第五百二十三話
そもそものチームわけだが、秀星を除いて椿を入れると、剣の精鋭とユニハーズは合計で二十人になる。
そのため、四人のリーダーを選出するのだが、選ばれたのは、高志、来夏、基樹、アステルである。
なお、朝森家の母、沙羅や、秀星の姉の育美とその息子の晶、来夏の娘の沙耶は観戦である。
晶と沙耶はポップコーンをムシャムシャ食べているので、おそらく興味はないのだろう。
「で、行かせてよかったのか?」
「はい。まあ、すぐに帰ってくると思うんですけどね」
チーム高志。
メンバーは、風香、羽計、雫、椿という構成だったのだが、椿が『お父さんと戦いたいです!』と言い出したので、高志がゴーサインを出したので走っていった。
「え、すぐに帰ってくるの?」
「秀星君が椿に本気を出すとは思えないし、そこそこ戦ったら帰ってくると思うよ」
「まあ、確かに想像できないな。娘に対しては本気になれる父親って、朝森家にいなさそう」
「それはそれでどういう意味だ……」
羽計のあんまりな評価にげんなりする高志。
まあ、そうなるのも当然である。
とかなんとか話していると、ドドドド!という足音が聞こえてきた。
振り向くと、椿がこちらに向かって走ってきた。
高志たちのところまで来ると、足でズザザーーっとストッパーにしようとして、失敗して転んだ。
「「「「……」」」」
気温が五度くらい下がった気がした。
だが、椿はムクリと起き上がると、満面の笑みで言った。
「全然当たらなかったです!お父さん強すぎです!」
そりゃそうだ。秀星は世界一位なのだ。しかも今は全盛期。娘には負けていられない。
「ハッハッハ!そうか、で、追い出されたってわけか」
「みんなと遊んでおいでっていわれました!」
「なるほど、ならみんなで遊ぼうか」
「はい!トランプを持っているのでババ抜きをしましょう!」
「「「なんで!?」」」
遊ぶというのは決してそういう意味ではないと思う。
ついでに言うと、椿ってババ抜き弱そう。
「椿ちゃん。遊ぶってそういう意味じゃないと思うよ」
「え、そうですか?」
首を傾げる椿。
どうやら本当にわかっていないらしい。
「……というか、なんでトランプ持ってきていたんだ」
「いろんな遊びができるからです!未来でお父さんはカジノから出禁食らってますけどね!」
未来でも暴れ過ぎだあの男。
「ええと確かこのポーチに…………持ってくるの忘れました!」
風香たちとしては『いいよ別に』というのが本音だが、なんだか言いにくい。
「まあ、よくあるって」
高志がそう言うが、戦場にトランプを持っていくことを忘れるという状況はあまりにも特殊すぎではなかろうか。
「まあ五人揃ったし、作戦会議だ」
「おーーーー!」
喜んでいるのは椿だけ。
「さて、こういった場所で最も必要なことはなんだと思う?」
「相手よりも速く、相手を見つけることです!場所さえわかれば、攻撃も防御もやりやすくなります!」
「フフフ。甘いな椿、こういうときに必要なのは……」
「必要なのは?」
「不屈の闘志だ!」
「……」
「……なあ、椿からノーコメントってだいぶ不味くないか?」
高志の気持ちは高ぶっているかもしれないが、更に気温が十度くらい下がった気がしたので不味いだろう。
「未来でおじいちゃんは『戦場で最も必要なことは、くじけぬ心』といっていましたよ」
「あ、未来の俺の言葉と比較してただけか。安心安心」
比較とはいうものの、『不屈の闘志』と『くじけぬ心』は何が違うのだろう。
「というわけで、くじけぬ心があればいでっ!」
高志の頭がガクンと下がった。
「いっつー……後頭部狙撃された」
障壁があるとはいえ、容赦のない攻撃である。
「狙撃ということはエイミーか」
「ということは、アステルさんがリーダーの班が近くにいるね」
というかすでに狙われている。
「む、えいっ!はうっ!」
椿がなにかに気がついたのか、抜刀して一閃。
だが、失敗して眉間に弾丸が着弾した。
銃弾を斬るのはまだ椿には無理である。
「こ、ここにいるとやばいな、一旦離れるブッ!」
弾丸が股間に直撃。
障壁があるので傷はないはずだが、ノックバックは存在するのでそこそこ衝撃がある。
そのまま悶絶して座り込む高志。
哀れなものである。
「うわわ!退散しますうううう!」
高志の白装束の襟首を掴んで引っ張る椿。
速度はかなり出ているので、かなりコンパクトハイパワーだ。
「私達も離れるか」
「そうだね」
「賑やかな感じだね。おっと」
雫が短剣で銃弾を切り落とす。
「私には効かないよ。さて、はなれよっか」
というわけで、開始早々、リーダーが悶絶するチーム高志であった。




