第六百十七話
ドラゴンは基本的に強い種族である。
口からはブレス、圧倒的な膂力によりもたらされる爪での攻撃。
ありとあらゆるものを防ぐ鱗に、頑丈な皮膚。
制空権を支配する翼に、圧倒的な速度を長期間生み出せる尋常ではない体力。
攻撃、防御、体力、機動力、全てを兼ね備えたものである。
そのため、神聖国の主力部隊であるとともに、最終手段である。
要するに、『真の兵器』はまた別にあるということだ。
「お父さん。なんだかすごいことになってますよ」
ユイカミに待機していた六人は、神聖国が攻めてくる北側に集結していた。
砦のようなものが建設されており、そこから広範囲を見渡せるようになっている。
「聖竜騎士団がトップだと思ってたけど……まさか、もう一段階上のドラゴンたちがやってくるとは……性懲りもないというか……」
「まあ、要するに『ドラゴンを隷属させることにたけている国家』ともいえるってことだね」
星乃が苦笑しながらそういっている横で、風香は簡単に考えてたどり着いた答えを口にする。
「まあ、どうでもいいのさ!所詮ドラゴンなんて、翼がついてちょっと炎を口から出すトカゲみたいなもんだからな!」
「そうだぜ皆。オレたちからすれば大したもんじゃねえよ!」
バカ二人はいつも通りだ。
……というより、いつも通りじゃないやつがいないともいえるが、これに関しては剣の精鋭の頭がおかしいというだけの話なので放置する。
「ちょっと前に来た騎士団が乗っていたドラゴンは大体全長十メートルくらいだったかな。今回は倍の二十メートルになってるけど……まあ、あまり変わりはないか」
秀星は特に何も表情を変えずにそういった。
というより、『単純にちょっと大きくなっただけ』では、秀星は本当に何も思わないのだ。
やろうと思えば、一秒で数千、数万の魔法を同時、連続で使用するのが秀星の本気スタイルである。
ありとあらゆる手段を使い、何が効いて何が効いていないのかを全て鑑定魔法で調べ上げて、そして判断した弱点をただ純粋に突いていく。
秀星の場合、『それができれば苦労しない』と言える手段はほぼすべてやってくると思っても何も問題ないのだ。
頭のネジが外れている。
「ちょっと驚かせてみるか」
秀星は指をパチンと鳴らす。
秀星の頭上に巨大な魔法陣が出現して、隕石の雨が降ってきた。
ドラゴンたちは驚愕。
……実はすべて幻影なので、彼らを全て避けて地面に落下している。
もちろん、幻惑だと思っていないドラゴンたちも、そしてその上にいる竜騎士たちも盛大に驚いているので、必死になって逃げているが。
「しっかり魔法陣も見せてやったのに幻惑魔法だってわかるやつはいないみたいだな」
「だな。オレも隕石を見た瞬間にわかったぜ」
来夏が頷く。
どこに何があるのかが一瞬で判断できる『悪魔の瞳』を持っている来夏。
隕石があるはずの場所に『何もなかった』ため、すべて幻影だと分かったのだろう。
「……なんだろう。これを繰り返してるだけでなんか向こうが勝手に衰弱して勝てそうなんだが」
「さすがにそこまで馬鹿じゃないと思いたいなぁ……」
星乃が苦笑する。
「さて、ま、適当に待つか」
秀星はゆったりモードに入ることにした。




