第五百五十五話
秀星は一応学生である。
そのため、平日の昼間は学校に通っている。
その間、家ではライザーとラターグが残されているわけなのだが、ライザーはかなりソワソワしている。
「……どーしたの。ライザー君。そんなソワソワしちゃって」
「いや……なんというか、一度は賛同の意を示した神々に対して、今は裏切っていると考えると、かなり思うところがあってな……」
「君が彼らにどんな教育をされたのか知らないけど、考えるだけ無駄だと思うけどね。一度でも敵に回ろうと考えたんなら、最後まで貫いた方がいいよ。まあ、僕がいるから問題ないって」
「戦力的に、ラターグ様のことを疑っているわけではないのだが……」
「別に僕に対して敬称なんてつけなくていいんだけど……まあ、天界で育った神々の息子に言っても改善する話じゃないからいいんだけどね」
ふああ、とラターグはあくびをする。
「ていうか、秀星君とライザー君が剣を振りあってるとき、その『新世界の正義』に所属してた下位神が襲撃してきてたんだよ?」
「え?」
「嘘じゃないからね。まあ、僕がさっさと堕落させて、そのまま天界に直送したから問題なかったんだけどね」
「……この家も、すでに狙われているのか」
「秀星君って一部では天界でも有名だからね」
「そうなのか?」
「君って敬称付けるけど結構ため口だよね。まあいいけど。秀星君はかなりいろいろなことを知ってるし、何より、彼の母親は最高神の一人である転移神サラだから」
「!?」
ライザーは本気で驚いているようだ。
「父親は神じゃないけどね。ただ、逆にすごいってことは知ってるよね」
「ああ。神同士なら子供が産まれる確率は人間同士と同じだが、神と人間の場合は、子供が産まれる確率は数億分の一になると聞いたことがある」
「そのデータは全く間違ってないけど、秀星君は姉と妹もいるよ」
「……その父親、いったい何者だ?」
「ギャグ補正満載のクソ野郎だね」
「……世も末だ」
確かに。
「とまぁ、そういう部分もあって、天界ではかなり注目されてるんだよ」
「ただ……それだと、父親の方も襲撃されているのでは?」
「まあでもたぶん勝ってると思うよ?よくわからんけど」
「あやふやすぎる……」
「だってそうとしか言いようがないんだよなぁ。多分『ギャグ補正』か何かのスキルを持っていると思うんだけど、この世界独自のスキルシステムだからまだちゃんと調べてないんだよね。面倒だし」
「……」
ライザーは『堕落神が堕落神であることの意味が何となく分かってきた気がする』と思ったが、口には出さなかった。
何を言おうと意味はない。
「というわけで、すでにいろいろなところで、襲撃は発生し、そしてそれは撃退されているという状況は存在するんだ。しかもかなりの頻度でね」
「……」
「外を歩くの嫌になってきたでしょ」
「正直そう思う」
「まあ、この家にいれば安全さ。僕がいるし、秀星君自身もいろいろ結界を張ってるからね」
「……最初、結界を見た時はなかなか容赦がないと思った」
「いろいろな構築の法則がすごくわかりにくいけどね。ここ」
あえて表現するならば、何千枚という紙にぎっちりとそれぞれ文字を敷き詰めるように書いて、それらをぐしゃぐしゃにまとめて結界の形になるようにして、その状態で安定した効果を発揮させているようなものなのだ。
しかもその文字一つ一つが細かいのである。
正直、今の地球で作ることができる『結界』というものにケンカを売っているといっても過言ではない。
「まあでも、今のライザー君みたいな状態になったことがある神の息子っていうのは多いけどね」
「そうなのか?」
「僕らは神だけど、信仰されるような存在じゃないんだよね。でも、そんな中でも信仰される場合っていうのはある。でも、それらは本質的なものじゃないから、難しいんだよ」
「ふむ……」
「まあ、これからどうするかなんてこれから考えればいいんじゃない?別にライザー君が何かを決意したところで、天界に何か影響があるわけじゃないよ」
「……」
正直、『グサッ』となったライザーだが、相手が最高神では何も言えないのが正直なところだ。
ただ……『頑張っても頑張らなくても誰にも迷惑がかからない』というのならば、自分なりの答えをまず出してみるのはいいかもしれないと思った。
今までそれをしたことがない人間の典型的な言い分ではあるが、するかしないかも本人次第である。




