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第五百九十九話

「さて、モンスターの発見数が多い場所をマップで調べる必要があるんだが……これに関しては自分たちで見た方がいいだろうな」

「そうですね。貴族の皆さんが平気で誤魔化すので」

「そうなの?」

「貴族に渡す予算は上限が決まってるんですけど。モンスター討伐費として特別予算を組むっていうルールがあるので、それを利用して多く見積もった数のモンスターを平気で記載してくるんですよね」

「……」


 ノウハウがないまま大きくなった国の悲惨な現状である。


「まあとりあえず、俺の方でも偵察機を飛ばしてみるか」

「あまりとんでもないものは出さないでくださいね。あとで常識を合わせるの苦労するので」

「フッフッフ……無理な相談だな」


 あくどい笑みを浮かべる秀星。

 ただし、そもそも秀星は『常識』や『基準』といった、本来はその世界で暮らしてみなければわからないものを『鑑定』できるので、本来は『知らなかった』とは絶対に言えないのだ。


「……一つ聞いていいですか?」

「なんだ?」

「秀星さんって悪いことだと分かっていてもするタイプの人ですか?」

「それによって嫌がらせができるのなら喜んで」

「……」


 アルトは溜息を吐いた。


「まあとりあえず、俺はいろいろと探ってみるよ」

「はい。どのみち、国の中で強力なモンスターがいて、それが別の場所から送られてきたものだとしたら倒す必要がありますからね」


 基本的に外来種に天敵がいなかったら生態系が狂うだろう。

 ……来夏や高志という外来種に天敵がいるとは思えないが、そこは置いておこうか。

 しかも、圧倒的な魔力を抱えている存在が、魔力量の調節として放出するモンスターなので、当然今のグリモアの基準で言えばそれ相応に強いはず。

 ただ、思ったよりユイカミの内部には余裕があるので、致命的なモンスターの出現はないようだが、無視するのは無理がある。


「では、僕は資料をまとめますので、また明日」

「ああ……昨日もやってたよな。毎日やるのか?」

「毎晩、元メンバーで集まって会議をするんですよ。冒険者のチームとして活動していた時からずっとですね。遠征中のメンバーに関しては通信用の魔道具を与えるほどですから」

「その魔道具って何個あるんだ?」

「一個ですね」

「二か所以上の遠征で、アルトが行くってなったときは絶対に持たされただろ」

「そうですね。なんでわかったんですか?」

「……」


 秀星としては、『君がヴィーリアからもらったバッジに描かれてたのが『青いエゾギク』だったからなんだけどな』と思ったが、詳しいことは語らないことにした。

 アルト本人にそれを説明するのはちょっと抵抗がある。


「判断材料があったとだけ言っておく」

「そうですか……まあ、僕は資料を作りに行きますので」

「ああ」


 そしてアルトが部屋から出ていこうとした時だった。


「アルト様。秀星様」

「ん?」


 親衛隊の一人だろうか。

 全身甲冑にフルフェイスという、若い男性の声以外に特徴がほぼない人が入ってきた。


「どうしたんですか?」

「あの……秀星様の娘を名乗るものが現れたのです」

「……」

「え?……秀星さんって、十七歳ですよね」


 今の実年齢は二十二歳なのだが、地球にあるデータ上では確かに十七である。


「……まあ、俺だからな。いろいろあるんだよ」

「まさか……すでに養子をとっているとか?」


 意外と現実的な意見が帰ってきた。


「いや、そういう感じじゃないんだが……」


 秀星はどう説明しようかと思ったが、甲冑装備の男性が『え、どうすればいいの?』という視線を向けてきているような感じがしたので、そっちを話すことにした。


「で。その子だけどさ」

「はい」

「元気いっぱいでアホそうだった?」

「そうですね」


 即答されてる……。


「いや、どんな子なんですか?」


 アルトに白けた目を向けられる秀星だが、こればかりは仕方がない。


「で。今どうしてるの?」

「その……悪意が全く感じられなかったので、とりあえず応接室でメイドに餌付けさせてます」

「……」


 どうやら何も疑わずにホイホイついていった様子だ。

 秀星は『うーん……とても引っ掛かりそうだな!』と考えて、『てことはやっぱり来ちゃったのかあの子』となった。


「とりあえず会っておこうか。あんまり目を離すと何を始めるかわからんし……」

「そんなにすごい人なんですか?」

「いやその、人の黒い部分を知らないっていうか……周りにいる人みんなに愛されて育ってるみたいだから、『みんな大好き』なんだよ」

「なんだかすごい人ですね」

「だよな。何がどうなるとそんなことになるのやら……あ、応接室に案内してくれる?」

「はい」


 とりあえずその応接室に行ってみることにした秀星。

 なぜいるのか一応聞いておかないと後でまずいことになる気がするのだ。

 未来との数少ない接点なので。

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