第五百五十話
普通の魔物が神獣になる。
実はほとんどの神も、この現象が発生することは知らないのだ。
一応補足すれば、天界の中でも圧倒的な知識量を誇る堕落神ラターグや転移神サラ、そもそも生産能力の高い創造神ゼツヤ、そもそもすべて知っている全知神レルクスは知っているだろう。
ただし、秀星が知っている神の中では、それらの者たちしか知らないと思われる。
そもそも、神獣はすべて一から作るものだという固定概念が根強いからだ。
秀星自身もそうだった。
だが、神々を研究していくと、そうではないことに気が付いたわけである。
「神獣というものを見たことも相手にしたこともあるぞ。だがあの時は、『疑似神器』のようなアイテムを身に着けていないと、俺たちの攻撃は何も意味を持っていなかった。その神獣そのものになることが可能なのか?」
オリディアが世界樹を求めて神獣を次々とはなっていた時、ガイゼルやナターリアも神獣を相手に戦っていたのだ。
「実は可能だ。人が神になるためには尋常じゃない条件が必要だが、モンスターが神獣になるのは難しいことじゃない」
「……そ、そうなのか」
「ふむ、その方法はなんだ?」
ナターリアが聞くと、秀星は保存箱から二本の瓶を取り出した。
中は真っ白な液体が入っており、どういう原理なのか、白い液体のそばに、彩色のオーラが見える。
「これを飲めばいい」
「「……」」
ガイゼルとナターリアは『え、えぇ……』と言いたそうな顔でその薬を見る。
確かに、見ているだけで不思議な力を感じるものだ。
だが、手を付けたいかと言われると、なんだかいやである。
薬一本で、これまで自分が積み上げていたものがすべてひっくり返るとなれば、それはそれで抵抗を感じるのだ。
そういう部分は人間もモンスターも同じである。
「まあ、抵抗があるのは分かるけどな」
「ああ、バリバリにあるな」
「こう、特訓とか、儀式とか、そういったものが必要なのかと思っていた」
「そんなことないぞ。だって、神だって神獣を作るとき、そういう面倒なルートなんか使わずに『ぽんっ!』て作るんだからな。当然材料さえそろってればいいんだよ」
「「命の誕生って軽いなぁ……」」
神がかかわるとそうなるのは当然である。
「というわけで、これを飲めば神獣になれます……実は一滴でよかったりするから、ナターリアは自分の仲間を神獣にしたかったら一滴のませればいいと思うよ」
「一滴でいいのか!?」
さらに驚くガイゼルとナターリア。
一体どういうものなのか。と意味不明である。
「まあとにかく、これを飲めば神獣になれるからな。ちゃんと管理しとけよ」
「あ、ああ」
「力は必要だからな。受け取っておくか」
★
その日の夜。
「しゅうせいさ~ん。あれ?いないの~?あ、おいしそう!……ペロッ……お、おいしい!びんのなかにはんぶんもはいってないけど、とってもおいしい!……ごくごく……ふう、ごちそうさまでした」




