第六百六話
基樹たちが魔族領土で情報を集めているころ。
秀星たちは情報収集が終わって、今後の方針を決めていた。
議長が来夏と高志という状態で。
……最初に言っておくべきことがあるとするなら、『剣の精鋭』というチームでは、こうした会議はよく開かれる。
来夏曰く、『そのほうが楽しそうじゃねえか!』とのこと。
正直時間の無駄なのだが、やらないと後でうるさいので会議は開かれる。
そして、この会議なのだが、基本的に多数決で決まるこの会議がちょっと票数が妙なことになる。
基樹、美奈、天理の三人が魔族領土に行っているので会議に加われないのだが、高志、椿、星乃が票を出せるので、人数は十三人で変わりはない。
で、その会議の結果なのだが。
「よし!『ユイカミが神聖国を相手にし始めているから、それに乗っかって暴れる大作戦!』に決まったぞ!」
「おおおおおおおおお!」
「いえええええええい!」
会議が決定したことを発言したのは、議長である来夏。
そして、それに賛成の雄たけびを上げたのは、高志と椿である。
椿はおじいちゃん子だった。
「父さん」
「なんだ?」
秀星の隣に座っていた星乃が苦笑しながら話してくる。
「二十年前からこうなんですね」
「二十年後もこうだってこと暴露してほしくなかった」
「どうにかならないんですか?」
「自分の選択の意味をしっかり考えてからそういうことを言え」
星乃が苦笑しているといったが、実をいうと秀星も苦笑している。
今回の会議の結果決まったのは、『ユイカミが神聖国を相手にし始めているから、それに乗っかって暴れる大作戦!』という無駄に長いだけでそのままとしか言いようがないものだが、あくまでも『これからの方針』というだけの話である。
その票数だが、内容はこのようになっている。
賛成 三票
棄権 十票
これが真実である。
賛成票は来夏、高志、椿の三人である。
これが剣の精鋭の真実である。
多数決というのは少数意見の弾圧がみられることが欠点といわれるが、そんなことは剣の精鋭には存在しない。
ちなみに、これは秀星が入る前の五人組だった時からこんな感じである。羽計から愚痴られた。
「で、神聖国をどうにかしようとしてるっていうのはヴィーリアたちが言ってたけどさ。まだ隠してるから俺たちまだ表立って動くことができないと思うんだが……」
会議終了後。
来夏と高志が何かを企んでいるようでたぶん何も考えていないであろうことを確信しながら、秀星は聞いてみることにした。
「しばらくは自由行動だが、わかっていないな秀星」
「何を?」
「こういうのは敵がちゃんと罠を作って、向こうが準備万端になったときに攻めるのが一番楽しいんだ」
「もしくは本当にどうでもいい時に乱入するのがいいのさ」
「……要するに、全然決めてないんだな」
そういうとグッドサインを出してくるあたり、どうやら本当に何も考えていないらしい。
「当たり前だろ。俺たちに台本なんて必要ないのさ!」
「そうだぜ秀星!オレたちが台本通りに動けるわけないんだからな!」
そして宣言してくるバカ二人。
椿がいたらまだなんとか和むと思うのだが、この二人がなんかいろいろ言っても無駄な気がする。
「まあ、とにかく、ノープランで、面白い話に全力で乗っていこうという方針なのは分かった」
「そう、その通りだ!」
「よくわかってるな!秀星!」
秀星は仏壇から鈴を持ってきてチーンと鳴らしたくなってきた。
いつものことだが。
「俺たちはちょっとカジノに行ってくるぜ!」
というわけで、二人はカジノに向かった。
……他国の。




