第五百九十八話
「うーん……増えてるな」
「増えてますね」
データをもらってきた秀星とアルトだが、そのデータを見る限り、着々と『強力なモンスターの出現』は増えていた。
もちろん、強力なモンスターと言っても秀星やアルトなら普通に倒せるものの、一般的な戦闘力を考えると被害は大きいといえる。
親衛隊と、王族が管轄する範囲の騎士団の実力が高いので、有事の際は対応できるが、言い換えれば戦力を各地方に常備するほどの余裕はない。
「こういったモンスターが増えてることに関しては、他国はどういう見解なんだ?」
「神聖国では『災厄が訪れようとしている』といってお布施で儲けているって聞いたことがあります」
「ほー……宗教国家があるんだな」
「はい。この国は西側を帝国、東側を王国に囲まれていますが、国の勢力図をもっと広く見ると、帝国と王国の北側には神聖国があります」
「なるほど……そういえば、この国では神聖国の名前は聞かないな」
「ユイカミにいる幹部が信じているのは秀星さんであって、いるのかどうかもわからない神ではありませんからね」
「ちなみに何の神を信仰してるんだ?」
「ええと……幸福の女神ミレーヌだったと思います」
秀星の記憶が正しければ、その神は今刑務を頑張っている。
ついでに言えば男の筈なのだが……。
「……まあとにかく、その神聖国が『災厄に打ち勝つための資金』として金を巻き上げてるってことか?」
「金だけじゃないですよ」
「ん?」
「金と女と工場と労働力です」
「……よく潰されないな」
「上層部が全員グルですからね」
「あ、そういうことね……」
「自分たちの意にふさわしくない人を見つけ出す実力だけはあるみたいですね。正直クソです」
「本音漏れてるぞ」
「こんなの氷山のかけらにもなりませんよ」
苦労してるなぁ。
「このユイカミって、神聖国にとってはどうなんだ?」
「まあ目障りでしょうね。神を信じよと言っても聞かない上に、技術の進歩だけは凄まじいので」
「これ、神聖国に行けば石を投げられそうだな」
「投げられましたよ」
「外交的に不味くないか?」
「向こうの土地の法律が適用されて何も起こらなかったですよ」
「殺意湧いた?」
「もちろんです。ユイカミに教会の支部を作ろうとしているそうですが、絶対に作らせませんよ。自分勝手なことしかしないのに正義を語る人たちと協力なんて嫌ですし」
「ほー……まあ、俺としては、正義を語ることそのものに反対はないけどな」
「そうなんですか?」
「ああ、その正義を聞こうとは思わんけど。正義を語ろうとすることを止めようとは思わん」
「なるほど。そう考えるコツって何かありますか?」
「んー……特に神を信仰してるところに言えるんだが……神が関わってる場合って、もっとわかりやすいんだよな。神も認められたい訳だし」
「あ、なるほど」
神も認められたいのだ。
だからこそ信用できない。
それだけである。




