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第五百六十五話

「ん?エーベルが秀星君の家にいるって?」

「みたいだな」

「大変じゃないか!」


 ラターグが首を傾げ、秀星は頷き、ライザーは慌てる。


「大丈夫だって。俺に対して敵性を感知したら迎撃するように設定してあるし、セフィアの反応を見る限り緊急ってわけでもなさそうだしな」

「だが、最高神ならば、神器に対して洗脳を行うこともできるのではないか?」

「そっちも対策してるから大丈夫だって」


 秀星は気楽そうな表情でそういった。

 というわけで、自宅に帰る秀星たち。


 自宅に近づくが、『自分が持っている雰囲気』と『周囲の雰囲気』が完全に平等になるよう設定しているのか、秀星から見ても誰かがいるようには全く見えない。


 玄関を開けて、靴を脱いで上がって、リビングに入る。


「へぇ、あんたが平等神エーベルか」


 ラターグの話では『小っちゃくてかわいい子』という表現が多かったのだが……まさにその通りだ


 かわいらしさが抜けない童顔である。

 身長もびっくりするほど低くはないが、中学生と言っても差し支えない。

 そして、水色のショートヘアをツインテールにしており、やはり知的さというよりはかわいらしさの方が高いか。

 着ている服は白い法衣のようなもので、ところどころ水色のラインが入っている。

 胸はとても貧相だったが……。


(なるほど、ラターグが『小っちゃくてかわいい子』って言ってた理由がよくわかる)


 秀星は内心でそんなことを思った。


「……なあライザー」

「なんだ?」

「この人。お前の派閥の頂点なんだよな」

「ああ」

「お前……ロリコンなのか?」


 次の瞬間、氷でできた槍のようなものが秀星の頭の位置に放たれていたので、しゃがんで回避。


「グホア!」


 そしてその槍はラターグの額に直撃した。

 『いつつ……』と悶絶してはいるものの大してダメージはないようだ。


「私は歴とした女性です。ロリ扱いはしないように」

「あの、まず僕に誤爆したことは謝ってくれないの?」

「はい」

「はいって……」


 不憫な神である。


「あ、あの……エーベル様……」

「ライザー。あなたが私の元を離れていったことに対して、咎めるつもりはありません」

「え?」

「もともと、あなたが朝森秀星にあった時点で、何かしら変化が起こるであろうことは分かっていました。もともと計画していたことです」

「……エーベルちゃんってそういうことを考える子だったかな?」

「師匠。最近の流行を知らないのですか?」


 エーベルがラターグのことを『師匠』と呼んだことに対して、秀星としては『こいつが誰かを弟子に取ることが必要なのか。世も末だな』と考えていた。


「流行?」

「簡単に言えば、神の間引き手段のようなものです。わざと自分の派閥の参加規制を緩めて、あとは、嘘ではなく勘違いさせる形で悪事を働かせ、それをとらえて矯正所送りにしたり、裁判により刑罰を与えるのです」

「要するにマッチポンプか」

「はい」


 秀星は『まあ、神なんて人間が名をもらっただけなんだし、そりゃ人間と同じようなことを考えるわな』と納得した。

 ライザーは驚いているようだが。


「そ、そんなことが……」

「ライザー。あなたに関しては、朝森秀星の資料をあなたの両親に送って、会わせてやってほしいという依頼を実際に受けて考えた」

「お、お父様とお母様が……」

「なるほど、で、エーベルから派閥への誘いがあったわけか。で、ロリコンのライザーはほいほいついていったわけだな」

「そ、そうだ!何か悪いか!おぐっ!」


 腹の中央にバスケットボールくらいの氷の塊が直撃し、そのまま後ろに吹っ飛ぶライザー。

 本人を目の前にして馬鹿な男である。


「マッチポンプでの間引きかぁ……昔から何回か流行がぶり返してるね。あまりとられない手段なんだけど」

「そうなのか?」

「結果的に、その悪事の被害を受けるのは下界の一般人だからね。この地球をその悪事を働かせる場所として選んだことで秀星君や僕が対応してたけど、結果的に、かなりの数の神に対して、印象が悪くなったでしょ」

「まあ、そうだな」

「この方法は、まともな神が下界に来ずに、悪事を働く神ばかりが来るから、『全体的に神は厄介な存在』って思われるんだよね。まあ、別に僕らは信仰してほしいわけじゃないし、そもそも世界なんてたくさんあるから、一つの世界に対して執着があるわけじゃないけど、悪事の調整をミスったら何が起こるがわからないからね」

「まあ、言われてみれば」


 秀星も納得。


「それにしても、今頃裁判所は大騒ぎだろうなぁ。エーベルちゃんも、管理責任云々は今回は適用されないにしても、かなりの金を使ってるでしょ」

「請求額が想定の三桁違った」

「ハッハッハ!読みが甘いねぇエーベルちゃん」

「……師匠はそのあたりのことを教えてくれなかったから、師匠が悪い」

「別にそれでもかまわないけどね」

「それにしても、裁判ねぇ……」


 天界にも裁判所はある。

 というより、裁くことができない権限は放置しても、百害あって一利なしだ。

 完全に任せることができる『市場』を作るためには政府の介入が必要であることと理由はほぼ変わらない。


「秀星君は、天界の裁判でどのような判決があるか知ってる?」

「その手の本を多少読んだ程度だが、神同士でやりすぎた場合は、基本的に刑務所で何かを作ったりするんだったな。で、人間に対してやりすぎた場合……『今までにやった悪いことを全て、被害者側で追体験する』だったか?」

「そういうこと。例えば人を百人殺した場合、追体験装置で百回殺されるのさ。千人の人間を拷問した場合、千人分の拷問を追体験するのさ。痛みとかは全部発生する状態でね」

「俺はそれを見た時、『性犯罪ってどんな風になるんだ?』って考えたことがあるけど」

「あ。その場合、追体験装置がその神を性転換させるだけだよ」

「そんな簡単な話なのかね?」

「追体験装置が『一度、神を性転換させたうえで、女性としてまっとうな人生を送らせて、女性が生きる上での普通の感覚を教える』っていう手順を踏むんだ。その後に性犯罪の追体験だから、結構効くよ」

「……そうか」


 天界は贖罪も残酷である。


「で、エーベルちゃんが姿を見せたってことは、言い換えれば『刑務所にぶち込みたい神はもういなくなった』ってことかな?」

「その通り」

「なら一つ質問。なんで電気神アルゼンがいたのかな?」


 その名前を出すと、エーベルは眉を寄せた。


「私は、彼に会ったことすらない」

「あー……それじゃあ。彼って誰の派閥なのか知ってる?」

「知っている。そして、そこが本題」

「ほう……」

「彼の派閥の頂点にいるのは……『天界神ギラードル』……現在、『地球の天界化計画』を遂行している。そして、『新世界の正義』の総本山」


 その名前を聞いて、ラターグはとてもいやそうな顔になった。


「彼がラスボスなのかぁ……君がラスボスであることよりも三万倍はめんどくさそうだね」

「……」


 ラターグのあんまりな評価だが、それに対してエーベルは何も言わない。


「ラターグ。初耳なんだが……いったい誰だ?」

「ああ、天界神ギラードル。僕やエーベルと同じ第一世代型の最高神で、名前の通り、『天界』を司るんだ」

「天界を司る?」

「簡単に言えば……」


 ラターグは腕を組んで唸った。


「彼は天界そのものに対して、絶対的な支配権を持ってるんだよ。普段はじっとしてるけどね」

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