?」

「はい。アイテムの保存性能が今よりも格段に上がっているので、ものが減りにくい状態なのです。そのため、魔戦士……未来では冒険者と言っていますが、ダンジョンに潜るのはすごく強い人が挑戦として潜るくらいですね。かなりエンターテイメントみたいな感じになってます」

「あー。なるほどね」


 道具の方の性能も上がっている。

 当然のことだろう。


「というわけで、放課後は学校近くのダンジョンに行きます!」

「おー。元気だなぁ」


 ずっと笑顔の椿。

 本当……何をどうすればこんな風に育つのだろうか。不思議である。

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