第五百十五話
まだ何かを隠したい。
そんなことを考えながらカラスが戦っているのが秀星にはわかった。
確かに、戦いそのものは激しさを増している。
そもそも、地球にいる魔戦士では対応すら困難な規模の攻撃ばかりしているので、決してこちらをなめているわけではなさそうだ。
「ふーむ、なーんか防御しやすいなと思ってたら、そういうことだったのか」
秀星はそんなことをつぶやいた。
「どういうことですか?」
「エネルギー量だとか規模だとか、あいつがやってる攻撃で数値化できるデータを頭の中で並べて、それらの公倍数を探ってたら、丁度いい数値を見つけた。多分、あいつの中で何らかの単位なんだろうな」
「それにきっちり当てはめて攻撃してきている。ということですか?」
「そのとおり。レーザーでぶった斬ってから数値だけは大きくなったけど、その単位だけは変わらない。ただ、算出した数値、俺が使ったことがない数字なんだよなぁ。小数点第十五位まで使う単位とか、普通にめんどくさいし」
「それは面倒ですね」
「ああ、で、きっちりと規定化されてる攻撃だから、一度わかればこっちも防御しやすい。攻撃のリズムすらもその単位に合わせてる」
「……要するに、測られてる。ということでしょうか」
「だろうな。測った上で何をするつもりなのやら」
喋りながらも攻撃をさばいて、自分からも攻撃する秀星。
カラスはそれを忌々しそうに見ている。
どうやら、まだあのカラスにとって、都合良くはないらしい。
「お相手さん。こっちを測りかねてるな。結構な速度で攻撃の規模を上げてるけど、俺の表情が全然変わらないし」
「秀星様は速攻で倒そうとは思わないのですか?」
「セフィアもわかってると思うが、攻撃に混ぜ込んで再生不可になる魔力を打ち込んでるよ。速攻で倒せそうにないが、最短ルートは作ってるつもりだ。ただ、あのカラスの中に作ってる魔力を、あいつ自身が解析して打ち消してきてるみたいなんだよなぁ……こんなやつ見たことないぞ」
「秀星様も可能では?」
「俺の場合はエリクサーブラッドで自動的に行ってるけど、あのカラスはそれを自分でやってるんだよ。正直超ウゼェ……」
持っている技術の種類は当然異なるが、相手が行ったことに対する対応力という点ではお互いに高水準だ。
(問題があるとすれば、お互いにインテリもどきだから、どうしてもこう……勝ち筋を見出してから決めにかかるタイプなんだよなぁ。攻撃そのものは派手だけど状況が全然変わらん……)
お互いに、率先して特殊なことをしようとはしないだろう。
自分がやっていることがどのような戦術に基づいているのかを模索し、相手の戦術に対する対応も同時に行う。
やっているのはただそれだけ。
相手を測るという点において大きく異なるのは、秀星はカラスの大きな目的を把握しようとしているのに対して、カラスは単に秀星の戦闘力を測っているようにしか見えない。という点だろう。
いずれにせよ。お互いに本気も全力も出していない。
状況は膠着している。
それに対して、一番速く、我慢ができなくなったのは……。
「どおりゃああああああああ!チンタラしすぎだオラあああああああ!」
高志であった。
Here we go,It's gag time.




