第五百四十八話
時には憂さ晴らしというものは重要である。
そして、自分の一つの行動で大勢の何かを叩き壊すというのは。なかなか快感が発生するものである。
「おりゃあああ!」
プレシャスを振りかぶって、真横に一閃。
それだけで、多種多様なモンスターがすべて倒せた。
「ふう、やっぱりダンジョンの奥深くっていいなぁ」
秀星はそんなことをつぶやいた。
そんなことをのんきにつぶやいている間にも、モンスターはワラワラと出現している。
「地上にいるモンスターだと、俺の力を怖がって離れていくモンスターが多いもんなぁ。まあ、それでも呼び寄せる手段はあるけどさ。その手段でやってもマッチポンプみたいで不完全燃焼なんだよな」
プレシャスを肩に担いで、とりあえずフラフラと移動しながらモンスターを貯めていく秀星。
ダンジョンに出てくるモンスターに知性は基本的に宿っていない。
あくまでもダンジョンそのものがシステムでしかないからだ。
もちろん、神器を振るっていいほどのレベルに達しているダンジョンというのはなかなかないのだが、全くないというわけではないし、秀星は行こうと思えばすぐに行けるので来たわけだ。
そうして神器を振るって大量のモンスターを一網打尽にするわけである。
なお、モンスターを倒して手に入るドロップ品には興味がないので、そちらは完全に放置である。
もともと神器があれば、モンスタードロップなどほぼ不要であり、世界樹商品を販売しているため金に困っていない。
そのため、ドロップ品は完全に無視で、単純にモンスターを貯めた後で強力な一撃をブッパするだけである。
贅沢な話だ。
「もういっちょおおおお!」
モンスターがたまってきたので再度プレシャスを振るう秀星。
その顔はとても解放感にあふれた顔である。
エリクサーブラッドの影響で精神は常に安定するわけだが、秀星自身が思考していないなどということはないので、その差だけストレスはたまる。
そして……神が動くためのスポットの作成は、秀星としてもとんでもなく面倒なのだ。
それゆえに、こうしたストレス発散が必要なのである。
「おりゃああああ!」
ちなみに、神器を使うと単純に言っても、秀星の場合はその出力は異常である。
実際のところ、ダンジョンそのものが揺れるほどの衝撃が発生している。
ダンジョンは頑丈さがありそうなモンスターばかりを発生させているわけだが、全然秀星には通用しない。
そもそも耐性破壊ができる秀星に対して、単に頑丈な程度ではどんなに大きなモンスターだろうと粗大ゴミに等しい。
「フハハハハハ!地に伏せやおらああああ!」
来夏と知能指数がほぼ変わらなさそうな行動をする秀星。
そんな秀星を、悲しいものを見るような目でセフィアは陰から見ているのだった。




