第五百五十六話
「なあ秀星。最近、神が俺のところに来るんだけど、お前何か原因知らないか?」
「父さん。俺に何か質問したいことがあって家に来るのは構わないさ。だけど、なんでクローゼットの中から出てくるんだ?」
「物が全然なかったからな。秀星ってファッションセンスねえもん」
「バッキバキの白装束の父さんに言われたくないわ!」
というわけで、秀星の家には高志が降臨していた。
「多分この家に神が居座るようになったからじゃないか?」
「ほう。誰だ?」
「堕落神ラターグ」
「会ったことがあるな。十年位前に」
「へぇ……あったことあるのか」
正直、意外だった。
どこであったのかということもあるが、そもそも秀星は高志が技術的に世界を移動できるとは思っているが、自主的にそれをするとは思っていない。
そのため、ラターグの方がこの地球に来たことになるのだ。
数十年のうち、神が何度も来るというのはなかなか珍しい。
「まあそのあたりはいいや。しかし、いつの間にか神がねぇ。なんで言ってくれなかったんだ?」
「話がややこしくなると思ったからだ」
「俺も認めるぜ」
クソ親父である。
「まあとにかく、神になったばかりの下位神がなんか来る理由は分かった。いやわかってねえけど、原因は分かった。敵の大本は誰だ?」
「平等神エーベルだ」
「聞いた事ねえな。地球に来るのは初めてだろ」
「多分な。なんか独自の教育を下位神に施して、そいつらを解き放ってると聞いたが、言うほどの育成能力があるようにも見えない」
「だな。俺なんてワンパンで終わったぜ」
「逆にそれは世界にとっておかしい」
あくまでも冷静に突っ込む秀星。
「ただいまー」
「あ、帰ってきた」
外から帰ってきたのは、ラターグとライザーだ。
「あ、高志、久しぶりだね。二週間ぶりだったかな」
「十年ぶりだ」
「おー。そっか。もう十年も経つんだねぇ」
どういう会話だ。
「で、そっちは?」
「僕はライザーだ」
「スンスン……秀星と同じようなにおいがするな。両親が神なのか?」
「神ににおいとかあるのか?」
「そりゃ人間の限界みたいなもんだからな。人間なら体臭があるだろ。剣術神によく似た加齢臭がする」
「嘘だろ!?」
そもそもライザーは神の息子というだけで人間である。
しかも人間として二十代半ばである。
そのような状態で加齢臭とか。
「お、お父様のあの汗臭さが僕に?冗談じゃないぞ」
「どこまで沈んでんだ。冗談に決まってるだろ」
「……じゃあなぜわかった」
「ちょっと酒を投げ合ったことがあってな」
飲めよ。
「その時に僕のことを聞いたわけか」
「そういうこと。新婚旅行の途中でこの地球に来たみたいで、長くは滞在してなかったけどな」
「……」
神々の新婚旅行ってどこにでも行くんだな。と思った秀星だが、口に出しても話が進まないのでパス。
「というわけで、高志、本当に久しぶりだね」
「だな。最近は何をやってるんだ?」
「この家で自宅警備員をやってるんだよ」
「ニートじゃねえか」
「ハッハッハ!……本当にそうなら僕も楽なんだけどね。なんだか本当に『自宅警備員』を名乗りたくなるくらい、この家って襲撃されるんだよねぇ」
「まあ、秀星はいろいろ隠してるもんなぁ。しかも世界一の資産家だろ?」
「だな。金をどう使おうかなって思ってたけど、最近は国債発行額の増加と消費税の減税と法人税の増税のために動くのにはまってる」
「財務省と大企業に何か言われてるんじゃないか?」
「逆にこっちが弱み握ってるし。俺はセフィアがいるから後処理とか全部やってくれて、弱みなんて基本握られないしな。さすがのアイツらも、神器の力には無力だよ」
「反則だな……」
そんな親子のやり取りを聞きながら、ライザーは『自国の財政に対してなんてことを』と思った。
「まあいいや。で、ラターグとライザーはこの家にお世話になってるわけか」
「ああ。僕はさっきも言ったけど自宅警備員だよ」
「僕は最近はいろいろなところで神獣を倒しているし、いない場合はダンジョンに潜っている」
ライザーは働く気はあるようだ。
ほとぼりが冷めるか、自分の両親が旅行から帰ってくるまでは秀星の家にお世話になるつもりのようだが、何もしないということではないらしい。
なお、家事に関してはセフィアがいるので、ライザーが今更手を出したところで無駄である。
「ライザーって日本でダンジョンに潜って大丈夫なのか?」
「秀星から魔戦士のライセンスをもらった」
「実は最高会議のアトムからライセンスの発行権限をもらってるからな」
アトムからいろいろもらっている様子の秀星。
まあ、ぶっちゃけこの数の神器があるとどの国にいても同じなので、日本にいるメリットを形だけでも与えようということなのだろう。
「ていうか、ラターグが外出するって珍しいな」
「いや、帰るタイミングが一緒になっただけで、僕は一度、天界に帰ってたんだよ。情報がほしくてね」
「そうか」
「主目的は枕を取りに行くことなんだけどね」
「焼却炉に放り込むぞ!」
「やってもいいけど、焼却炉が堕落して二度と使えなくなるよ?」
「反則だ……なんだその機能」
「常に何かを堕落させるのさ。まあ僕は元からそうだけどね」
これで何の悪気もないのだから天界は末期症状である。
「さてと、高志君。聞きたいことがあれば何でも聞いてくれ。僕が知る限り、応えられる限りで応えよう」
「ほう、なら、その知識に頼るとするか」




